株式会社福屋
保健室の継続的なアウトリーチ型の取組により、相談しやすい風土が定着
企業概要
| 所在地 | 広島県広島市中区胡町6-26 |
|---|---|
| 業種 | 卸売業・小売業 |
| 設立 | 1929年10月1日 |
| 従業員数 | 415名(2025年4月1日現在) |
| 平均年齢 | 45歳 / 男女比 男性3:女性7 |
| 産業保健スタッフ | 6名 産業医(嘱託)2名、保健師1名、衛生管理者3名 |
| 事業内容 | 福屋は、広島で初めての百貨店として1929年(昭和4年)に創業しました。八丁堀本店は1938年(昭和13年)に竣工し、当時「白亜の殿堂」と称される西日本有数の建物でした。1945年(昭和20年)の原爆被害を受けながらも復旧し、現在も竣工当時の外観を引き継いでいます。創業以来掲げる「皆様の福屋」というモットーのもと、地域に根ざし、愛され親しまれる百貨店を目指し、2029年の創業100周年に向けてさらなる発展を続けています。 |
取組の概要
健康相談窓口の担当者が、新入社員が配属された部署に足を運ぶなどして、従業員にアプローチ。長年にわたりきめ細かな対応を行うことによって、困ったことがあったら、相談しようという風土が醸成
取り組んだ背景、経緯
- 2005年頃、メンタルヘルスケアのため、社内診療所(現:保健室)に相談窓口を設置し、当時診療所に常駐していた看護師を配置しました。
- 相談窓口の設置から5年ほどが経過した後には、メンタルヘルスに関する相談に加えて、他の病気治療に悩む従業員からの相談も寄せられるようになり、治療と仕事の両立支援の取り組みを開始しました。
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<保健室> (同社提供)
取組・推進体制、労使での話し合いの機会
- 健康相談窓口は、保健師1名と人事担当者1名の計2名で運営しています。相談対応の質を高めるため、人事担当者は心理相談員の資格を取得し、専門性をもって従業員支援にあたっています。また、必要に応じて産業医や部署責任者と連携し、両立支援を必要とする従業員と事業者で、就業上の措置や配慮内容について話し合いの機会を設けることで、従業員が安心して働ける環境づくりを推進しています。
POINT
相談窓口、社内における両立支援体制の整備
- 健康相談窓口は、正規・非正規といった雇用形態にかかわらず、すべての従業員が利用できます。また、百貨店内のテナント企業で働く方々(当社従業員以外)も利用できる体制としています。
- 利用促進のため、社内相談窓口の案内ポスターを掲示していますが、周知だけでは利用にはつながりにくい状況があります。そのため、月1回、社員食堂等で実施している血圧測定などの健康測定会の際に、健康相談窓口の案内チラシを配布して紹介するなど、利用しやすい環境づくりに取り組んでいます。
- 新入社員については、入社研修で健康相談窓口を紹介しています。また、配属後には保健師が新入社員の配属先部署を訪問し、業務状況や最近の様子を確認しながら相談対応を行うなど、入社間もない時期であっても相談しやすい体制を整えています。さらに、入社してから6か月後のフォローアップ研修の際には個別相談の時間を設けるほか、店舗内で新入社員と顔を合わせた際には声掛けを行うなど、日常的に気軽に相談できる関係づくりにも取り組んでいます。
- 社内の健康相談窓口に加え、外部機関とも契約して社外相談窓口も設けています。さらに、労働組合でも健康面を含む多岐にわたる相談を受け付けており、従業員が必要に応じて選択できる多様な相談機会を確保しています。このように、当社には健康に関する相談を行える窓口が複数あり、それぞれのニーズに応じたサポートが可能な体制を構築しています。
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<健康測定会の掲示>< /p>
(同社提供)
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<健康測定会の様子>< /p>
(同社提供)
<相談窓口に関するポスター>
左は掲示用、右は手渡し用
(同社提供)
POINT
健康相談窓口の周知にあたっては、一方的な情報提供だけでなく、こちらからアプローチすることが必要です。また、社内の保健室で相談を受ける際には、安心して相談できるような環境づくりに努めています。
心疾患に罹患した従業員への支援
- 2022年頃から、心疾患により補助人工心臓を装着している従業員の支援を行いました。職場復帰にあたっては、約1年をかけて準備を進めました。まず、保健師と人事担当者が従業員の通院先の病院を訪問し、主治医や臨床工学技士と就業上の措置・配慮について協議しました。また、臨床工学技士を会社に招き、関係者(人事部、同じ部署で勤務する従業員、保安部門)に対して補助人工心臓に関する講義を実施しました。
- 職場復帰前から現在に至るまで、定期的に産業医面談を実施し、従業員の状況に応じた就業上の措置・配慮について意見を得ています。従業員にとっても、医学的専門性を持つ医師と継続的に面談できることは、安心して働くことにつながっています。
- 就業場所は、保健師が常駐する保健室と同じフロアとしています。また、産業医は同じ建物内でクリニックを開業しているため、緊急時にも迅速に対応できる体制を整えています。
- 体調不良や補助人工心臓の異常アラーム作動の可能性があることから、部署の責任者に注意事項と就業上の配慮点を説明し、責任者から同僚へ共有してもらいました。また、万が一に備え、隣接フロアの従業員にも情報を伝え、緊急時の対応手順をフローチャートとして整備しました。
- 現在、心疾患を抱える従業員は治療と仕事を両立しながら、自分に合ったペースで、生き生きと仕事に取り組んでいます。今後、ドナーが見つかり心臓移植のため入院する場合には、再度職場復帰支援が必要となります。その際には、今回の支援の経験を活かし、より円滑な職場復帰につながるよう取り組んでいきます。
POINT
最初は、重い病気であるため、どう対応したらよいか分からなかったのですが、産業医だけではなく、主治医・労働局など関係各所に相談に行くことで、病気に対する理解を深めることができました。
まずはこの一歩から!
