株式会社昭栄精機
治療と仕事の両立支援の方針を明示し、「病気=退職ではなく、必ず相談してほしい」と周知
企業概要
| 所在地 | 山梨県南アルプス市鏡中條4085番地 |
|---|---|
| 業種 | 製造業 |
| 設立 | 1970年4月2日 |
| 従業員数 | 44名(2025年6月13日現在) |
| 平均年齢 | 47.1歳 / 男女比 男性7:女性3 |
| 産業保健スタッフ | 1名(産業医(嘱託)) |
| 事業内容 | 精密部品の切削加工 |
取組の概要
これまで大病に罹患した従業員はいないものの、治療と仕事の両立に不安を覚える従業員のために取組を開始。治療と仕事の両立支援の方針を策定・明示し、「病気=退職ではなく、必ず相談してほしい」と周知している
取り組んだ背景、経緯
- 現在の社長が2018年に就任した当時、人手不足が深刻化しており、従業員の定着率の低さが課題になっていました。労働人口は減少しており、若い世代を中心とした就労感は変化しています。人手不足の解消のためにも、ダイバーシティ推進が不可欠だと実感していました。
- そうした中、地域の商工会議所の勉強会において健康経営を知りました。従業員が心身ともに健康であることが企業の生産性向上に直結する、という考え方に共感し、2020年から健康経営に取り組んでいます。
- これまで大きな病気に罹患した従業員はいませんでしたが、健康経営を推進する中で、高齢の従業員を中心に、治療と仕事の両立に不安を感じている従業員が多くいることがわかりました。治療と仕事の両立を支援する必要性を強く認識し、治療と仕事の両立支援を進めることにしました。
-
代表取締役 佐藤 元章さん
取組・推進体制、労使での話し合いの機会
- 社長と経営企画部が中心となって取組を推進しており、社外セミナーにも参加するなど、治療と仕事の両立支援の情報収集に努めています。2023年には、経営企画部担当者が両立支援コーディネーター基礎研修を受講しました。
- 当社オリジナルの治療と仕事の両立支援マニュアル(以下、マニュアル)の作成にあたっては安全衛生委員会で審議しました。また、管理職が集まる経営会議では、治療と仕事の両立支援に限らず個別の相談事例の対応方針を議題として取り扱うこともあります。
- また、社内アンケート調査を実施して、従業員が治療と仕事の両立に関して具体的にどのような不安を抱えているのかを聞きました。その結果、両立支援に関する制度がなく、個別対応となっている状態に不安を感じていることが明らかになりました。
- こうしたことから、治療と仕事の両立支援の社内制度化を進めるとともに、従業員が実際に社内制度を利用する際の対応の流れを明確にしたマニュアルや、当社オリジナルの治療と仕事の両立支援ハンドブック(以下、ハンドブック)の作成に取り組むこととしました。
POINT
事業者の基本方針の表明
- マニュアルを作成する中で、「病気やケガでも仕事を続けられる環境の整備及び従業員の健康保持、疾病予防を行うために治療と仕事の両立支援を行う」ことを方針として定めました。治療で休むことが必要になった従業員が遠慮なく休むことができ、その他の従業員も快く送り出せる職場づくりを心がけています。また、治療と仕事の両立支援の必要性や意義を従業員に共有し、治療と仕事を両立しやすい職場風土の醸成を図っています。
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<マニュアルに記載の治療と仕事の両立支援の方針>
(同社提供資料)
- 従業員にマニュアルの周知を図るため、両立支援についてわかりやすくまとめた当社オリジナルのハンドブックを作成しました。ハンドブックでは、基本方針、従業員へのメッセージ、管理職へのお願い(マネジメントや雰囲気づくり)などを掲載しています。このハンドブックでは、「病気=退職ではなく、必ず相談してほしい」ということを明記しています。ハンドブックは課長が集まる会議で説明をし、その後、全従業員に紙面で回覧して、周知を図りました。
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<ハンドブックに記載の従業員へのメッセージ>
(同社提供資料)
- また、期初の方針発表と期中の中間発表の機会には、社長から全従業員に向けて「どんな事情があっても働きやすい職場づくりを目指そう」と、メッセージを発信しています。健康をテーマにしたセミナーを年2回実施したり、経営企画部から健康に関する情報を社内に発信したりするなど、従業員の健康を大切にしているというメッセージを伝えています。
POINT
マニュアルの作成に加えて、従業員向けにハンドブックを作成して、両方の周知を図りました。あわせて、「病気=退職ではなく、必ず相談してほしい」というメッセージをハンドブックに明記して従業員に伝えるようにしました。
まずはこの一歩から!
