厚生労働省

治療と仕事の両立支援ナビ

両立支援の取組事例

従業員のがん罹患を契機に様々な治療と仕事の両立を支援する制度を構築

社会福祉法人青谷学園

法人本部 業務執行理事(元衛生管理者)
鈴村 由里子 氏

会社名
社会福祉法人青谷学園
所在地
京都府城陽市中芦原14番地
事業内容
社会福祉事業(障害者支援施設)
設立
1982年3月
従業員数
98名(2023年10月現在)
平均年齢
43.9歳 /男女比 男性4.3:女性5.7
産業保健スタッフ
12名

社会福祉法人青谷学園は、1982年に設立しました。”地域社会への貢献と、ご利用者様に「生きがい」「満足」「感動」のある福祉サービスを提供します。”の経営理念のもと、社会福祉法人のみが行うことができる第1種社会福祉事業の障害者支援施設を運営しています。京都府社会福祉協議会が行う「わっかプロジェクト」のひとつ、京都フードバンク事業に参画しています。
京都府南部地域のこども食堂への食材補給基地としてその役割を果たしています。青谷学園独自の地域貢献の取り組みとして、子ども食堂が盛況となる時期に、職員と取引業者さんに食材の提供を呼びかけ、たくさんの食品を近隣の子ども食堂へお渡しています。健康経営においては、職員の健康保持・増進を経営的な視点でとらえ、積極的に取り組んでいます。
2019年から2023年まで5年連続で「健康経営優良法人」認定を受けています。

治療と仕事の両立支援に取り組んだきっかけをお聞かせください。

2017年から働き方改革に取り組み、週休3日制を導入すると共に、健康経営優良法人認定を目指すこととしました。
健康経営を進めるため2020年にがん対策推進企業アクションのパートナー企業に登録し、がん研修やがん検診の充実を図るなど、ヘルスリテラシーの向上に取り組んでいたところ、翌2021年、当時、衛生管理者で改革の先頭に立っていた私が乳がんの告知を受けることになり、抗がん剤治療や放射線治療といったフルコースの治療をすぐに始めなければならなくなりました。
その時、この先治療と仕事の両立支援が必要な職員が現れたとき、私の経験を活かしたアドバイスができたら良いなと思い、ピンクリボンアドバイザーや両立支援コーディネーターの資格を取りました。治療にはお金がかかることも実感したことから、経済面のことも正しく伝えられるように1級ファイナンシャルプランニング技能士も取り、本格的に治療と仕事の両立支援に取り組み始めました。

両立支援を行うための仕組みや支援者・支援制度をお聞かせください。

私が乳がんになった時、法人は年に15日のがん治療特別休暇を新設してくれました。
時間単位で取得可能で、3週間連日の放射線治療も休むことなく通うことができました。またがん治療特別休暇と年次有給休暇だけで、手術から1年半余りの通院まで、休職することなく治療が受けられたので給与も賞与も減額されず、治療費や生活費のことを心配することなく治療に専念することができました。
このほかにも、働きながら治療を継続できる支援体制や制度が整っています。
当法人では、健康情報は取扱規程に則り厳格に管理されており、健診を受ける職員からは、事前に情報提供の同意を得ています。早期発見、早期治療だと治る可能性も高く、治療も軽く済むことが多いため、「要精検」となった場合、直ちに衛生管理者が二次検診の受診勧奨をするようにしています。

貴事業場の治療と仕事の両立支援の具体的事例(実例・実績)をお聞かせください。

私のがん治療の終わりかけに、定期健診で一人の職員に乳がんが見つかりました。一緒に涙しながら治療と仕事の両立支援を開始し、現在も続いています。この職員は、私から衛生管理者を引き継ぎ、さらに、がんになった時の心と身体の痛みがわかることから、病気を患った職員へのサポートができるようにしたいと、資格を取って両立支援コーディネーターにもなってくれました。現在ピンクリボンアドバイザーの資格取得を目指してくれています。
別の産業保健スタッフも、次々とファイナンシャルプランニング技能士や両立支援コーディネーターの資格を取るなど、支援の輪が広がってきています。

社外資源の活用状況についてお聞かせください。

京都府の「健康づくり(がん予防)推進員派遣事業」を利用して、がん研修を開催した際の講師が、京都産業保健総合支援センターの産業保健師さんでした。そこから保健師さんと仲良くなり、産業保健総合支援センターでの事例検討会に参加するなど親交を深めています。キャリアコンサルタントや社労士の資格もお持ちなので、いざという時は色々なことが相談できるので心強いです。

両立支援に取り組まれたことによって生じた良い効果についてお聞かせください。

仕事との両立支援は、治療に限らず、子育てとの両立支援、介護との両立支援、不妊治療との両立支援など、それぞれの年代で様々な支援の必要性があります。子育て支援は、男女共に育休取得が100%で、プラチナくるみん認定をうけるなど既に充実しています。最近は不妊治療に関しての取り組みを開始したり、子供が学校に行けない日に子連れ出勤を認めていたりなど、支援が必要な状況に合わせた対応を大切にしています。
こうして色んな事情の職員がそれぞれ助け合い、互いに思いやれる環境が醸成され、治療の際にも優しい言葉を掛け合える仲間づくりができました。
職員アンケート(京都府が行う福祉職場組織活性化プログラムを利用)では、様々な項目で高い満足度となるなど、たくさんの職員がやりがいを感じながら、今の法人で働き続けたいと思っていてくれることが何よりの成果であり、それこそが生産性の向上につながっていると思います。

今後の展望・課題をお聞かせください。

病気はがん以外にも色々あるので、産業保健総合支援センターでの事例検討会に参加するなどして幅広く知識を習得し、職員に寄り添った治療と仕事の両立支援ができるようにしていきたいと考えています。
今後も、十人十色それぞれが輝けるよう、必要な支援体制を拡充し、「健康ファミリー青谷学園」を広めていきたいと思います。

取組事例一覧