株式会社ノヴィータ
がんに罹患した従業員を支援した際に、対応事項などをテンプレート化。社内外にも発信し、同様のケースがあった際に活かす
企業概要
| 所在地 | 東京都渋谷区初台1-51-1 初台センタービル510 |
|---|---|
| 業種 | 情報通信業 |
| 設立 | 2006年2月3日 |
| 従業員数 | 30名(2025年6月現在) |
| 平均年齢 | 30代半ば / 男女比 男性3:女性7 |
| 産業保健スタッフ | 0名 |
| 事業内容 | Web制作・運用事業 人材支援事業 メディア運営支援事業 事業継続支援事業 地域共創事業 |
取組の概要
従業員ががんに罹患した際に、代表・上司・人事労務担当者が連携し、従業員本人や主治医とコミュニケーションをとりながら様々な支援を実施。対応事項や関連情報は今後同様のケースに役立てられるようテンプレート化
取り組んだ背景、経緯
- どのようなライフイベントがあっても従業員が働き続けられるようにしたいという思いで、多様な働き方を推進しています。短時間正社員制度やフレックスタイム制など、制度をふまえた働き方の選択肢は20種類以上あります。従業員本人の治療だけでなく、子育てや介護等の個々の状況に応じて、働き方を柔軟に調整できるようにしています。
- 育児との両立支援はこれまでにも実施していましたが、2019年に従業員ががんに罹患したことをきっかけに、治療と仕事の両立支援も必要であることに気づき、まずは情報収集をするところから始めました。
POINT
取組・推進体制、労使での話し合いの機会
- 両立支援を申し出た従業員に対しては、代表、上司(役員)、人事労務担当者の3者が連携して対応しています。
- また、新しい社内制度の導入や既存ルールの見直しを行う際には、会社と従業員代表が一緒に検討を進めています。
関係者の情報共有
- 2019年、従業員から体調が思わしくないため検査入院をするとの話を聞きました。従業員には治療に専念してほしいと考え、代表、上司、人事労務担当者が連携して当面必要となる対応や手続についての情報収集を行い、タスク一覧を作成しました。
-
<当時作成したタスク一覧のイメージ>(同社提供)
- 必要な手続きは多岐にわたり、毎回調べるのは大変です。そこで、この時に作成したタスク一覧をもとに、会社が行うこと、従業員(本人)が行うこと、公的機関が行うことの3つに分けて、いつどこに何の連絡をするか、必要な書類がどこにあるかをテンプレート化しました。人と時期を入力するだけで、必要な対応が一覧として表示されるようになっており、今後同じ状況が発生した際に個別の手続きが容易にわかるようにしています。
- また、当時は従業員も気が動転している状態であったため、事実を正しく把握するために主治医から直接話を聞けるよう、従業員に依頼しました。主治医との面談には、「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」の勤務情報提供書を参考に、当社が作成した勤務情報が記載された書類を持参しました。当社は産業医を選任していないため、主治医との連携が重要です。必要に応じて、主治医から意見を聞き、より適切な働き方や配慮を検討しました。
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<医師との面談時に持参した勤務に関する情報提供資料>(同社提供)
- その後、休業を経て職場復帰が見えてきた段階でガイドラインをもとに「両立支援プラン/職場復帰支援プラン」(自社様式)も作成しました。今後の治療予定や業務上の配慮、面談の時期、必要な資料のリンクなども記載しています。
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<両立支援プラン/職場復帰支援プラン>(同社提供)
POINT
こうした対応にあたっては、「次に活かす」ことを重視しました。同様のケースが発生した際に、誰でも手順通りに、スピード感を持って対応できるように、テンプレート化することを意識しました。
がんに罹患した従業員への支援
- 病気と診断された当初は、先のことは何も考えられない様子で、会社に迷惑をかけるため退職したいと言っていました。そこで、代表や上司と面談を重ね、本人には退職せずにまずは治療に集中するよう伝えました。また、従業員が手術や治療に伴う経済的な不安を持っていたため、治療費の貸付と返済計画の策定を行いました。
- その後、長期の治療が必要となり、休業を開始しました。治療が進むに従って気持ちの変化があり、休業中に従業員本人から職場復帰したいという申し出があったため、会社としてサポートできることを代表・上司・人事労務担当者の3者で考えました。そして、従業員の希望を最大限に尊重しながら対応を進めました。休業中は2週間に1回面談を行い、職場復帰の半年前から毎朝メールなどでやり取りをしながら、治療と仕事が両立できる働き方を一緒に探っていきました。
- 職場復帰日には、社内向けにオンラインで職場復帰の挨拶をしてもらいました。挨拶の中では、従業員本人から副作用に関する情報や食事などについて同僚たちに話しており、周囲の理解につながったと思います。
- 職場復帰後には、「同じ病気で苦しんでいる人に『がんになったからって仕事をやめなくてもいい、症状が落ち着けば元気に働ける』ことを伝えたい」との思いで、従業員の方から情報発信することを提案され、会社の公式ブログで自身の治療と仕事の両立の経験をシェアしています。
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<職場復帰当日のプレゼン内容>(同社提供)
POINT
入院・治療が進む中で、従業員の気持ちも変わっていきます。対応を一人で抱えると負担が重たくなることもあるため、代表・上司・人事労務担当者で共有しつつ、連携しながら進めました。
まずはこの一歩から!
