株式会社ガスパル

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保健師の採用を機に、健康相談の窓口を保健室として設置。治療が必要となった場合の相談対応・職場復帰支援の手順の標準化にも取り組む

企業概要

所在地 東京都品川区東品川2-2-24
業種 卸売業・小売業
設立 2002年6月27日
従業員数 グループ全体1136名
(2025年5月1日現在)
平均年齢 39歳 / 男女比 男性7:女性3
産業保健スタッフ 3名(保健師(正規)1名、精神保健福祉士(正規)1名、産業医(嘱託)1名)
事業内容 ・エネルギー事業(LPガス・都市ガス・太陽光)
・コインランドリー事業
・LPガス設備工事

取組の概要

従業員の健康に関する相談窓口として、保健室を設置。保健師が中心となって、治療と仕事の両立支援に関わる社内ルールや手順の標準化にも取り組み、個別対応から社内体制の整備が進んだ

取り組んだ背景、経緯

  • 全国に事業所を展開する中で、2025年には10年前と比較して従業員数が約2倍になりました。従業員数の増加に伴い、体調を崩す従業員数も増えました。そこで、保健師を正規で採用し、2021年4月には保健室を設置して、健康相談に応じる体制を整えました。
  • 当社では現在、治療と仕事の両立支援が必要な従業員は少数ですが、定年を迎え、再雇用となった高齢の従業員もいることから、今後に向けて、病気となっても安心して働くことができる制度の整備を進めています。
  • 産業保健総合支援センターや日本産業衛生学会などでも治療と仕事の両立支援に注目していることから、これらのホームページ等から情報収集し、社内制度に反映するようにしています。

POINT

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保健室が中心となって、厚生労働省の『事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン』も参考にしながら、社内の両立支援の体制や制度を整備していきました。

取組・推進体制、労使での話し合いの機会

  • 保健室の産業保健スタッフの体制は、保健師(正規)のほか、産業医1名(嘱託)、精神保健福祉士1名(正規)の計3名です。
  • 労働組合はありませんが、研修やイベント等の事業を行った後には必ずアンケートを行い、従業員の満足度や要望を把握して次回以降の企画、取組に活かしています。

POINT

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保健室を設置して体制を整えるとともに、職場復帰に向けた対応について標準的な手順を作成して取組を推進しています。

相談窓口

  • 体調を崩して長期休業する従業員は以前からいましたが、保健室が設置される前は社内体制が十分ではなく、個別対応に留まっていました。
  • 保健室を設置した後、会社としての対応方法を明確にするため、保健師が両立支援コーディネーター基礎研修を受講しました。研修では、両立支援のための必要書類とその様式や、医療機関に提供すべき情報など、実務的な知識も得ることができました。そして、治療と仕事の両立支援に関わる社内ルールや手順の標準化に取り組みました。
  • (同社提供)

  • (インタビュー内容を踏まえて作成)

  • 会社として標準的な相談対応・職場復帰支援の手順を作ることが大切だと考えています。また、保健室が常に職場を見守ることは難しいため、現場の管理職や担当者と協力し、必要な情報を適切に共有する体制を構築しています。また、就業制限や個別の配慮が必要な場合は主治医と密に連携し、産業医面談を通じて従業員に確認する流れが定着しつつあります。
  • 例えば、入院することになった場合、第一報を保健室にもしてもらい、標準化された手順に沿って、職場復帰や治療と仕事の両立支援に向けて対応していきます。従業員に対しては、「病気になったら、まず保健室に連絡してほしい」と周知しています。
  • 一方、社内の治療と仕事の両立支援制度や相談窓口を知らない従業員も多いため、社内ルールや両立支援の進め方について掲載した「仕事と治療の両立支援ガイド」を作成しました。主治医から会社の両立支援制度について聞かれたが、わからないという場合は、人事部から従業員に制度説明を行います。

(同社提供)

