社会福祉法人佳祐会 特別養護老人ホーム瑞祥苑

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復職支援プログラムを作成し、長期休職者の職場復帰の手順を明確化。顧問社労士や外部機関の助言をもとに、病気や後遺症があっても働きやすい職場環境の整備にも取り組んだ結果、病気やケガを理由に退職する従業員が大幅に減少

企業概要

所在地 奈良県大和郡山市矢田町4739-4
業種 医療、福祉
設立 1990年10月
従業員数 70名(2025年4月1日現在)
平均年齢 43~44歳 / 男女比 男性4:女性6
産業保健スタッフ 2名(産業医(嘱託)、衛生管理者)
事業内容 介護サービスの提供/サービスなどに関する相談/要介護認定などの申請お手伝い/施設入所支援/地域包括支援センター地域相談窓口

取組の概要

復職支援プログラムを策定し、病気やケガで長期休職をした従業員や、治療や後遺症の影響で働き方を見直す必要のある従業員の支援が円滑に実施できるようになった

取り組んだ背景、経緯

  • 2014年、介護職の従業員が脳出血により、高次脳機能障害を発症しました。この従業員から職場復帰の申出があったことをきっかけに、本格的な取組がスタートしました。この従業員への両立支援を進めるにあたり、当施設の取組も充実させるために一緒に考えてほしいと従業員に協力を依頼したところ、喜んで引き受けてくれました。
  • 検討にあたっては、厚生労働省がホームページ上で公開している治療と仕事の両立支援の流れや先駆的な取組事例、他企業が公開している様式、当施設の顧問社会保険労務士(以下、「顧問社労士」という。)の助言などを参考にしました。
  • 特に力を入れて取り組んだのは、独自の復職支援プログラムの策定です。この復職支援プログラムは、病気やケガを理由に休職し、職場復帰後も治療や後遺症などの影響で、休職前の業務内容や勤務形態では就業継続が難しい従業員を支援するためのマニュアルです。対象者だけでなく、衛生管理者や相談窓口担当者をはじめとする全従業員に対し、当施設の職場復帰支援のルールを示しています。協力してくれた従業員の意見も参考としながら、当施設に馴染むものとなるよう検討を重ねました。

取組・推進体制、労使での話し合いの機会

  • 治療と仕事の両立支援の取組は、施設内の衛生管理者1名、衛生委員1名に加え、顧問社労士1名が中心となって推進しています。取組のスタートとして、衛生管理者と衛生委員(ともに事務職)が中心となり、「休職者及び復職支援プログラム採用者に関する取り決め(内規)」(以下、「内規」という。)を策定しました。まず原案を作成した後、顧問社労士の助言を踏まえて修正し、完成させました。
  • 顧問社労士は、両立支援コーディネーター、キャリアコンサルタント、産業カウンセラーなどの複数の資格を取得しており、月2回、従業員の面談を実施しています。また、両立支援に関する制度の導入や取組の推進にあたり、他法人への支援の経験なども交えた助言をもらっています。
  • <休職者及び復職支援プログラム採用者に関する取り決め(内規)、復職者支援プログラムを実施する際の留意事項について>
    (出所)社会福祉法人佳祐会 特別養護老人ホーム瑞祥苑

POINT

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仕事と治療の両立支援に関する制度導入や取組推進にあたり、顧問社労士の存在は大きいものでした。特に、他法人の事例を参考にできたことや、従業員のキャリアに目を向けた支援を受けられたことを、ありがたく感じています。

関係者の情報共有

  • 職場復帰支援のステップは、従業員の休職開始時に始まります。施設長、部門長、相談窓口担当者である衛生管理者・衛生委員から、休職中の事務手続きや、職場復帰の手順に関する説明を行います(第1ステップ)。
  • 職場復帰支援の際には、支援の対象となる従業員から復帰支援願を提出してもらうとともに、診療情報を主治医から当施設に共有してもらうことへの同意をとった上で、主治医に「職場復帰支援に関する診療情報提供依頼書」(当施設名称)を送付します。「職場復帰支援に関する診療情報提供依頼書」には、主治医が参考にできるよう、当施設の中で、心身に負担がかかりやすい業務・働き方に関する情報を記載しています。そして、主治医から当施設に、「復職に関する主治医意見書」を提出してもらいます。(第2ステップ)。
  • 次に、施設長等と従業員との面談や、主治医や産業医の意見の聴取を経て、職場復帰支援プランを作成します。まずは通勤の練習から入るのか、どの程度の時間であれば働けるのかなどについて、個別の状況に合わせて計画します(第3ステップ)。
  • 職場復帰時には、職場復帰支援プランを従業員の上司と確認し、一緒に働く上で他の従業員が配慮すべき点を周知しつつ、職場復帰支援プランの内容と従業員の健康状態の把握のため、当施設の関係者と従業員の間で面談を実施します(第4ステップ)。
  • 職場復帰後は、従業員自身が順調だと感じられているか、休職前と比較して何%程度働けていると感じているかなどを聞き取った上で、職場の上司が復職支援プログラムの進捗を評価します。さらに、施設長が従業員と面談をして、問題があると判断すれば計画を見直します(第5ステップ)。
  • <職場復帰支援のステップ>
    (出所)内規およびインタビュー内容を踏まえて作成

