社会福祉法人恩賜財団済生会 岡山済生会総合病院

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医療ソーシャルワーカーや看護師、臨床心理士等、院内全体の多職種による「治療と仕事の両立支援チーム」によって、組織レベルで取組を推進

医療機関/支援機関概要

所在地 岡山県岡山市北区国体町2-25
職員数 1139名(医師176名、看護師534名、医療技術188名、事務その他241名)(2025年4月1日現在)
設立 1938年4月
病床数 473床
治療と仕事の両立を支援する担当部署 病院全体の相談窓口である患者サポートセンターやがん相談支援センター、治療と仕事の両立支援チーム(院内横断組織)
医療機関の種別・概要等 ・幅広い診療科目を備えた、急性期医療を担う総合病院。
・がん診療連携拠点病院として、先進的な治療や専門医療を提供しつつ、全人的な医療の提供に努めている。

取組の概要

がん相談支援センターの医療ソーシャルワーカーをはじめとする有志の職員数名が中心となり、就労支援の会を立ち上げ。その後、院内全体の多職種による「治療と仕事の両立支援チーム」に発展

取り組んだ背景、経緯

  • 2018年、がん相談支援センターに配属された職員(医療ソーシャルワーカー)が、患者から就労に関する相談を受ける中で、現実の厳しさや両立支援の必要性を強く感じていました。その頃、上司の勧めで両立支援コーディネーター基礎研修を受講し、両立支援の重要性などを学ぶことができました。
  • その職員は、経済的な不安を抱えた患者の中には、支援する前に退職している場合もあり、もっと早く支援できていれば離職防止につながったのではないかと考え、ニーズの把握や院内支援体制の構築、個別支援の体制づくりの必要性を感じました。しかしながら、一人で対応するには限界があり、他職種や他機関の協力が不可欠なことから、チーム設立を目指しました。
  • 2019年1月からハローワーク岡山と岡山産業保健総合支援センターに依頼して、治療と仕事の両立に関する院内での出張相談を開始しました。また、同年10月には、院内職員を対象とした両立支援セミナーを開催しました。この時のテーマは「がん患者と長期療養患者への就労支援」でした。このセミナーをきっかけに、院内の臨床心理士や看護師等が両立支援を一緒に取り組みたいと手を挙げてくれました。そこで、がん相談支援センターの医療ソーシャルワーカー、看護師、化学療法センターの看護師、臨床心理士の4名で就労支援の会を立ち上げることになりました。
  • (同院提供)

  • がん相談支援センターやがん化学療法センターだけでなく、院内全体を巻き込んで就労支援を行う体制づくりを目指す必要があると考え、副院長から院内幹部会議で発案してもらいました。その結果、多職種によるチームの立ち上げが院内で承認され、各部署からメンバーを集めることができました。こうして2020年3月に「治療と仕事の両立支援プロジェクトチーム」がワーキンググループとして立ち上がり、活動を開始しました。ミーティングを重ね、広報やツール作成、患者のケース検討などを行い、2023年4月には正式に院内の医療チームの一つとして「治療と仕事の両立支援チーム」となりました。

POINT

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ともするとチームづくりが目的となりがちですが、患者がより良い生活を送り、治療と仕事を両立できるようにすることが本来の目的です。今後も取組の質の向上や前進を目指していきたいと考えています

取組・推進体制

  • 「治療と仕事の両立支援チーム」は、当院の副院長をリーダーとして、複数の診療科の医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士(公認心理師)、薬剤師、栄養士、作業療法士、医療事務員のほか、がん化学療法センターのスタッフ、外来通院中や退院後の患者に関わる外来センター病院のスタッフなど、18名で構成されています。現在所属している医療ソーシャルワーカーはがん相談員も兼務しています。実際に患者と接している職員が、治療と仕事の両立支援に対するニーズを感じ、取組に共感をしていることが、チームの推進力となっています。チームに所属する職員のうち9名が両立支援コーディネーター基礎研修を修了しており、ほかの職員も順次研修を受講しています。
  • (同院提供)

POINT

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就労支援の観点からハローワークや産業保健総合支援センターとも連携しています。産業保健総合支援センターの担当者には、「治療と仕事の両立支援チーム」のオブザーバーとして毎月のカンファレンスに参加してもらっており、その場で個々のケースについて相談できるため、大変助かっています。

相談窓口、院内における両立支援体制の整備

  • 「治療と仕事の両立支援チーム」の活動目的は、長期療養が必要な患者への職場復帰や就労継続支援、就職支援です。対象疾患は、がん、脳血管疾患、肝疾患、心疾患、糖尿病、指定難病、若年性認知症です。就労継続支援の対象は、治療と仕事の両立に不安のある方、休業中で職場復帰を検討している方、職場復帰の意向はあるが不安を感じている方など、様々な状況の方を含めています。
  • 具体的な活動指針として以下の3本柱を掲げています。
①個別支援 患者からの相談に積極的に対応し、職場復帰や就労継続支援、就職支援を実施
②組織づくり 院内体制の整備や充実、職員への周知や意識啓発を継続して実施
③地域社会への働きかけ 地域や社会に相談窓口の存在や就労支援の重要性を知ってもらう機会を創出
  • 院内の職員が所属部署で患者のニーズをキャッチし、「治療と仕事の両立支援チーム」で作成したリーフレットを活用しながら、「こういった支援ができますが、いかがでしょうか」と案内をしたうえで、患者の同意が得られれば支援につなげています。また、院内の各所にポスターを掲示しており、それを見た患者から連絡をもらうことがあります。さらに、医師が診察の場で患者の話を聞き、支援が必要と判断した場合にも連絡があることもあります。
  • また、当院の問診票には「生活のしやすさに関する質問票」を設けています。「仕事」の欄にチェックがあった場合、担当している職員が、患者に詳しく話を聞くようにしています。また、問診票の最後に「医師・看護師・ソーシャルワーカー・両立支援コーディネーターによる支援を希望するか」という欄を設けており、希望があれば、両立支援チームの担当者がさらに詳しい質問票を用いて初回面談を行います。