<自社制作「仕事と治療の両立支援ガイド」より>

POINT

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病気を主治医から告げられた際に、今後の生活がどのようになるのか、イメージを持ちづらい場合もあることから、当社で作成した「仕事と治療の両立支援ガイド」では、従業員自身が主治医とコミュニケーションをとって確認ができるよう、病院で両立支援を相談する際の会話の切り口なども紹介しています。

標準的な対応手順

  • 厚生労働省で作成している勤務情報提供書などのフォーマットを参考に、従業員の状況に応じて必要な情報を記載して、主治医に情報共有しています。産業医は常勤ではありませんが、迅速な対応が必要な場合には、保健室の保健師が両立支援コーディネーターとして、主治医に情報を提供することができています。
  • (インタビュー内容を踏まえて作成)

  • 従業員と産業医の面談では、就業上の必要な配慮を確認します。そして、従業員の同意を得て産業医から職場に対する意見書や面談サマリーを上長に共有します。治療の経過や就業上必要な配慮は伝えますが、服薬などの詳細な医療情報は共有事項に含めていません。
    従業員の就労環境や職場での困りごとについては、保健室の保健師が従業員にヒアリングし、その内容を産業医に共有します。
  • (インタビュー内容を踏まえて作成)

POINT

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重い物の運搬や車の運転など、通常よりも危険性の高い業務に携わる場合、特に配慮しています。また、管理職研修では、安全配慮義務や治療と仕事の両立支援について情報提供しています。

脳梗塞に罹患した従業員への支援

  • 販売の業務に携わる従業員が脳梗塞になり入院治療を受け、退院時には感覚麻痺が残っていました。主治医からは就業可能との意見が出ていましたが、現場作業や機器操作があるため、職場では慎重な対応が必要でした。主治医意見書に、1か月間、残業時間を制限する必要がある旨が記載されていたことを踏まえて、産業医が職場に対して、当該従業員の残業を1か月間禁止する意見書を発行しました。
  • 主治医意見書では、残業時間の制限は1か月間とされていましたが、従業員が、一部業務(重量物の取り扱いや暑熱場所での作業、休日出勤等など)に不安を感じていたため、職場では、半年ほど従業員が不安を感じるこれらの業務を制限するなどの配慮を継続していました。保健師が従業員や職場の状況を確認した際、職場では実際にはどの程度の配慮が必要なのか、判断が難しいことから、このような状況にあることが判明しました。
  • そこで、保健師が従業員に面談を行ったところ、従業員が通常業務への復帰に不安を抱えていることが確認できたため、情報提供依頼書を作成し、主治医に意見を求めることにしました。
  • 保健師が従業員と職場の双方に対してヒアリングを行い、産業医がその内容を基に情報提供依頼書を作成し、産業医名で主治医に提出しました。従業員の同意を得たうえで、通勤時間や作業内容、職場環境、残業状況、職場の要望などを詳細に記載しました。
  • 主治医から、情報提供依頼書に記載の内容について、特に配慮をしなくても対応可能な状態にあるという回答があったことを受けて、従業員に確認したところ、主治医から「勤務を制限する必要はなく、生活習慣やストレスに気を付けてくだい」と説明を受けたことで不安が解消したとのことで、職場での配慮を解除し、通常業務に復帰することとなりました。
  • このステップにより、主治医に職場の状況と本人の不安感を伝えることができ、本人の不安軽減と職場での配慮が明確になりました。
  • (同社提供)

POINT

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情報提供依頼書を作成する際、現場の状況や従業員の不安を客観的に整理し、従業員・職場・保健室で共通認識を持つことを重視しました。

まずはこの一歩から!