- 対応事項などをテンプレート化しておくことで、同様のケースがあった時に、スムーズに従業員をサポートすることができます。支援を行う際には、従業員の希望や状況をしっかりと聞くことが重要です。そのため、普段から面談などを通して関係性を構築しておくことも大切です。
POINT
治療をしながら働く従業員が申し出てから考えるのではなく、いつでも対応できる環境を日頃から作っておくことで、会社としても慌てずに対応できるでしょう。
これから取り組む企業の皆さんへ
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会社が治療と仕事の両立に取り組んでいることを従業員に周知していくことも必要だと思っています。手間を惜しまずに、イントラネットや朝会、ブログなどで発信するだけでなく、面談などの中で折に触れて従業員に伝えていくことも重要です。
(代表取締役:三好さん)
その他の取組等
相談窓口、社内における両立支援体制の整備
相談はイントラネットから受付。相談内容によって対応者を柔軟に調整している
- 人事労務担当者が相談窓口の担当者であることを周知しています。
- 以前は担当者が直接相談を受け付けていましたが、属人的に対応するのではなく複数名で対応できるようにすることが必要と考えました。そこで、現在は、イントラネットに相談窓口のフォームを作成し、それを通じて相談を受け付けています。この相談窓口のフォームは、特定の担当者(人事労務担当者、経営陣)のみが閲覧可能であり、その旨を従業員に周知しています。また、女性特有の疾患については、男性上司に相談しづらい場合もあるため、相談内容によっては、代表(女性)が同席のうえ話を聞くなど工夫しています。
- その他、社員とは月1回、パート社員とは3か月に1回の個別面談を実施し、直属の上司などに気軽に困っていることなどを話してもらえる体制も日頃から整えています。
休暇制度、勤務制度
2019年に従業員ががんに罹患したことをきっかけに病気治療休暇を導入。20種類の働き方の組み合わせも活用し、その時々の状況に応じて働き方を調整
- 2019年に従業員ががんに罹患したことをきっかけに病気治療休暇を導入しました。がんの治療には、退院後も頻回に通院が必要になると聞き、休暇制度として整えた方がよいと考えました。
- がんに罹患した従業員が職場復帰をした際には、薬の影響が午前中に出やすいとのことであったため、通勤ラッシュを避けられるように始業時間を調整しました。また、職場復帰後も3か月ごとにその時々の状況に応じて働き方を見直していました。
- 病気治療休暇は、年次有給休暇とは別に年5日休暇を取得できる社内制度です。検査や通院が丸1日かかる場合には、病気治療休暇が利用できます。基本的には三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)に罹患した際に利用できるものですが、その他会社が認める場合も、柔軟に対応しています。また、通院時間が短時間であれば、フレックスタイム制を利用したり、年次有給休暇を半日取得したりすることも可能です。
- その他、短時間正社員制度やフレックスタイム制、リモートワークなど、20種類以上の働き方を選択することができます。
取組の効果、課題の克服方法、今後の展望
従業員の状況に応じて、必要な制度・対応を柔軟に検討
- 取組にあたっては、代表・上司・人事労務担当者が密に連携し、本人の希望や意欲を支えるという方針を共有、情報を集約し可視化しながら進められたことが、成功のポイントだったと思います。
- 従業員にはまず治療に専念してもらい、少しずつ「今後こうしたい」という希望が出てきたら、それをどのように実現できるかを一緒に考えました。治療と仕事の両立支援の当初は手探りの状態でしたが、うまくいかなくても、次に同様のケースが発生したときによりうまく対応できるようになればよいという思いで取り組みました。対応事項などをテンプレート化することと、従業員の希望を踏まえて柔軟な対応をすることの両方を引き続き意識していきたいと考えています。
- 従業員が働き続けることができるよう、社内制度が無ければ作り、合っていなければ変えるという柔軟なスタンスで取り組んできました。今後も、いつ誰に治療と仕事の両立支援が必要になっても対応できるよう、社内制度の見直しや導入も段階的に進めていきたいと考えています。
(令和8年3月時点)
個別の状況に応じて柔軟に働き方を調整してきた経験があったことで、がんに罹患した従業員が両立支援を申し出た際も、勤務時間の調整や体調に応じた業務内容の配慮などのサポートをすることができました。