興國車輌株式会社
がんに罹患した従業員への両立支援をきっかけに、社内の健康意識や助け合いの意識が高まる
企業概要
| 所在地 | 大阪府吹田市南正雀1-21-17 |
|---|---|
| 業種 | 製造業 |
| 設立 | 1950年6月21日 |
| 従業員数 | 49名(2025年6月16日現在) |
| 平均年齢 | 48歳 / 男女比 男性48:女性1 |
| 産業保健スタッフ | 2名(産業医(嘱託)1名、保健師1名) |
| 事業内容 | 輸送用機械器具の製造(電車の修理ならびに塗装) |
取組の概要
がんに罹患した従業員の支援を通じて、カバーし合える体制の構築や風土を醸成
取り組んだ背景、経緯
- 当社は電車の修理やメンテナンスを行っています。これらの仕事は専門性が高く、技術を身に付けて1人でできるようになるには数年の経験が必要です。代替要員の確保が難しい専門技術を持った集団であることから、業務が属人化している傾向がありました。生産年齢人口が減少し、高齢の就業者が増えている中で、業界としてますます人が足りなくなるという危機感も持っていました。
- そのため、以前から定年延長など従業員が長く働き続けることができる環境の整備に取り組んでいました。加えて、保健師との月1回の面談や健康宣言などを行い、従業員の健康を支援しています。
- そのような中で、従業員の一人ががんに罹患しました。技術も高く、管理職を任せるなど頼りにしていた従業員が、治療と仕事の両立に配慮した就業調整が必要となったことをきっかけに、本格的に治療と仕事の両立支援の取組を開始しました。
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同社提供
がんに罹患した従業員への支援
- 当時管理職を務めていた従業員から社長に対し、がんに罹患したと報告がありました。その際、引き続き会社で働きたいが当面は治療に専念したいため、管理職の役職を外してほしいと相談がありました。その後、保健師との面談を設定し、改めて本人の意向と治療計画を確認しました。会社としては、まずは治療に専念してもらうことを伝え、本人の意向を尊重して役職を外し、治療期間中は年次有給休暇(半日単位等)を活用しながら通院と就労を両立しました。
取組・推進体制
- 保健師と委託契約を結び、定期的に訪問してもらっています。保健師は、専門知識やこれまでの経験を踏まえて、治療と仕事の両立支援が必要になった従業員のフォローを行っています。また、従業員との個別面談や研修なども実施しています。
- 治療と仕事の両立支援が必要になった際には、当時は保健師と連携しながら支援を行い、現在は組織拡大に伴い産業医とも連携体制を構築しています。従業員の状況に応じて、個別に支援しています。
- がんに罹患した従業員から治療と仕事の両立支援の申し出があった際に、よりカバー体制がとりやすくなるよう、まず職場内で体制を見直し、必要に応じて労働組合にも説明・情報共有を行いました。
組織体制の見直し(休暇制度、勤務制度)
- 前述のがんに罹患した従業員が治療等で不在が生じうる場合を想定して後任の管理職を任命し、その管理職をサポートするサブリーダーの役割を新たに設け、グループを分割するなどの組織体制の見直しを行いました。協力会社からも従業員の出向も受入れ、現場の体制を整えました。
- 社長から全従業員に対して、組織体制を見直した背景や、会社として治療と仕事の両立支援に取組むという方針を説明しました。取組を進める上では、1人の従業員が複数の業務を遂行できるようにする多能工化の取組を進め、お互いに助け合いカバーし合える体制を整えることが重要である点を強調しました。
- 結果として対象の従業員は、休業せずに治療期間中も就労を継続し、半日単位の年次有給休暇などを活用して通院しながら、治療と仕事の両立を行っています。また、これまでの業務経験や専門知識を活かして後進育成にも取り組んでくれています。
- この支援の取組がきっかけになり、周囲の従業員の健康に対する意識が高まりました。さらにお互いにカバーし合える体制を構築することの重要性がより認識されるようになりました。
POINT
まずはこの一歩から!
- 日頃から従業員同士のコミュニケーションを活発にし、お互いにカバーし合える組織づくりをしておくことが重要です。当社の場合は、従業員ががんに罹患したことをきっかけに様々な取組を本格化した結果、お互いにカバーし合うことの重要性が理解され、会社の雰囲気も良くなったと感じています。
POINT
中小企業だからこそ、社長のメッセージは浸透しやすいと思います。がんなどの病気はいつ誰がなるか分かりません。日頃から誰がいつ休むことになってもカバーし合える体制や雰囲気があることが重要ではないでしょうか。
これから取り組む企業の皆さんへ
- 従業員の声を聞こうとしても、従業員から社長に伝えづらいこともあるかもしれません。当社では、保健師が定期にフォローしてくれています。従業員にとっても、気軽に相談できる専門職が身近にいることは安心材料になるのではないでしょうか。
- 中小企業では、いきなり保健師に依頼するのは難しくても、産業保健総合支援センターにおいて、産業保健や両立支援に関する相談を受け付けており、必要に応じて活用することができます。
(代表取締役社長:禿 裕隆さん)
その他の取組等
研修等による意識啓発
保健師が安全衛生委員会の中で研修を実施。がんに関する知識の取得や健康意識の啓発に寄与
- 毎月1回社内で開催している安全衛生委員会に、保健師が定期的に参加しています。保健師が安全衛生委員会に参加した際は、毎回異なるテーマを設定して衛生講話という研修を実施してもらっています。
- がんに関するテーマの衛生講話では、「がんは怖くない、治る時代である」、「がん検診を受けることで早期に発見することが重要」などの情報提供をしてもらいました。がんについて誤解している従業員もいたため、従業員が正しい知識をアップデートする機会にもなっています。
- 安全衛生委員会に参加できない従業員には、議事録を公開し、情報共有を図っています。また、保健師が安全衛生に関する健康だよりを作成し配付や掲示をする事によって、知識の習得や意識の啓発につなげています。
取組の効果、課題の克服方法、今後の展望
治療と仕事の両立支援がきっかけになり、従業員の健康意識やお互いにカバーし合える風土が醸成された。今後も従業員が長く働き続けられるように職場環境を整えていく
- がんに罹患した従業員の立場に立って両立支援に取り組んできたことで、他の従業員への理解が得られました。これをきっかけに、従業員の健康に対する意識が高まり、健康診断の早期受診や健康に関する相談も増えました。さらに、従業員同士のコミュニケーションが活発になり、お互いに助け合いカバーし合える風土が醸成され、会社の雰囲気は格段に良くなりました。
- 中小企業だからこそ、社長の考えがすぐに浸透し、新たな取組にスピード感を持って取り組むことができると感じています。
- こうしたお互いを助け合う風土をさらに高めていくために、社内表彰を検討しています。縦割りの組織ではなく、水平の関係性を強化し、隣の部署の技術を身に付ける、困っている人を助ける、忙しい人をフォローする、新たな知識や技術を身に付ける、などの取組を上司・部下・同僚など複数の視点で評価して年に1度MVP賞として表彰したいと考えています。
- 従業員に長く働き続けてもらうためには、心身ともに健康であることが重要です。治療との両立が必要な従業員に対して、会社としてできる限りの支援を行い、長く働き続けてほしいと考えています。
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同社提供
(令和8年3月時点)
がんに罹患した従業員が治療に専念できるよう会社全体で取り組んだことで、結果として従業員同士のコミュニケーションが円滑になり、会社の雰囲気もよくなったと感じています。