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両立支援の取組み事例

病名を会社に伝えなくてもよい産業保健スタッフを中心にした両立支援策を充実病名を会社に伝えなくてもよい産業保健スタッフを中心にした両立支援策を充実

 オーエスジー株式会社は世界的競争力を持つタップ(穴の内側にねじを削る工具)を中心に、ドリルやエンドミルなどを提供している。多種多様な要望に高い技術力で応える総合工具メーカーとして認知されている。
 1938年創業のオーエスジーは、現在世界30カ国以上に製造、販売、テクニカルセンターを置き、グループ企業を含めて6,600人以上の従業員を抱えている。

病名を会社に言わなくても良いという方針

 オーエスジーの両立支援は、病名を会社に言わなくても良い点が特徴的だ。

 同社の治療と仕事の両立支援に対する会社方針は次の通り。
  1. 当人の気持ちを最優先する。
  2. 病名を会社に言わなくてもよい。
  3. ルールにこだわらない柔軟な対応をする。(当人に負担をかけない)
 この会社方針について、総務部次長の深津治史氏は次のように紹介する。
 「当人は不安や様々な負担を感じて辛い思いをしていますので、まずその気持ちへの配慮を最優先に考えるようにしています。2つ目の“病名を会社に言わなくてもよい”は特徴的なものだと思いますが、事前ヒアリングで、大きな病気の場合などでは特に言いたくないという声が多かったことを反映しています。3つ目も、当人に負担をかけないために、様々な手続きを省略することにしました」。

 この会社方針を実現するために、下図のような産業医・保健師・看護師(産業保健スタッフ)を中心とした両立支援体制、手続フローを整えた。




 オーエスジーの各事業所には常勤の看護師(産業保健スタッフ)がおり、当人の状況を把握している。同時に、医療面でのアドバイスも伝えることができる。その後、看護師から人事担当や所属長に対して、就業上必要な配慮や治療期間、休業期間に関する情報が提出される。このような流れで、会社は就業上で配慮すべき事項を把握する。

当人の気持ちを最優先する両立支援内容

 治療者にとって会社の手続きがストレスになることがある。オーエスジーでは、産業保健スタッフを経由して、入院、通院、自宅療養などの情報を会社が受け取る仕組みになっているので、欠勤届などの届出の省略、所属長による代行を可能にした。
 がんなどの大きな病気の場合は、休職の届出を省略できるように休職制度の例外を設けた。また、休職は最大2年だったが必要に応じで延長できることも就業規則に盛り込んだ。

 「主治医の意見を参考に、窓口である産業保健スタッフの判断が優先する体制になっています。一番の目的は当人の負担軽減です」と、深津氏は語る。

 復職の際も、産業保健スタッフの判断が優先される。
 就労上の配慮の情報を、産業保健スタッフが会社や所属長に提供し、人事担当が具体的な『職場復帰支援計画書』を作成していく。「入院や治療・療養期間を経て職場復帰を目指す社員の計画書は、当人の業務内容や労働時間などと照らし合わせた計画書になります。配慮すべきことを中心に作成していきます」と、深津氏は説明する。

 その際、通勤にも配慮している。通勤手段は公共交通機関と決められているが、車での送迎を認めるなど柔軟に対応できるよう変更した。さらに、当人が通勤可能な勤務地への異動も可能とした。

 当人の気持ちを優先した対応は、治療費に対する不安の解消にまで及んでいる。
 「休職中の所得に対する不安解消策として、がん、心筋梗塞、脳卒中という3大疾病の医療費負担を軽減する保険の導入で、医療費負担の軽減を支援しています」と、深津氏は説明する。

 全社員向けには社内イントラネットや社内報への情報掲載、チラシ配布を通じて、病気になっても本人に負担がかからないような体制を取っていること、病名を言わなくて良いことなどの周知に努めている。

がんになってみて、たくさんの不安を覚えました

 「実は、私もがんサバイバーのひとりです」と語った深津氏は、次のように続ける。

 「がんになってみて、たくさんの不安を覚えました。精神的なダメージは、最初に自覚症状が出た時とがんと告知された時が特に大きなものでした。その後、手術してから療養しているときは継続的な痛みがあり、とにかく不安だらけで、頭の中が混乱して正常な判断ができない状況になっていました」。

 不安の内容も様々だ。「本当に治癒するのか、再発・転移がないかと、体のダメージに対する不安がとにかくつきまといます。闘病前と同じように仕事ができるのか、どこまで病気のことを職場に知らせなければならないか、職場で周りの人から理解されるのか」といったことにも思いは巡ったという。

 「がんになっていない人にとっては他人事で、理解を得ることが難しいと感じたことが何度もありました。自分でなくてよかったという反応を目の当たりにしたときは寂しい思いをしたことを覚えています。職場復帰してから何年も経った今でも、差別に似た目で見られている雰囲気を感じたこともあります。病名を聞くとマイナスイメージだけが先行してしまうことが多いと感じていました」と吐露する。

 そのような経験から、総務部の担当として、当人の精神面への配慮が必要だと痛感したという。
 「以前から『病名を言いたくない、復職後について相談をさせてほしい』という声を聞いていましたが、自分が病気になって、当人の気持ちを最優先する必要性を、より強く感じています」と、深津氏は語る。

 当人にできる限り負担をかけず、当人の気持ちや立場に寄り添って対応し、安心して治療に専念できる環境づくりを進めるオーエスジー。これからも人財を尊重する姿勢を前面にだして、治療と仕事の両立支援に取り組んでいく。

©Ministry of Health, Labour and Welfare