POINT

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職場復帰の際には、従業員とも綿密なコミュニケーションをとり、主治医や産業医の意見を踏まえて対応を検討します。職場復帰後も必要に応じて、職場復帰支援プランを見直します。

脳出血を発症し、高次脳機能障害が残った従業員への支援

  • 介護職の従業員が脳出血を発症後、高次脳機能障害となり、介護職で求められる臨機応変な対応や瞬時の判断が難しくなりました。それでも、従業員が職場復帰を励みにして、リハビリに取り組んでいたことから、「これだけ職場復帰したいと思ってくれているのだから、働き続けてもらいたい」という思いで、従業員本人が対応可能な洗濯・清掃といった作業がある職場へ配置転換を行い、職場復帰を支援しました。
  • 後遺症の影響に対応できるよう、職場環境も改善しました。高次脳機能障害は、短い間に起きたことを記憶する能力(短期記憶)が低下したり、図や色の認識が難しくなったりする症状があります。そのため、奈良県障害者総合支援センターに設置されている高次脳機能障害センターや従業員が通っていたリハビリテーションセンターなどから、業務上の工夫や職場環境についての助言を受けました。例えば、従業員がその日に担当する業務の一覧を作成して掲示して、従業員が業務の進捗を一つずつ確認できるように工夫しました。また、業務に使用する用具を、識別しやすい色に変更しました。
  • (同施設提供)

POINT

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外部機関から、障害の特性や職場でできる工夫に関する助言をもらえたことがとてもありがたかったです。職場復帰をモチベーションとしてリハビリを頑張る従業員に応えようと、配置転換や働きやすい職場環境の工夫に努めることができました。

まずはこの一歩から!

  • 衛生管理者や衛生委員が、顧問社労士の助言を受けながら内規を策定したことで、病気やケガで休職する従業員を施設全体で支援する体制の整備につながりました。

POINT

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職場復帰支援のステップを明文化したことで、関係者の役割も明確になりました。内規には、フォローアップの記載があることから、状況に応じて、職場復帰支援プランを見直しています。

これから取り組む企業の皆さんへ

  • 当施設も、初めて治療と仕事の両立支援に取り組むときには右も左もわからず、失敗も数多く経験しましたが、できる範囲で試みることが成功につながることを実感しました。職場には、従業員が安心して働くことができる環境を整えることが求められていると思います。

(施設長:釜谷 佳男さん)

その他の取組など

治療と仕事の両立支援に関する基本的な考え方・方針、提示方法

病気やケガにより働き方が変わるのはお互い様であるという組織風土を醸成。また、全従業員に復職支援プログラムの周知を徹底

  • 支援の対象者がいる場合に、他の従業員が協力できる体制を整えておくことが大切であるというメッセージを内規に記載しています。また、病気やケガをして働き方が変化してもそれはお互い様であるという組織風土を醸成してきました。
  • 内規の策定当初には、全従業員を対象に説明会を行い、その内容を周知しました。現在も、新規に採用した従業員に対して、入職時に内容を説明しています。

研修などによる意識啓発

病気や障害のある従業員と一緒に働くことへの理解を促進するため、ハローワークに依頼し、従業員向けの勉強会を実施

  • 2014年に、大和郡山市のハローワークに依頼して、障害者雇用に関する従業員向けの勉強会を行いました。同時に、治療と仕事の両立についても取り上げ、病気や障害のある従業員と一緒に働くことへの理解を促しました
  • (同施設提供)

相談窓口

施設内外に相談窓口を設置。担当者を複数名置くことで、話しやすい相手を選んで相談できる環境を整備

  • 施設内の相談窓口を、衛生管理者1名と衛生委員1名の計2名が担当していることで、従業員は、それぞれ話しやすい担当者に相談することができます。そのため、複数名体制とすることも大切だと考えています。
  • 施設外の相談窓口は、顧問社労士が担当しています。面談日を月に2回設定しており、面談を希望する従業員がいた場合に対応してもらっています。面談は希望制ですが、一度は顧問社労士と面談してほしいと全従業員に伝えています。

取組の効果、課題の克服方法、今後の展望

復職支援プログラムの周知を徹底したことで、病気やケガを理由とした退職者が減少。労使間のコミュニケーションの充実や、復職支援プログラムの見直しにも注力

  • 治療と仕事の両立支援の取組の結果、病気になったりケガをしたりした従業員が退職することが大幅に減りました。治療と仕事の両立を支援する仕組みについて周知が徹底されていることで、必要があれば支援してもらえると知ってもらえていると感じています。
  • 従業員が少ないという強みを生かし、労使間のコミュニケーションの充実や、復職支援プログラムの利用推進・見直しを柔軟に行うことができています。
  • 課題としては、施設内に衛生委員のなり手が不足していることです。相談窓口を担当する衛生委員は、病気やケガに悩む従業員にとって、大切や役割を持ちます。一方で、慎重に対応する必要があり、負担を感じやすい役割でもあることから、負担感を軽減する方法を探っています。
  • (同施設提供)

(令和8年1月時点)