厚生労働省

治療と仕事の両立支援ナビ

両立支援の取組事例

治療と仕事の両立支援では特に、
個別の配慮を重視しています

株式会社フジクラ

人事部・健康経営推進室 副室長
浅野 健一郎

会社名
株式会社フジクラ
所在地
東京
事業内容
非鉄金属
従業員数
56,961名(連結)(2017年3月末現在)
産業保健スタッフ
12名

株式会社フジクラは1885年(明治18年)の創業以来、電線やケーブルの研究・開発・製造で培ってきた“つなぐ”テクノロジーをベースとした価値ある製品・サービスの提供している。 「お客様からは感謝され、社会からは高く評価され、社員は活き活きと仕事している」を基本ポリシーとして掲げているフジクラは、現在、24の国と地域で事業を展開している。

“活き活き”という状態は、①仕事にやり甲斐、誇りを感じていること。②仕事に熱心に取り組めること。③仕事から活力を得ていること。この3つが揃うことです。

人事部・健康経営推進室 副室長である浅野健一郎氏は「“活き活き”という状態は、①仕事にやり甲斐、誇りを感じていること。②仕事に熱心に取り組めること。③仕事から活力を得ていること。 この3つが揃うことです。当社の健康経営の施策は、すべてこれに照らし合わせて判断しています」と説明する。
疾病や障害、年齢や性別、育児や介護などのライフステージ等に関わらず、全社員が活き活きと働くことをゴールイメージとしており、治療と仕事の両立支援も、この中のひとつと位置づけている。そのため、フジクラは治療と仕事の両立支援を、新しく特別なことだとはとらえていない。



通常、誰かが体調が優れないときや怪我などの時に配慮できるかを、プロジェクト状況や環境などを把握しているライン長が判断する。 通常の病欠などで人事労務担当者や産業保健スタッフに判断を求めることはないのと同様に、がん罹患者であっても早期発見で通常通りに働ける人は、現場で配慮して業務を進めていく。
しかし、当人が苦しい治療が必要になったり、ステージが進行しているときは別だ。勤務情報提供書や主治医からの意見書、産業医からの回答書など、専門職同士の連携が必要になってくる。このときに制度が必要になるのだ。
「制度がなければ両立支援ができないわけではありません。多くの場合は、配慮で対応できています。様々な配慮は常にやっていることです。 個別性が高い治療と仕事の両立支援は、小さなマネジメント単位できちんと配慮できる会社組織であることが重要です」(浅野氏)。会社の規模は関係なく、両立支援で大切なことは配慮と制度・運用の組み合わせだ。

治療と仕事の両立支援は、当人と会社の双方に選択の自由が確保されていることが前提だと浅野氏は指摘する。 「病気になっても仕事することが善ではありません。 治療と仕事の両立は、決して強制ではありませんから、当然、治療に集中したい人や、当人が働きたいと思っても会社が安全配慮義務上、無理だと判断するケースが出てきます」(浅野氏)。

フジクラでの治療と仕事の両立支援の流れは、ガイドラインに沿って行われる。

「当人が会社に申し出ることからスタートします。当人からの働きたいという意思表示を受けたとき、会社としてはその社員に働いて欲しいので、主治医に治療と仕事を両立する方法について医学的な見解をもらうために勤務情報提供書を用意します。 主治医が作成した意見書に条件があれば、会社は制度に則り判断することはもちろん、支援できるかどうかを検討します。支援できそうだと判断すれば両立支援を実施します。支援に及ばなければ、通常の労働契約と同じです」(浅野氏)。



治療と仕事の両立支援とは個別性が高いものだ。
「会社における支援や配慮はすべて個別の特殊性を持ちます。同じような病気であっても治療方法が患者ごとに異なるのと同じです。 制度ありきで進めてしまうと、個別の支援や配慮ができなくなるリスクが生じます。制度とは、原則であり、あくまでツールだと捉えることも大切で、最低限のルールだけを決めて柔軟に運用していくことが肝心だと考えています」と、浅野氏は語る。


また、治療と仕事の両立支援の課題として浅野氏は、社員への周知を挙げる。
「病気になっていないときに、治療と仕事の両立支援の話をしてもほとんどの人は耳に入らないものです。そこで大切なことは、病気になったときに会社の誰かに気軽に相談できるという関係づくりです。 上司や同僚、社内のコミュニティ、産業保健スタッフなど、ひとつでも関係ができていれば支援制度を知る機会が生まれます」(浅野氏)。会社に両立支援の相談もなく辞めてしまう人をいかに少なくするかは、継続的に取り組んでいくという。

フジクラは『社員が財産』だと常に考えている。会社の中で最も希少性が高いものは『人』以外にはないからだ。
「以前は製造装置の性能の違いが経営成果に大きな影響を及ぼしていましたが、時代は変わりました。製造装置では差別化できない今、守るべきは人の能力です。これは簡単に真似できません。 社員の能力をどのようにして上げていくか。社員の能力が下がることに対して何を手当てしていくか。ここに投資することが経営上で最も合理性があることであり、病気になった人を支援することも同じなのです」、浅野氏は語る。
社会の価値観が変化している昨今、多くの人の知恵を集めてカタチにしていくことが企業の競争力の源泉だ。フジクラでは経営投資と考えて、健康施策を強化し、治療と仕事の両立支援を実施している。

クローズアップ

去る2017年12月18日開催のシンポジウム「働き方改革NEXT 治療と仕事の両立へ」において、浅野氏は「全社員が総活躍できる組織になるために」をテーマにしたパネルディスカッションに登壇。フジクラグループの治療と仕事の両立支援について講演した。 (日経チャンネル映像はこちら)



フジクラグループでは、まず会社が働き方の選択肢を増やす取組(働かせ方改革)を実施し、社員一人ひとりが選択をしていく仕組みづくり(働き方改革)を紹介。また、職場を「働きやすい環境に変えること」は、会社が「儲けやすい環境に変えていくこと」につながると説明し、高い関心を集めていた。

取組事例一覧