株式会社アプロヴァーレ
がんに罹患した従業員への支援をきっかけに、治療と仕事の両立支援に関する就業規則を整備。管理職による衛生管理ミーティングで従業員の職場復帰プランを個別に検討
企業概要
| 所在地 | 大阪府大阪市東成区深江北2-1-3 |
|---|---|
| 業種 | 医療、福祉 |
| 設立 | 2018年8月27日 |
| 従業員数 | 110名(2025年9月12日現在) |
| 平均年齢 | 47.8歳 / 男女比 男性2:女性8 |
| 産業保健スタッフ | 0名 |
| 事業内容 | 有料老人ホームの運営、訪問看護事業、訪問介護事業、コンサルティング業 |
取組の概要
休業期間や職場復帰後の支援方法などについて、就業規則に明記。管理職による衛生管理ミーティングでは、従業員の職場復帰プランを個別に検討し、復職支援を行う
取り組んだ背景、経緯
- 設立当初より働いている従業員ががんに罹患して休業したことにより、治療と仕事の両立支援に取り組む必要性を感じたことがきっかけです。
- 従業員からがんに罹患したと報告を受けた当時は、就業規則に治療と仕事の両立に関する規程を設けておらず、会社として対応する際の方針や基準等がありませんでしたが、その従業員には休業して治療に専念してもらうことができました。
- それまでは従業員から相談があればその都度検討して対応していましたが、このケースをきっかけに、今後も治療により措置が必要になる従業員から申出があったときにスムーズに支援できるように、休業期間や職場復帰後の支援方法などについて、就業規則に明記しておく必要があると考えました。
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同社が運営する住宅型有料老人ホーム こもれびの里茨木(同社提供)
取組・推進体制、労使での話し合いの機会
- 会社としての対応方針や就業規則の整備については、社長と人事労務担当者が中心となって定めています。実際の運用においては、基本的に、両立支援が必要な従業員の上司が相談対応を行い、必要に応じて、社長や人事労務担当者と連携しています。
- 具体的には、従業員は、上司に両立支援の申出を行います。申出を受けた上司は、治療方針や働き方、業務内容に関する本人や家族の希望などについて、本人に確認します。それらを踏まえ、治療にあたって1か月以上の休業を要する場合は、職場復帰に向けてどのように対応するかについて、本人と相談します。
- 休業期間中は月に1回、上司が本人と連絡を取ってフォローし、治療状況や体調の確認とともに、今後の見込みなども踏まえ、職場復帰の予定について話をしています。
- また、管理職が集まる月1回の会議の中では、休業・職場復帰した従業員の支援などについて話し合う衛生管理ミーティングも合わせて開催しており、復職支援を行っている従業員の上司も参加しています。
関係者の情報共有
- 衛生管理ミーティングでは、休業した従業員の復職判定や、職場復帰プランの作成、職場復帰後の支援方法などについて、病気が再発した際の対応なども含めて話し合いを行っています。
- 職場復帰前には、上司が従業員本人と面談を行い、職場復帰後の配慮や避けるべき業務などについて、会社所定の面談シートに記録していきます。
- そのうえで、衛生管理ミーティングでは、主治医からの意見や面談シートを参考にしながら復職判定を行い、どのような業務を担ってもらいながら復職支援していくかを検討し、職場復帰プランを作成します。例えば、復帰直後は身体の負担が大きい入浴介助の業務は避けた方が良いのではないか、などの協議を行っています。
- 症状や体調は人によって異なるため、復職後の働き方も従業員によって様々です。そのため、復職後も上司と従業員本人で繰り返し面談を行い、特に大変な業務は何かという点を聞くようにしています。従業員にとって身体的な負担が大きな身体介助については、自立している利用者の見守りなどの介助から始めたり、それでも難しいということであれば、書類作成や職種間の調整業務を増やすなど、業務内容を調整しています。
- 復職後も同様に、上司が面談を行い面談シートに記録を残すとともに、衛生管理ミーティングで支援状況を共有しています。
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<復職支援の流れ>(インタビュー内容を踏まえて作成)
POINT
がんに罹患した従業員への支援
- 前述の介護職の従業員から上司に対し、がんに罹患したとの報告があり、抗がん剤治療をしながら働きたいという従業員本人の意向を踏まえ、しばらくは業務を調整しながら通院していました。しかしながら、当初の見込みよりも症状の改善が見られず、手術が必要となり、休職することになりました。
- 休職期間中は上司が従業員と連絡を取り、傷病手当金の申請に関する説明や、治療状況の確認などを行いました。また、当時は休職期間や復職方法などに関する規程がなかったため、復職にあたって勤務日数や勤務時間、業務内容をどのようにするかなどの話し合いをその都度行いました。
