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両立支援の取組み事例

小規模企業は両立支援を進めやすい。現場を詳しく理解する部門長が面談を重ね、きめ細かなサポートを実施小規模企業は両立支援を進めやすい。現場を詳しく理解する部門長が面談を重ね、きめ細かなサポートを実施

いつまでも健康に働いてもらうために健康経営に注力

 北海道恵庭市にある恵庭建設株式会社は創業60有余年の土木工事や建築工事を主体とする地場ゼネコンだ。本社のある恵庭市は、札幌市と新千歳空港の中間に位置し、道央圏を主な営業エリアとしている。「人と暮らしを見つめ地域社会への貢献」を企業テーマに、地域に根ざした企業として歩んでいる。2018年には健康経営優良法人(中小規模法人部門)に認定されている。

 常務取締役の中川則佳氏は「”社員を大切に、社員あっての会社”という考えを経営の基本にしており、社員が活き活きと健康で安心して働くことができる職場づくりを目指しています」と語る。事実、福利厚生の充実や、健康への取組みに全社を挙げて注力している。そのきっかけはこうだった。「勤続年数が長い社員が多いためでしょうか、健康診断の結果票に医師からの所見が書かれている人が増えたことで、何か対策を講じなければと考えました」と中川氏は振り返る。

35名の企業で行っている治療と仕事の両立支援とは

 「小さな会社ですので、治療と仕事の両立支援のための専門部署もスタッフもおりません。代わりに、所属の部門長が窓口となり、“面談”に重きを置いた対応をしております」と中川氏。

 恵庭建設が行っている面談は「事前面談」「復帰前面談」「復帰後面談(状況確認面談)」の3つがあり、それぞれの場面での確認事項が共有されている(図参照)。




 疾患を抱えながら働く社員は、まず、部門長が面談を実施する。
 「本人の体調や治療状況に応じた勤務が可能かどうかを判断することが目的です。可能であれば、本人の希望を確認しながら、柔軟な勤務体制で継続して働いてもらいます。このとき、病状等で不明点があれば主治医に相談するという選択肢も考えています。

 業務に支障があると判断した場合、配置変更や業務支援が必要となりますが、まずは所属部門内で検討・調整することになっています。人事や労務に関わる内容は総務部で対応していきます。もちろん社長への報告相談を行います」(中川氏)。



腎臓がんから復職した社員の事例

 勤続30年以上のベテラン社員が人間ドックを受診し、腹部エコー検査で腎臓付近に腫瘍の疑いがあり、その後の精密検査で腎臓がんと診断された。入院前に部門長との「事前面談」が実施された。

 10日間の手術入院期間と5日間の自宅療養の後、無事に職場へ復帰となり、出社後すぐに「復帰前面談」が実施された。「工事現場の業務は身体への負担が大きいと判断して、内勤業務で見積・積算等の業務に従事してもらうことになりました」(中川氏)。
 日を追うごとに体調は回復し、3か月余り経った頃の「復帰後面談」で状況確認のヒアリングが実施された。その結果、工事現場への復帰が決まり、現場所長として復帰した。

 しかし、所長として現場に戻ってから2か月後に体調を崩してしまう。1週間ほど休みを取った後、部門長と「状況確認面談」が実施された。この結果、担当していた現場所長から内勤業務へ戻ることとなった。

 さらに、約2か月後の「状況確認面談」では、本人の希望もあり、内勤業務に加えて、体に負担の少ないリフォーム工事や営繕工事を担当することになった。この業務を1年7か月間続けた後、「状況確認面談」が行われた。「本人も体力的に自信が持てるようになり、新しく始まる大手ゼネコンと当社の共同企業体工事に参加してもらうことなりました。そこで現在も活躍しています。共同企業体にも当人の状況を説明しており、了解のもとでプロジェクトを進めています。もちろん現在も定期的に通院しています」(中川氏)。

小さな会社の方が両立支援に取組みやすい

 恵庭建設には数名のがんに罹患した社員がいる。
 「治療しながら働いている社員を見て、周りの社員は、もし自分が病気になっても退職することなく安心して働くことができるんだという認識が会社全体に浸透しています。いつか自分も同じような立場になるかもしれないという思いが重なり合い、いま社内には『お互い様』の精神が行動に現れて、連帯感が強まったと感じています」と、中川氏は両立支援に取り組んだメリットを紹介する。

 この延長線上には、「人材の確保、人材の定着、組織の活性化など、会社全体に良い効果が期待できます」と中川氏は語る。
 もし病気が原因で社員が退職したら、その社員が持つ経験やノウハウまでも失うことになる。会社が被る損失は計り知れないことを強く認識する中川氏は「治療と仕事の両立支援への取組は、継続雇用の可能性が高まりますから、本人にとっても会社にとってもプラス効果をもたらします」と考えている。

 最後に、これから両立支援に取り組もうとしている企業へのアドバイスを聞いた。

 「治療と仕事の両立支援への取組みを考えた時に、大きい会社だからできるものだと考えがちですが、実は、私どものような小規模会社の方が取組みやすいと考えています。なぜならば、社内に知らない人はいませんから、アットホームな雰囲気の中でコミュニケーションが取りやすいためです。強い団結力・チームワークが育まれますから、誰かが病気になったらバックアップしようという気持ちが自然と芽生えてくるからです」と、中川氏は断言する。

 「たとえ病気でも働き続けられる環境をつくることは会社の責務である」と、邁進する恵庭建設は、今後も健康経営を進めるとともに治療と仕事の両立支援に積極的に取り組むことで、社員一人ひとりが安心して働ける職場づくりを進めていく構えだ。

©Ministry of Health, Labour and Welfare