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両立支援の取組事例

自らのがん罹患を契機に 両立支援に向き合い環境整備

公益財団法人 平野政吉美術財団

(写真右から)
代表理事
坂本 尚夫
総務課長
篠崎 由紀子
業務執行理事/秋田県立美術館 館長
澁谷 重弘

会社名
公益財団法人 平野政吉美術財団
所在地
秋田県秋田市
事業内容
美術館
設立
昭和42年
従業員数
15名
(2020年12月1日現在)
平均年齢
30代後半/男女比 男性1:女性3
産業保健スタッフ
2名

秋田の豪商(米穀商)平野政吉が収集した藤田嗣治を中心とする作品群を美術館に展示公開、秋田県立美術館を管理する平野政吉美術財団。
特定社会保険労務士の資格を持つ総務課長である篠崎氏が乳がんに罹患したことで、事業者と罹患者の双方の立場からの両立支援を考え、職場環境の整備を進めました。

自らががんに罹患したことがきっかけで、両立支援の制度整備を始められたとお伺いしました

私(篠崎氏)の乳がんが発見されたのは、令和元年9月でした。検査の結果、ステージⅡA 、ルミナールA型タイプでした。また手術の6か月間前にホルモン治療をすることになりました。
当時、財団にははっきりとした両立支援の制度・仕組みはなく、私が乳がんになったことで改めて両立支援を総務課長としての事業者側と、支援を受ける側から考えることとなりました。
この6か月の術前治療の期間が、私にとっては「両立支援の仕組み作りをする時間」でした。

まずは何から始められたのでしょうか?

私はがんサバイバーと同時に総務課長でもありますから、2つの立場になって両立支援に必要なことを考えました。
サバイバーとして考えたのは「仕事を続けられるのか」「治療や通院で職場に迷惑がかかるのではないか」「有給休暇だけで治療をカバーできるだろうか」ということです。
事業者側からは「本人の病状、就業への必要な配慮、治療方針やその期間を知ること」「休業期間中の仕事の引継ぎ」「休業期間に他の職員への仕事の偏りや不平等感がないか」「安心して治療に専念できる有給休暇以外の収入が補償される休暇の必要性」です。
そこから、総務課の職員に両立支援コーディネーターの研修を受講してもらい、両立支援コーディネーターとして相談窓口担当者に配置しました。 両立支援コーディネーターを配置することで申請できる「治療と仕事の両立支援助成金(環境整備コース)」を申請し、両立支援の環境整備のために活用しています。

就業規則はどのような改正をされましたか?

有給休暇以外の「治療休暇」を作りました。これは、がん、脳卒中、糖尿病、肝炎、その他のこれに準じる疾病の場合に取得できるもので、半日単位で利用できます。
さらに、失効する年次有給休暇を上限40日まで積立でき、1週間以上の本人の疾病、家族の看護・介護などに半日単位で取得できる積立休暇制度も作りました。
また、今回の乳がん罹患の経験から、がん検診の充実も図りました。女性職員全員に乳がん検診、希望者全員に子宮がん検診、腫瘍マーカー、エコーを年齢制限なしで事業所負担により受診できるように整えました。
このような取組を職員全員に周知徹底するとともに、総務課に両立支援の窓口を設置しました。傷病手当金、高額医療費制度などの説明も行っています。

両立支援の環境整備を整える上で重要なことは何でしょうか?

当事業所の場合は、事業主や役員が深い理解を示し、賛同していただけたことが大きいです。
がんは、生涯に2人に1人がなると言われていますので、普段から職場の健康意識を高め、他人事ではなく「病気はお互いさま」という風土を醸成することも大切です。

取組事例一覧