  • 人事部と産業保健スタッフが協力して、職場復帰や両立支援の標準的な手順を検討したことが、個別対応から社内の体制整備への一歩となりました。

POINT

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人事部は制度の整備を行い、産業保健スタッフは産業保健総合支援センター等より最新の情報を収集しながら対応の中身を検討する等、それぞれの役割・強みを発揮しながら一緒に取り組みました。

  • (インタビュー内容を踏まえて作成)

これから取り組む企業の皆さんへ

  • 従業員が病気や個々の事情で辞めてしまうことは、当事者だけでなく、会社にとって大きな損失となります。従業員に治療が必要となっても、従業員のことを第一に思って、長く働くことができる環境づくりを目指していきたいと考えています。他の企業の皆さまとも、こうした姿勢を共有しながら、一緒に取り組んでいければと思います。
    (人事本部の高橋さん、保健室の栃木さん、保健室の萩原さん)

その他の取組

治療と仕事の両立支援に関する基本的な考え方・方針、提示方法

従業員に対して、「治療が必要となって困ったことがあれば、保健室に連絡をしてほしいこと」、「治療と仕事を切り離すことなく、両立支援制度を利用しながら働けること」を発信

  • 「仕事と治療の両立支援ガイド」では、仕事と治療の両立を支援する制度の紹介、利用手続きの方法、プライバシーへの配慮、職場に病状を開示することのメリットを記載しているほか、仕事と治療の両立に心配はあっても、安心して働くことができるよう会社として支援していくことを表明しています。
  • また、従業員に対するメッセージとして、「治療が必要となって困ったことがあれば、まずは相談窓口である保健室に連絡をしてほしいこと」、「治療と仕事を切り離すことなく、両立支援制度を利用しながら働けること」を発信しています。
  • 保健室では、体力測定やベジチェック、救急講習、ウォーキングイベント(ecoウォーク)などを実施したり、四半期ごとに社内報「保健室だより」を発行し、取り上げてほしいテーマや企画の意見を募集したりしています。全国各地の事業所を保健師が巡回し、健康講話やセルフチェックなども行っています。保健師と従業員が顔を合わせる機会を増やし、相談しやすい環境づくりに努めています。
  • (同社提供)

休暇制度、勤務制度

長期入院だけでなく、通院でも柔軟に取得できるよう、休暇制度を見直し

  • 取得しなかった年次有給休暇を最大60日まで積み立て、従業員およびその家族の病気療養の際に取得できる制度を設けています(サポート有給休暇制度)。長期入院によりまとまった休みが必要となった場合のほか、がん治療、透析、不妊治療等で1日単位や時間単位の休みが必要となった場合にも、柔軟に取得することができます。
    当初、取得事由としては長期入院のみを想定していましたが、医療の進歩により短期間の入院や通院治療が増えたため、従業員が活用しやすいよう、柔軟に制度を変更してきました。

取組の効果、取組課題の克服方法、今後の展望

対応の標準化と個別対応のバランスをどのように取るかが今後の課題。がん治療を終えた従業員による体験談など、従業員の声を少しずつ発信していくことも検討

  • 治療と仕事の両立支援に関する取り組みについて、対応の標準化を行ったことにより、入院や手術をした従業員に対して、職場復帰時の面談などのステップを、確実に実施することができています。
  • 今後の課題としては、対応の標準化と個別対応のバランスが挙げられます。復帰のタイミングや働き方の調整について、治療を行いながら働く従業員や、その職場の意向をどのように調整するかが難しいと感じています。実際に、職場の上長から、出張や残業制限の解除時期などについて相談が寄せられることもあります。
  • がん治療を終えた従業員から、体験談を発信したいとの申し出がありました。制度の紹介だけでなく、実際に制度を利用した従業員から体験談が発信されることで、他の従業員も安心して働くことができるようになると考えています。今後、従業員の声を少しずつ発信していきたいと思います。
  • 治療と仕事の両立支援は非常にセンシティブな課題で、個別性が高く、標準化と個別対応のバランスをとることは難しいですが、今後も従業員の声を丁寧に聞きながら、より良い支援を目指していきたいです。

(令和8年3月時点)