近江鉄道株式会社
健康管理室が従業員の健康に関わる業務を遂行。主治医や産業医の助言を踏まえて治療と仕事の両立が必要な従業員の復職プランや支援方法を個別に検討
企業概要
| 所在地 | 滋賀県彦根市駅東町15番1 |
|---|---|
| 業種 | 運輸業・郵便業 |
| 設立 | 1896年6月16日 |
| 従業員数 | 826名(2025年12月31日現在) |
| 平均年齢 | 49歳 / 男女比 男性7:女性3 |
| 産業保健スタッフ | 7名(産業医(嘱託)5名・看護師2名) |
| 事業内容 | 旅客運送業、鉄道・バスを中心とした公共交通事業、不動産事業、観光レジャー業 |
取組の概要
健康管理室を中心に人事部・事業部・労働組合と連携し、産業医面談や主治医情報を基に従業員・お客さまの安全を最優先に復帰計画を策定。柔軟なシフトで、治療と運転業務等との両立につなげる
取り組んだ背景、経緯
- 当社は鉄道やバスを中心とした公共交通事業等を手掛けています。安全・安心な公共交通事業の継続のためにも、治療と仕事の両立支援という言葉が広がる以前から、産業医や主治医の意見を参考にして、病気になった従業員の状況に応じた支援を行ってきました。
- 従業員への安全配慮義務の先にはお客さまの安全があります。それにより、鉄道やバスの乗務員が治療による休業から復帰する場合、本人が復帰したいと申し出ても、本人の判断だけで認めることはできません。主治医や産業医の意見を参考にして慎重に検討する必要があります。また、復帰後は運転技術を確認する研修や本人との面談を通じて、運転業務に復帰するまで支援を行っています。
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同社提供
取組・推進体制、労使での話し合いの機会
- 健康管理室を設置し、室長と2名の看護師(両立支援コーディネーター)の3名体制で、近江鉄道グループ全従業員の健康管理や健康増進に係る業務を行っています。治療と仕事の両立や健康に関する相談の多くは、健康管理室に寄せられます。
- 労働組合が設置されており、毎月1回労使で会議を開催しています。職場の上司に相談しづらい事情がある場合、労働組合も相談窓口として機能しています。相談を受けた後、労働組合が、従業員に職場環境や働き方等についてヒアリングを行い、人事部に情報提供することもあります。
POINT
関係者の情報共有
- 病気に罹患しても休みが数日でよい場合は職場の上司に直接相談する従業員が多いですが、1か月以上の長期休業が必要になる従業員の場合は、人事部や健康管理室が休業中のフォローや復職の支援を行っています。
- 休業中の従業員が産業医と面談する際は、健康管理室の看護師(両立支援コーディネーター)が同席し、産業医意見書を受領します。面談には、必要に応じて、所属長が同席することもあります。産業医と看護師が連携して、従業員本人や職場の上司とコミュニケーションを取り、復職のタイミングや復職後の業務内容・働き方について検討します。産業医意見書は、本人に了承を得た上で面談終了後に所属長および事業部長へ展開し、就業上の配慮事項や必要な業務調整を関係者全員が事前に把握できるようにしています。産業医意見書には、復職後に留意すべき健康面・勤務形態のポイントに加え、次回フォローアップ面談の目安時期や確認すべき項目も盛り込み、計画的にフォローを継続できるフォーマットとしています。
- また、メンタルヘルス疾患に関しては、寛解かどうか分かりにくく所属長もどのように支援すれば良いか迷うことがあるため、長期休業が必要になった場合の復職までのステップや支援方法を記載した当社独自の復職支援マニュアルを作成しています。復職支援マニュアルでは、休業中の従業員との関わり方など、復職にあたっての具体的な支援方法を掲載しています。当社では健康経営を推進しており、この復職支援マニュアルは、当社の健康経営の取組の一環として社内への周知を図っています。
- 復職時の産業医面談の際も健康管理室の看護師(両立支援コーディネーター)が同席します。復職にあたっては、従業員本人だけでなく会社側にも不安があるため、産業医面談にて本人の治療状況や希望する働き方等を聴取するステップがあることで、双方が安心できると思います。復職の判断にあたって、治療状況等の情報が不足している場合は、主治医に意見を求めることもあります。
POINT
復職のための面談では従業員から感謝の言葉をいただくことも多いです。産業医面談時には看護師が同席して従業員とコミュニケーションを図り信頼関係を築いたうえで、本人の希望を丁寧に聞き取ることができるように意識しています。
がんに罹患したバスの乗務員への支援
- がんと診断された従業員は、経験豊富なバスの乗務員でした。治療のために休業に入る前に両立支援ができることについて説明すると、復帰後もバスの乗務員として働き続けたいと希望されました。
- 休業中の体調は安定していましたが、これまで通りバスの乗務員として働き続けることができるのか、主治医に意見を求めました。主治医からは「復職して問題ない」との回答がありましたが、会社としては安全面を考慮して慎重に判断する必要があると考え、本人を通して主治医に複数回意見書の提出を依頼したりしました。
- さらに、治療と両立して働くことができるように配慮した柔軟なシフトに業務を見直したことで、本人の希望通り、バス乗務員として復帰することができました。
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同社提供
POINT
治療を必要とする従業員の症状や希望は個別の事情によって異なります。従業員の希望や主治医の意見を参考にしながら、慎重に判断して復職プランを検討していきました。必ずしも従業員の希望通りの支援ができるとは限りませんが、何度も対話を重ねて丁寧な支援を行うことを心掛けました。
まずはこの一歩から!