POINT

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当院で作成している問診票に仕事の悩みの有無をチェックする項目を設けており、チェックがあった場合は、院内のフローチャートに基づき、治療と仕事の両立支援に関するリーフレットを渡し、声をかけるようにしています。

その他(地域社会への周知)

  • 地域向けのイベントとして「岡山済生会フェア」を開催し、病院を開放してさまざまな部署がブースを出しています。「治療と仕事の両立支援チーム」でもブースを設け、子ども向けにバルーンアートや塗り絵、ゲームコーナーを用意しています。子どもが遊んでいる間に両親に対して、「病院で治療と仕事の両立支援を行っていることを知っているか」などをアンケートでうかがい、知らない場合、その場で説明を行っています。30~40代の働く世代の来場が多く、広く周知できていると感じています。
  • 2025年度から外来の待合にデジタルサイネージを設置し、当院の治療と仕事の両立支援に関するスライドを流しています。
  • (同院提供)

POINT

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岡山済生会フェアでは、当院の治療と仕事の両立支援に関するリーフレットのほか、産業保健総合支援センターやハローワークの資料もクリアファイルに入れてまとめて配布し、広報に努めています。

まずはこの一歩から!

  • 治療と仕事の両立支援について、最初から組織を作るのではなく、まずは共感を得られた院内の職員数名による活動からスタートしました。定期的に集まり、課題などを話し合いながら、上層部の理解も得て、多職種によるチームの立ち上げへと発展しました。

POINT

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患者とよく話をしている職員の中には、治療と仕事の両立支援の必要性を感じている人がいると思います。院内全体に取組の必要性や意義を発信することで、仲間が増えていくのではないでしょうか。

これから取り組む医療機関・企業の皆さんへ

  • 職場に迷惑をかけたくない、申し訳ないという思いを抱え、一人で悩んでいる患者は多いように感じます。そうした思いを持つ方こそ、会社や仕事を大切に考えていたりします。病状が変化する中で、病院、企業、関係機関が知恵を出し合い、患者の不安を少しでも取り除き、多面的かつ継続的に支援することが、患者が納得できる治療や働き方の選択につながります。今後も一緒に頑張っていけたらと思います。
    (医療ソーシャルワーカー・がん専門相談員 古森あゆみさん、香山美香さん)

その他の取組等

関係者間の情報共有

電子カルテのシステムに、治療と仕事の両立支援に関連した情報を共有するためのテンプレートを作成し、患者の仕事に関する情報や支援経過を可視化。主治医意見書を発行する仕組みも整備

  • 院内の職員間の治療と仕事の両立支援に関連した情報共有のために、相談記録や勤務情報を入力できる電子カルテ用のテンプレートを作成しました。患者の職業や業務内容、通勤方法、通勤時間、利用できる制度などを入力できるようにしています。また、「治療と仕事の両立支援チーム」が面談した内容を記録するテンプレートや、治療状況や就業可否について主治医が意見書を発行できる仕組みも整えています。患者の仕事に関する情報や支援経過を可視化することで、関係職種間で情報共有がしやすくなりました。
  • 主治医意見書は、国で作成している「治療の状況や就業継続の可否等について主治医の意見を求める際の様式」を活用しており、患者を中心に病院と職場をつなぐ役割を担っています。患者が「まだ働けるか不安」と感じていても、主治医が「大丈夫」と書類を通じて伝えることで安心する患者もおり、とても重要な役割を果たしています。
  • 企業によっては主治医との情報連携のために独自の様式を作成している場合もありますが、中小企業では様式を設けていなかったり、国の様式を知らないこともあり、国の「勤務情報を主治医に提供する際の様式」を電子カルテのシステムから出力できるようにしています。患者に渡して職場で記入してもらい、提出されたものを電子カルテのシステムに取り込んで、院内の関係者で共有しています。

取組の効果、課題の克服方法、今後の展望

組織レベルで患者の治療と仕事の両立支援について検討し、患者の支援に向けて多職種が連携して取組を推進

  • 「治療と仕事の両立支援チーム」を多職種で構成したことから、院内職員への周知が進み、各部門で患者のニーズをよりキャッチできるようになりました。その結果、がん相談員が関わった治療と仕事の両立に関する相談件数は、2020年度は56件だったところ、2024年度には114件へと増加しました。治療と仕事の両立に関するカンファレンスを通じて多職種の知識は深まり、組織レベルで支援策を検討し、行動に移すことができるようになりました。
  • 院内の職員を対象とした治療と仕事の両立支援に関するセミナーの様子や受講後アンケートをみると、各職種が「自分に何ができるか」「就労支援にどう関われるか」という視点を持つようになっている様子がうかがえ、患者の利益につながっていると感じています。

(令和8年3月時点)