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両立支援の取組み事例

多様性を尊重し、柔軟な考え方で全社員が能力を発揮できる企業文化を。両立支援もこの一環です。多様性を尊重し、柔軟な考え方で全社員が能力を発揮できる企業文化を。両立支援もこの一環です。

 ジョンソン・エンド・ジョンソンは世界60カ国でヘルスケアビジネスを展開しており、毎日10億人以上が同社の製品を利用しているという。日本でも、消費者向け製品、医療機器、医療用医薬品などを幅広く提供している。

すべての活動の拠り所となる「我が信条(Our Credo)」

 創業以来100年以上、人々のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上を目指し、安全性の高い良質な製品とサービスの提供に取り組んでいるジョンソン・エンド・ジョンソン。同社は半世紀以上前から、多くのステークホルダー(利害関係者)に対する社会的責任を意識した経営を行っている。

 「”我が信条”は顧客、社員、地域社会、そして、株主という4つのステークホルダーに対する責任を具体的に明示しています。全世界で13万人、日本ではグループ全体で約5,000人いる社員一人ひとりの、全活動の根底となる考え方なのです」と、グローバルヘルスサービス 健康管理センター 統括産業医の岡原伸太郎氏は説明する。



 岡原氏の所属するグローバルヘルスサービスのビジョンとミッションは明確だ。
 「一人ひとりが長く健康的で幸せな人生を送れる、世界一健康な従業員になってもらうことが、私たちのビジョンです。そしてミッションは従業員がどこでも健康と幸福がベストな状態でいられるように支援することで、その健康で幸福な従業員によって、健全なビジネスが展開され、患者さんや地域社会を健康に導いていくことです」と岡原氏は語る。
 さらに『ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)』、つまり、あらゆる多様性を尊重することで、豊かな発想や柔軟な考え方を促し、一人ひとりが能力を最大限に発揮することも重視している。

 「全世界で活動している会社ですので、世界中の多様なステークホルダーに対する責任を適切に果たし貢献していくためには、世界中の多様な従業員を仲間として尊重し、一人ひとりが活躍して、協力していくことが必要であったという背景があります。病気やその治療、障害といったものも多様性の1つであり、治療と仕事の両立支援の取組みもこの一環です」(岡原氏)。


両立支援とは、従業員の人生そのものを支援すること

 グローバルヘルスサービス 健康管理センターは健康の維持増進と同様に、健康状態が悪化しベストパフォーマンスを発揮できない人を支援し、活躍につなげることにも力を注いでいる。

 痙攣のため検査を受けたところ、肺がんが脳に転移し、てんかんを併発している末期のがんで、余命1年と宣告された従業員の例がある。
 その従業員は放射線治療と抗がん剤治療を受けながら、根治が難しい現実と向き合い、家族ともしっかり話し合って可能な限り働き続けることを希望した。その背景には、生きた証としてがんばっている自分を子供に見せておきたいという強い思いもあったという。当人は営業職で自動車の運転が必須だったが、てんかん発作のため、主治医からは自動車の運転が禁止されていた。そこで、これまでの経験を活かした職場の同僚や顧客をサポートする業務を創出して、治療の副作用がある状態でも業務可能なように配慮した。当人とその家族の思いを尊重し、協議を尽くして、当人の人生を支援した例だ。

 また、長期的な両立支援の例もある。クローン病の手術をうけた従業員の例だ。手術で広範囲に大腸・小腸を切除したため日常の食事は厳密な管理が必要となった。経口による十分なカロリー摂取が困難なため、経管栄養療法(鼻腔内にチューブを入れ、直接、成分栄養剤を摂取する方法)を夜間、10時間かけて実施していた。
 その従業員はデスクワークを中心とした業務に従事している。頻繁に起きる便意のため出社時の通勤ラッシュがとても辛く、また労働時間や通勤時間が長くなると成分栄養剤の摂取時間やその他の生活時間が十分に確保できない状況にあったため、当人と上司、産業医が協議し、もともとの裁量労働制に加えてより積極的に在宅勤務を活用することにした。「場所と時間をフレキシブルに有効活用し、治療と仕事だけではなく、睡眠や休息も含めて、効果的な時間配分が可能になった例です」(岡原氏)。


産業医の立場としてテーラーメイド型の両立支援に取り組む

 岡原氏は、テーラーメイド型の両立支援が重要だと考えている。
 「100名いたら100通り以上の両立支援の形があります。従業員の病気やその治療は様々で、仕事の内容も、支える家族や上司・同僚も様々ですので、一律の制度で対応することは困難です。制度とは、困難な状況を乗り越えていくための道具ですから、それを使う人のマインドセット(考え方)を確立して道具をどう使うかの方がより重要だと考えています。治療しながら仕事を続ける従業員が仕事や家庭でパーソナルベストを発揮して活躍し、幸福になれるように、単に、病気や治療のことだけではなく、家族の状況、職場の状況、仕事内容などをミックスして関係者が一緒になって考えていくテーラーメイドの両立支援を心掛けています」(岡原氏)。

 「情報不足は不安につながり、不安を感じると人は回避的な行動を取りやすいことが分かっています。特に病気やその治療に関する情報は主治医や産業医が出してくれないと、従業員や会社だけでは情報が不足してしまいます」と、岡原氏は語る。

 そして岡原氏は、「産業医である私の役割の1つはこの情報の不足を補いながら、関係者による協議や協力をコーディネートすることです。具体的には、当人や職場の人、主治医などから情報を集めて、それぞれが “したいこと”、“すべきこと”、そして本人と会社が“できること”を整理して、ベターな答えを一緒に考えていくことです。そして、治療と仕事の両立のために制度や従業員のマインドセットを創り、関係者皆で支援していくことは、病気で困っている従業員だけではなく、全ての従業員が働きやすくなること、つまり働き方改革であり、ダイバーシティ&インクルージョンに繋がっています」と語る。

 会社の規模に関わらず、仕事を通して成長したい、社会に貢献していきたい、という従業員の思いは一緒ではないだろうか。自分と異なる境遇の人と力を合わせてビジネスを遂行していくグローバル企業の姿勢は、治療と仕事の両立支援への取組みに通じるものがある。
©Ministry of Health, Labour and Welfare