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治療と仕事の両立支援ナビ

両立支援の取組事例

健康に関する社員の行動規範を制定し、社員とその家族の健康維持・増進に積極的に投資

東京海上日動火災保険株式会社

人事企画部ウェルネス推進室
主任/保健師 岡林 知代子 氏

会社名
東京海上日動火災保険株式会社
所在地
東京都千代田区大手町二丁目6番4号
事業内容
損害保険業
設立
1879年(明治12年)8月
従業員数
16,645名(2023年4月現在)
平均年齢
42.4歳 /男女比 男性4.5:女性5.5
産業保健スタッフ
136名

1879年8月、日本初の保険会社として「東京海上保険会社」が創立されました。
「お客様や地域社会の“いざ”をお守りすること」を創立時からのパーパスとして、社会課題の解決に貢献しながら持続的な成長を実現していくことを目指しています。
健康経営においては、健康に関する社員の行動規範として、2019年に「東京海上グループ健康憲章」を制定し、社員とその家族の健康を何よりも大切にし、その健康維持・増進に積極的に投資していくことや健康経営を通じて目指すところなどを明確に示しています。全国に事業所があるため、46カ所に産業保健スタッフを配置し、職場と連携して、治療と仕事の両立支援に取り組んでいます。

治療と仕事の両立支援に取り組んだきっかけをお聞かせください。

東京海上グループのパーパス(存在意義)は「お客様や地域社会の”いざ”をお守りすること」です。事業活動を通じて社会課題を解決し、その結果として企業価値を高めていく、そのすべての事業活動の前提となるのは社員の心身の健康であるという企業風土が定着しており、健康支援には以前から力を入れていました。「治療と仕事の両立支援」が働き方改革の柱の一つとして位置付けられてからは、健康関連の重点施策の一つとして「治療と仕事の両立支援」を掲げ、社内イントラネットに相談窓口を明示したり、社員・管理職教育をするなど、社内での浸透にも取り組んでいます。

従業員の両立支援に取り組む基本的な考え方や基本的な方針を示したものがあればお聞かせください。

健康に関する社員の行動規範として、2019年に「東京海上グループ健康憲章」を制定しました。社員とその家族の健康を何よりも大切にし、その健康維持・増進に積極的に投資していくことや、健康経営を通じて目指すところなどを明確に示しています。また東京海上日動では健康経営宣言として、「お客様に選ばれ、成長し続ける会社”Good Company”であるために最も大切な原動力は社員であり、東京海上日動は社員と家族の心身の健康の保持・増進に積極的に取り組みます」と掲げています。

両立支援を行うための仕組みや支援者・支援制度をお聞かせください。

全国に事業所があるため、46カ所に産業保健スタッフ(産業医・看護職)を配置して、社員の両立に向けた個別支援、上司からの相談等に対応しています。
社内制度としては、有給休暇(半日単位から取得可、最大60日まで積立可)、私傷病休暇制度、スーパーマイセレクト制度(午前5~午後10時の範囲で勤務時間を選択可)、休憩時間(中抜け可)、在宅勤務、出勤トライアル制度の利用が可能です。また、東京海上日動健康保険組合には医療費が高額となった場合の独自の給付制度(付加給付制度)があります。
個人情報の保護については健康情報等の取扱規程を定め、適切な情報の取扱い・対応を行っています。

貴事業場の仕事と治療の両立支援の具体的事例(実例・実績)をお聞かせください。

がん検診を定期健診と同時に実施しており、早期発見につながる社員が一定数います。精密検査が必要となった場合には、産業保健スタッフが必ず受診結果を確認しています。がんが発見された場合には、上司と産業保健スタッフが連携して、その人に合った治療との両立を支援しています。がん検診後の精密検査の段階から産業保健スタッフが関わり、社員との面談で治療計画を確認のうえ、本人・上司に対して就業上の配慮や、社内制度の説明をしています。入院治療等が必要な場合には、私傷病休暇制度を利用し、治療に専念することもあります。また、がん治療は退院後も外来通院により継続することも多く体調にも影響するため、私傷病休暇制度からの復職の時期についてはオンライン面談等で産業医が体調を確認しながら決めています。復職後は、休暇期間に応じて短時間勤務期間を設けており、徐々に通常勤務に戻していきます。復職後も定期的に経過観察のため通院がありますが、有給休暇のほか働く場所や時間を柔軟に選択できる制度を活用し、通院や治療の時間を確保することができています。心のケアとして産業保健スタッフへの相談のほか、希望に応じて社内外のカウンセリングにつなげることもあります。産業保健スタッフとしては、社員の気持ちに寄り添い、本人の主体性を尊重しつつ必要に応じて家族との面談や連携も含め関係者との調整を行うことなどにより、社員が適切な治療を受けながら、いきいきと働き続けられるようサポートすることを心がけています。

社外資源の活用状況についてお聞かせください。

主治医との連携のほか、メディカルソーシャルワーカー、障害者職業センター(リワークやジョブコーチ)、障害者就労支援センターなどを、疾患や療養段階、職場環境に応じて活用しています。
また、会社の福利厚生制度として、社員が団体長期障害所得補償保険に加入できるようにしており、経済的な面からも治療と仕事の両立を支援しています。

その他特記事項(研修等による意識啓発・労使の協力等)がありましたらお聞かせください。

健康リテラシー向上の対策としてe-learning等により定期的に社員への健康教育を行っており、その中で「治療と仕事の両立支援」に関しても取り上げています。
また社内外の関係者調整の役割を担う看護職は、日本産業衛生学会産業保健看護専門家制度や両立支援コーディネーター基礎研修等による研鑽に努めています。

両立支援に取り組まれたことによって生じた良い効果についてお聞かせください。

両立支援があることにより、社員は不安を極力軽減して治療に臨むことができ、会社にとっても大切な人材の離職を回避することができます。病気に罹患しても安心して働き続けられる会社であることは、治療をしている社員本人だけではなく、周囲のメンバーにとってもエンゲージメントの向上につながります。多様な社員がいきいきと働ける職場環境において、社員のパフォーマンスが最大限発揮されることで、会社としても持続的成長を遂げることができると考えています。

今後の展望・課題をお聞かせください。

当社社員は半数超が女性であり、セミナーやe-learning等による健康リテラシー向上策、Mothers'Roomの設置など、女性の活躍推進を支える様々な取り組みを継続してきました。働く世代に多い女性特有のがんに対しては、がん検診の推奨(早期発見・早期治療)や罹患した社員への両立支援も行っており、今後もがん検診受診率の向上および適切な配慮による両立支援に努めていきます。近年では不妊治療に対しても病気休暇を適用するなど、健やかな妊娠への支援も拡充しています。
また今後はシニア世代の割合が増えていくことが予想され、シニア世代がその人なりの健康度を高めつつ、パフォーマンスや働きがいの向上を目指すこともより重要になってきます。社員の多様な健康状態に応じた豊かな働き方を実現し、社員の活躍を支える取り組みの一つとして、今後も「治療と仕事の両立支援」を推進していきたいと思います。

取組事例一覧