- 両立支援コーディネーター基礎研修のほか、厚生労働省の「治療と仕事の両立支援ナビ」や「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」を読んだことで、当社オリジナルのマニュアル作成につながりました。
- また、産業保健総合支援センターに相談し、治療と仕事の両立支援に関する取組、規定、体制の整備や他の企業の取組などについて教えてもらったことで、社内制度の整備等の参考になりました。
POINT
対象となる従業員の有無に関わらず、治療と仕事の両立のための環境整備は始められます。参考となる様々な資料が公開されていますので、上手く活用してはいかがでしょうか。
これから取り組む企業の皆さんへ
- 深刻な人手不足の中、職場からの支援がないために、治療と仕事の両立をあきらめて退職する従業員がいることは、企業にとって大きな損失です。退職せずに安心して働き続けられるように、事前に多様な選択肢を用意しておくことが、企業の成長と存続にとって重要なことではないでしょうか。
(経営企画部・両立支援コーディネーター:佐藤さん)
その他の取組等
相談窓口
相談窓口を明示するとともに、「従業員本人からの申告によって両立支援が始まる」ことも記載。治療と仕事の両立支援に限らず、相談窓口を経営企画部に集約化し、一元的に相談に応じる体制を整備
- マニュアルやハンドブックの中で、「病気やケガと診断されたら、まずは一人で悩まずに会社へ申告しましょう。」と示し、申告がきっかけで両立支援が始まることを周知啓発しています。
- 経営企画部が治療と仕事の両立支援の相談窓口を担っているほか、上司や社長も相談先の一つとして明示しています。また、産業医への相談を希望する場合の手続きも示しています。
- 治療と仕事の両立支援に限らず、相談窓口は経営企画部に集約化しており、経営企画部は従業員の相談を一元的に請け負っています。何か困ったことがあれば経営企画部が対応してくれるという安心感が従業員に浸透しています。
- その他、保険会社と契約して社外に健康に関する電話相談窓口を設置しています。
休暇制度、勤務制度
年次有給休暇は時間単位、半日単位で取得可能。時差出勤制度、短時間勤務制度、フレックスタイム制なども従業員の個々の状況に応じて柔軟に運用
- 年次有給休暇は時間単位、半日単位で取得可能です。勤務時間に関する制度は、時差出勤制度、短時間勤務制度、フレックスタイム制が利用できます。
- 各制度の利用事由は限定しておらず、治療との両立に限らず、子育てや介護との両立、家業の手伝いなど、多様な事由で利用可能です。様々な事情を抱えた従業員の多様な働き方を実現するために、従業員の個々の状況に応じて柔軟に運用しています。
取組の効果、取組課題の克服方法、今後の展望
従業員同士がお互い様と思える職場環境に。健康経営優良法人認定制度でブライト500にも認定
- 健康経営や治療と仕事の両立支援を推進した結果、職場で休みやすい雰囲気が醸成され、通院のための早退や中抜けなども気軽にできるようになりました。従業員同士が日常的に体調を気遣うようにもなり、お互い様と思える職場環境になりました。また、2024年、2025年には、健康経営優良法人認定制度においてブライト500に認定されました。周囲の企業からも取組を推進する方法を聞かれることが多くなりました。
- 一方で、これまでに、治療と仕事の両立支援の対象となる従業員がいないため、知識や体制を維持しながら、周知を続けていくことの難しさを感じています。治療と仕事の両立支援に関する事例の蓄積がない中での継続性を保つ方法を検討しています。例えば、両立支援コーディネーター基礎研修を他の従業員に受講してもらうことなどを考えています。
- また、治療と仕事の両立支援において管理職は大きな役割を担いますが、管理職への教育が十分にできていないと感じています。今後、治療が必要になった部下に対する対応方法などを管理職研修で取り扱いたいと考えています。
(令和8年3月時点)
病気に罹患した従業員がいなくとも、治療と仕事の両立に不安を覚える従業員のために取組を開始しました。社内アンケートで把握した社員のニーズや、社外セミナー・両立支援コーディネーター基礎研修から得た情報を踏まえて、マニュアルの作成に努めました。