- 復職後は抗がん剤治療を継続しながら週2日、1日4時間の短時間勤務から始め、事務を中心とした業務内容に変更しました。その後、勤務日数・勤務時間を段階的に増やしていきました。
- ただ、本人には、周囲に迷惑をかけたくないという思いや、無理をしてでも介護職の仕事をしたいという思いがありました。その気持ちを受け止めるため、上司が本人と面談を重ね、身体的な負担や本人の意向に応じた業務内容を検討し、食事介助など座りながら行える業務を担ってもらうなどの調整を行いました。
- その後も治療の状況を見ながら、現在はがんに罹患する前と同様の業務(週4日、1日8時間勤務)に戻ることができました。
POINT
当時は休職期間や復職後の支援方法に関する規程を定めていなかったため、会社としてどのような支援ができるか、その都度検討していました。従業員との面談を繰り返し、本人の意向や治療の状況を踏まえて支援していく経験を通じて、就業規則に明記する必要性を感じました
休暇制度・勤務制度の導入
- 上記の事例を通じて、また別の従業員ががんなどの病気に罹患し、会社の休職期間等について説明を求められた場合、対応することができないと考え、就業規則を定めることにしました。人事労務担当者と一緒にインターネットで調べ、顧問の社会保険労務士に相談をしながら一緒に作成していきました。
- 就業規則には、勤続年数に応じて私傷病による休職期間の上限を定めています。
- また、育児や介護のために利用できる短時間勤務制度は、治療との両立のためにも利用できるようにしました。主治医の意見や従業員本人の意向を踏まえ、1日の所定労働時間を6時間や4時間に短縮したり、週の労働日数を減らすなどの対応が可能です。時差出勤制度も利用できます。
まずはこの一歩から!
- 治療により休職せざるを得ない従業員がいた場合は、まずは本人の話をしっかりと聞くことが重要だと思います。そして、治療方針や、働き方・業務内容に関する希望などについて、本人の意向を確認することができるように、会社所定の面談シートを作成するなど、日頃から準備しておくとよいでしょう。その他、休職期間などに関する会社としてのルールがなければ、社会保険労務士に相談するなどして、就業規則を見直すことも検討しましょう。
POINT
休職が必要な従業員や復職を支援する際は、本人の話を聞き取り、会社として支援するためにも面談シートのように記録に残しておくとよいでしょう。面談シートに記録しておくことで、関係者全員で従業員本人の状況を把握することができ、チームで支援することができます。
これから取り組む企業の皆さんへ
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まずはできることから就業規則や社内の規程に明記しておくと良いと思います。治療や療養による休職はどのくらいの期間認められるのか、復職後はどのような支援を行うことができるのか、等の方針や基準を検討し、会社としてできることを明記しておけば、いざというときに対応できます。運用していく上で改善が必要であれば、アップデートしていけば良いのではないでしょうか。
(代表取締役社長:小田 友樹さん)
取組の効果、課題の克服方法、今後の展望
治療と仕事の両立支援に取り組むことで、健康への意識が高まり、病気等を理由とした予期せぬ退職を防げるように
- 治療と仕事の両立支援に積極的に取り組む前は、健康診断の受診後のことはそれぞれの従業員に任せていました。しかしながら、治療と仕事の両立支援に取り組むようになったことで、従業員に長く働き続けてもらうためには、従業員が健康であることや、病気を早期に発見することが重要だと考えるようになり、従業員の健康診断の結果から集団分析を行い、職場全体の健康課題を把握するようになりました。現在は健診の受診勧奨だけではなく、健診後の再検査・精密検査の受診勧奨も行っています。
- このような取組を行ってきたことで、厚生労働省の「安全衛生優良企業公表制度」にて、安全衛生優良企業に認定されました。
- 会社として従業員の健康保持増進に関する活動を推進したため、従業員自身も健康への意識が高まり、結果として病気等を理由とした予期せぬ退職を防ぐことができていると感じています。
- 今後は、健康診断項目の拡充など、より早期に病気を発見することができるように会社として支援していくことも検討しています。
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同社が運営する住宅型有料老人ホーム こもれびの里守口(同社提供)
(令和8年3月時点)
衛生管理ミーティングで協議する内容を就業規則に明記しています。明記することで、上司や他の管理職で状況を共有しながら、従業員を支援する体制が整えられているように感じます。