- 相談窓口を利用してもらうためには、相談が来るのを待っているのではなく、従業員の働いている場所に定期的に足を運び、相談したいと思えるような関係性づくりが重要です。
POINT
働いている場所に足を運ぶことで、実際にどのように従業員が働いているのかが見え、相談対応も充実したものになると思います。
これから取り組む企業の皆さんへ
- 企業にとって、従業員は何よりも大切な存在です。会社が持続的に成長し、良いサービスや価値を提供し続けるためには、従業員一人ひとりが安心して働き、自分らしく活躍できる環境づくりが欠かせないと考えています。治療と仕事の両立はもちろんのこと、育児や介護など、さまざまなライフステージにおける両立支援を当たり前に実現するには時間がかかる部分もあります。しかし、小さなことからでも一歩ずつ取り組みを積み重ねていくことで、確実に良い環境を作ることができます。
- 私たち人事担当者と産業保健スタッフは、これからも従業員の皆さんに寄り添いながら、安心して働ける職場づくりを支えていきたいと考えています。
(人事課長:中下さん・保健師:永吉さん)
治療しながら働く皆さんへ
- 手術を担当していただいた主治医は、「手術して終わり」ではなく、「職場復帰につなげるための治療」という考えをお持ちで、病院内に職場復帰支援のためのチームを組んでサポートしてくださいました。会社にも約1年間にわたり相談を重ね、手厚い支援を受けることができたため、大きな不安を抱えることなく職場復帰することができました。
- 現在も、周囲の方が「無理しないでね」「休憩してね」と声をかけてくださり、安心して働くことができています。病気になると不安になることも多いと思いますが、支えてくれる人は必ずいます。周りの人を信頼し、ぜひ相談してみてください。
(保田さん)
その他の取組等
休暇制度、勤務制度
従業員の希望や状態を踏まえて柔軟に設定できる社内制度(療養休職・療養短縮勤務)を導入。産業医の意見を参考にし、従業員と相談しながら最終的に労働時間を決定
- 療養休職は、年次有給休暇を使い切った後、さらに長期間の休養が必要な場合に利用できる制度で、最大1年間取得することができます。正規・非正規を問わず全従業員が利用可能です。休職期間中は、月に1回、保健師と面談を実施し、必要に応じて人事制度に関する説明の際には人事担当者が同席することがあります。
- 療養短縮勤務は、フルタイムでの職場復帰が難しい場合に、短い労働時間から段階的に勤務を再開することを想定して設けた制度です。前述の心疾患を抱える従業員の場合、最初は1日4時間勤務からスタートし、現在は4時間30分勤務へと延長しています。主治医から「フルタイム勤務が可能」との診断が出ていても、従業員の実際の体力や通勤状況は個々に異なるため、従業員と相談しながら労働時間を細かく設定しています。この際には、産業医の意見もあわせて参考にしています。
関係者間の情報共有
職場復帰支援プログラムを治療と仕事の両立支援に活用し、社内の情報共有について提示。職場復帰後においては、周囲の理解も重要。
- メンタルヘルス不調の対応で作成した職場復帰支援プログラムを治療と仕事の両立支援にも活用しています。職場復帰支援プログラムの対象は、休職をしたすべての従業員です。フローチャートに沿って、社内関係者が連携しながら対応を進めています。現在は3名程度が職場復帰支援プログラムを活用しています。
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<職場復帰支援プログラム・フローチャート>
(同社提供)
取組の効果、課題の克服方法、今後の展望
地道な取組によって相談しやすい風土が醸成。支援が必要な従業員を把握し、支援につなげることができており、何があっても働き続けられる職場づくりを実現
- 2005年頃から地道に取組を続けてきたこともあり、現在では月に15名ほどの従業員が健康相談窓口を利用しており、従業員の間に相談窓口が浸透していると実感しています。従業員が自ら積極的に利用するというよりも、体調不良時に上司や同僚など周囲の方から「保健室で相談してみたらどうか」と勧められて来室するケースが多く、困ったときに相談しやすい窓口として機能していると感じています。
- 支援が必要な従業員を自然に受け入れる職場風土があること、さらに職場復帰支援プログラムが定着していることから、何があっても働き続けられる職場づくりが着実に進んでいると自負しています。
- 当社の相談窓口は、治療と仕事の両立支援に限らず、「困ったときに相談できる窓口」として周知しています。相談方法は電話・メール・保健室での対面相談など、どのような手段でも受け付けています。健康相談窓口を担当している保健師は助産師として働いてきた経験もあることから、治療と仕事の両立支援に加え、今後は妊娠中や育休復帰した女性従業員が安心して働くことができるようにサポートしていきたいと考えています。
(令和8年3月時点)
健康相談窓口では最初に保健師が相談に応じるようにしています。内容によっては、人事担当者が一緒に対応することもあります。