- 治療と仕事の両立支援に関する窓口・担当者を設定できると良いでしょう。治療と仕事の両立を希望する従業員が、勤務先の誰に相談すれば良いか分からない状況は、とても不安だと思います。
POINT
当社では健康に関する業務を幅広く行う健康管理室があることで、従業員だけでなく、所属長や人事部門からも健康に関することは健康管理室に相談・報告しておくと良いという風土があります。
これから取り組む企業の皆さんへ
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(人事課・山田 史さん)
- まずはできることから始めると良いと思います。マインドとして、「無理・絶対できない」など、否定から入らずに、「何ができるか?」という視点を持つことが重要です。病気に罹患した従業員の気持ちを受け止め、初めから無理と決めつけずに従業員に寄り添った支援を行うことが理想でしょう。一方で、無理をして働くと従業員の健康やお客さまの安全に影響が出る可能性もあります。主治医の意見を踏まえ、企業が判断することも大切です。たとえ、従業員の希望に沿った仕事や働き方ができない場合でも、従業員のためにできる支援がないか、全力を尽くして考える過程が重要となります。従業員本人としっかり話し合って決めることができれば、結論は同じでも従業員の受け止め方が変わるのではないでしょうか。
その他の取組等
社外支援の活用
産業保健総合支援センターの電話相談を活用。両立支援で活用できる様式や基本的な考え方について助言いただく
- 困った時は、滋賀県産業保健総合支援センターの電話相談を利用しています。治療と仕事の両立支援のために活用可能な主治医意見書等の様式などについて助言してもらいました。過去には、当社から依頼し、人事部門に対して「治療と仕事の両立支援とは?」というテーマで両立支援の基本的な考え方を説明してもらったこともあります。産業保健総合支援センターが開催している研修にも定期的に参加し、最新の情報を収集するように努めています。
取組の効果、課題の克服方法、今後の展望
従業員の心情に寄り添い、復職に向けたステップや支援方法を明確にすることで安心感を醸成。従業員の意向を踏まえつつ主治医や産業医の助言、公共交通機関としてのお客さまの安全等を踏まえた支援を継続していく
- 従業員が治療による休業から復職する際は、とても不安な気持ちにあると思います。そのような心情に寄り添い、復職に向けたステップや支援方法を明確に示していることは、従業員の安心につながっていると感じます。
- また、バスや鉄道の乗務員のように専門性の高い業務に従事している従業員が長期の休業を取得することになった場合、人員の確保・調整に苦慮することがあります。特に、所属長が休業することになると代替要員の確保はさらに難しくなります。しかしながら、職場の従業員で日々の業務に対応しつつ、各事業部の本社部門から応援要員を得ることで、周囲の従業員が安心して業務に専念できる環境を整えています。
- 運転業務という安全面への配慮などから、復職する際に、従業員の希望通りの仕事を担ってもらうことが難しい場合があります。本人のスキルや経験を踏まえて新たな業務を決定しますが、復職直後はストレスを抱えやすくなります。このような場合には、健康管理室のメンバーが定期的にコミュニケーションを図り、相談対応を行っています。
- 一方で、従業員の希望通りに復職できたとしても、無理をして働いてしまい、体調が悪化してしまうことがあるかもしれません。従業員の意向を丁寧に確認しながら、主治医や産業医の助言や公共交通機関としてのお客さまの安全等を踏まえた支援を、引き続き実践していきたいと思います。
(令和8年3月時点)
健康管理室では、治療と仕事の両立に関する相談が寄せられた際に、従業員や所属部署にヒアリングを行ったり、産業医や主治医と情報共有を行うなどして、個別の状況に応じた支援方法を検討しています。