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両立支援の取組み事例

ガイドラインの内容を踏まえて全社員に明確に伝わるように明文化。両立支援で安心して働ける会社づくりガイドラインの内容を踏まえて全社員に明確に伝わるように明文化。両立支援で安心して働ける会社づくり

 宮坂建設工業株式会社は、北海道帯広市を拠点とする総合建設業で、札幌に支社、東京と釧路に支店を持つ。大正11年の創業で、まもなく100周年を迎える歴史ある企業だ。
 「世のため、人のために尽くせ」という経営理念は、4代目の現社長にも守られている。地域の防災にも力を入れており、毎年実施する防災訓練には、4千人超の地域住民が参加している。

30代職員が少ないことが、両立支援に取り組むきっかけ

 総務部部長の武山 純氏は、年代別職員構成について、「我が社において、30代の職員構成比率が他の年代と比べて大きく落ち込んでいます。平成10年頃からの約10年間は北海道内の建設業の倒産や吸収合併が繰り返された、いわゆる建設不況でした。その影響を受けて採用が厳しかった年代です」と指摘する。

 10年後を考えた時、体力も経験も充実する40代が少ないため、現在の40代以上の社員に引き続き活躍してもらう必要がある。しかし一方で、年齢を重ねると病気の不安が拭えない。万が一、会社を辞めなければならない状況になれば「会社にとっては大きな痛手になりますし、本人も治療費など様々な負担がかかってきます」と、武山部長は心配する。
 これが、宮坂建設工業が治療と仕事の両立支援に取り組むきっかけのひとつだ。

 さらにもうひとつのきっかけによって、取組みは加速していく。
 「札幌支社に、札幌中央労働基準監督署の安全衛生の担当官が、安全衛生指導に来られた際に、両立支援の制度について説明してもらいました。さらに数か月後、北海道産業保健総合支援センターによる治療と仕事の両立支援に関する支援メニューについて、今度は帯広労働基準監督署から紹介されましたので、すぐに帯広本社と札幌支社で申し込みました。産業保健総合支援センターより派遣された両立支援促進員から、両立支援の流れや体制づくりについて説明を受けました」と、武山部長は説明する。

現行制度の運用で両立支援を実施

 過去10年以内に病気を理由に退職した社員はいないものの、社員の中には、心臓や腎臓の疾病などを抱え、定期的な通院、加療を行いながら勤務している者もいるという。「現行の就業規則や健康管理規定を柔軟に運用して、時短勤務を続けながら定期的に治療を受けられるよう配慮しています」と武山部長は振り返る。

 武山部長によれば、宮坂建設工業の現行制度とは次のようなものだ。
 「現在、『在宅勤務制度』は明文化されています。建設業では多くの社員にとって在宅勤務は難しいものですが、可能な職種に限って認められています。『時差出勤制度』と『短時間勤務制度』については、明文化された規定ではありませんが、就業規則による運用が可能になっています。『試し勤務制度』は、現行では精神障害に限定したものですが職場復帰支援策として規定されています。今後は他の疾病にも広げていく予定です」。

 また、『年次有給休暇積立制度』も明文化されている。「本来ならば有給休暇は100%消化してもらうのがよいのですが、すべてを消化してしまうと不安だという声があります。プロジェクトによっては取得しづらい時期もあります。そこで規定を変更し、上限50日の休暇積立を可能にしました。これにより年次20日付与される有給休暇と合わせて最大3か月の有給休暇取得が可能になりました。たとえば、私傷病により連続して1週間の療養の必要がある場合や、入退院を繰り返すような疾病を抱えた場合などには、有用な制度だと考えています」と武山部長は説明する。

心臓ペースメーカー植込み術から復職した社員の事例

 数年前、心臓ペースメーカーを植え込む手術を受けた社員がいた。不整脈や動悸の自覚症状があったため、自ら受診し発見した。まとまった有給休暇を取得し、手術を受け、無事成功したが、主治医からは約1ヶ月間の自宅療養が必要だと告げられた。

 「当人は、まず会社の健康管理者に相談しました。安全衛生および健康管理運用要領に基づいて、会社に対して健康管理区分の申請を行いました。この社員は、医療管理区分2『治療の必要はないが医師による経過観察を必要とするもの』で、勤務管理区分『A要療養』でした」(武山部長)。


図 宮坂建設工業が使用している医療管理区分・健康管理区分




 体調面を考慮して休暇を取得し、時には、短時間勤務をこなすこともあったという。その後、回復し勤務管理区分『C要注意』に変更になり、さらに勤務管理区分『D平常』となって通常勤務が可能となった。武山部長によれば、この社員は現在も第一線で働いているという。
 この社員は、現行制度での対応が可能でしたが、今後、より重篤な疾病を抱えた方が現れた場合など、対応が困難になるケースも考えられる。
 「そのためにも治療と仕事の両立支援制度を導入し、規定として明文化することで、すべての社員の理解を促し、安心して日常の仕事に打ち込めるようにしたい」と、武山部長は考えている。

両立支援を制度化するにあたって大切なこととは?

 宮坂建設工業は、治療と仕事の両立支援を本格的に取り組むにあたって、まず体制や現行制度の見直しから進めていく。

 「なによりも大切なことは、せっかく導入した治療と仕事の両立支援制度を絵に描いた餅にしないこと。そのために両立支援の入口となる”相談窓口”の設置について、社内の安全衛生委員会が中心になって、慎重かつ十分な審議を重ねていき社員が相談しやすく、安心して利用できる窓口を設置したいと考えています」と、武山部長は語る。

 決めるべき内容は、どこの部署に設置するのか、新たな部署を作るのか。さらに、担当者の選定、個人情報の管理についてなど多岐に渡る。もちろん休暇制度・勤務制度の整備・充実に向けた諸制度の見直し・拡充に着手していくことも忘れてない。

 「人手不足が深刻化する昨今、今いる社員に少しでも長く健康に勤めていただきたいと考えていますので、治療と仕事の両立支援は欠かすことのできない取組みだと認識し、よりよい職場環境づくりを推進していきたい」と武山部長は抱負を語る。

 全社員に確実に伝わるようにし、安心して働いてもらうために武山部長は、「明文化することで安心して働ける職場づくりを進めていく必要があります」と、語った上で、「『事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン』の内容を、当社の状況に照らし合わせた上で、全社員に確実に運用していけるかが大事なポイントだと考えています。難しく考えすぎずに、会社に相応しいかたちで、できるところからはじめていきたい」と、力を込めた。

 技術の継承は、建設業においても喫緊の課題だろう。どんなにロボット技術が発達しても、物事の本質や困難を打開する技を伝えられるのは卓越した技術を持つベテラン社員一人ひとりに違いない。治療と仕事の両立支援の取組みが、宮坂建設工業が誇る数々の技術を、新しい時代へとつないでいく。
©Ministry of Health, Labour and Welfare