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両立支援の取組み事例

職場・人事・産業医が連携し公平でバランスある両立支援を進めています職場・人事・産業医が連携し公平でバランスある両立支援を進めています

 マツダ株式会社は2020年に創立100周年を迎える。「カーライフを通じて人生の輝きを人々に提供します」「地球や社会と永続的に共存するクルマを多くの人々に提供します」「挑戦することを真剣に楽しみ、独創的な”道”を極め続けます」をコーポ―レートビジョンに掲げ、国内外に生産拠点と研究開発拠点を展開している。

『人こそ宝!』の思いで両立支援に取り組む

 両立支援の取組みへの思いは15年前に遡る。安全健康防災推進部 産業医の奈良井理恵氏は「2004年に発生した宇品工場火災を受け、安全や健康は油断し、慢心すれば一瞬にして失われるとの考えから、安全健康基本理念が策定されました」と説明する。
 基本理念には次のような文章がある。「『安全と健康』 これこそ働く私たちの原点です。これこそ最も価値のあるものです。『人こそ宝!』 この宝を守るために私たちは不断の努力を続けます」

 「この『人こそ宝!』の思いを大切にして、両立支援を始めとする様々な取組みを続けています」(奈良井氏)。その1つが社員への意識啓発活動だ。毎年、全国労働衛生週間・健康衛生月間に合わせて外部講師による講話を実施している。健康保険組合との共同開催による講演会「乳がんの早期発見・早期治療の重要性」では、対象者を女性社員に限定せず、男性社員や社員の家族も参加できるようにした。
 参加した社員のアンケートからは、「『早期発見の重要性を感じた』『職場での支援体制も重要だ』といった意見が寄せられています」と奈良井氏は手ごたえを話す。

 マツダの広島本社には、生産一貫工場に加え、研究開発部門がある。産業医は6名いるものの、部門数が多いため、20名の保健師が各部門の担当となり、社員の健康づくりに取り組んでいる。労働安全衛生法に基づく健康診断の問診では、社員の体調や業務内容を問診担当保健師が確認し、必要に応じて問診情報を各部門担当保健師・産業医へとつなげている。

 また、各部門の担当保健師が電話やメール、対面で健康相談を受け付けるほか、両立支援の専用相談窓口も設けており、本人だけでなく、職場からの相談にも対応できる体制を整備している。そして、休業に入る段階や休業中、復職の直前、復職した後も途切れることのない両立支援をおこなっている。


バランスの良い支援プランを作成するために

 両立支援を円滑に進めるため、支援の対象となる社員が所属する職場、人事、産業医・保健師といった関係者が連携して情報を共有し、協議しながら両立支援プランを作成している。
 復職する場合、産業医・保健師は主治医と連携を図りながら、本人の体調、症状や治療状況、業務遂行による健康面への影響などを確認し、医学的に就労が可能か否かを判断する。職場には、本人への配慮が可能な範囲の業務内容を提示してもらう。そして、「人事は職場に対して、職能に見合う業務内容であるか、公平な評価がなされているかなどを確認します。このように関係者が連携協議することで、本人が望まない退職を防ぎ、過剰な配慮による本人の意欲低下や、職場の同僚の負荷増大を招かないようにするなど、バランスのとれた両立支援プランを作成しています」と奈良井氏は説明する。

 また、治療と仕事を両立するには、通院時間などを確保できる就労支援制度が重要になる。マツダでは、半日単位での取得が可能な有給休暇のほか、ハートフル休暇を設けている。看護・介護・子供の学校行事・不妊治療・ボランティアなどを対象に年間10日が付与される。更に、復職時点で有給休暇が足りない社員には、復職支援休暇も最高で6日付与され、通院に必要な時間を確保している。また、人工透析治療に対する勤務特例措置がある。通院時間や通院回数の多い人工透析対象者は、通院時間の確保を目的に一定範囲の特例措置を設けている。


マツダ株式会社における両立支援の取り組み:関係者の役割



本人の意向と負担やリスクを考慮した復職支援

 工場勤務のAさんは大腸がんを患い、抗がん剤治療の後、復職した。しかし、再び抗がん剤治療が必要になり、有給休暇だけでは通院が難しくなったため、就労支援制度を利用して治療を続けている。「この制度は、通院で労働時間が不足しても、人事考課の評定を妨げる障壁にはならないため、安心して治療と仕事を両立させることができます」と奈良井氏は語る。

 疾病による欠勤・休職期間は2年3カ月の範囲で認められている。また、有給休暇を含め、1カ月以上疾病により休んだ社員に対しては産業医による復職面談が行われ、主治医と職場の意見、業務内容を踏まえながら、就業の可否や就業制限の要否を判断する。

 復職への課題について、奈良井氏は「治療しながら復職する場合、『マツダは大きい会社だから、仕事は何でも用意できるでしょう』と言われることもあります。しかし、簡単な仕事、負荷の軽い仕事は外部委託になっているものも少なくありません。全く新しい業務に就くことは本人の負担となるリスクもあります。そのため、本人の経験や今後のキャリアを考えた支援を目指していますが、難しい面もあります」と奈良井氏は打ち明ける。
 広い敷地内に多くの部門があるため、新しい業務に変えると部署や業務内容だけではなく、勤務場所も変わり、通勤経路も変わる可能性がある。復職は従来の職場への復帰を最優先に考え、病気治療を理由にした異動は本人の意向はもちろん、職場と人事を交えて慎重に協議している。

 今後、疾病だけでなく、育児・介護との両立や、社員の高年齢化による身体機能の低下などから、短時間勤務や在宅勤務など柔軟な働き方ができる人事・勤務制度が求められるという。「人こそ宝!」の思いを受け継ぎながら、治療と仕事の両立を推進するマツダの取り組みが注目される。
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