エアロトヨタ株式会社
社内制度を活用してもらえるように、治療と仕事の両立に関する情報を整理した独自のハンドブックや業務アプリを作成。研修などでも折に触れて周知
企業概要
| 所在地 | 東京都江東区新木場四丁目7番41号 |
|---|---|
| 業種 | 運輸業 |
| 設立 | 1955年7月20日 |
| 従業員数 | 1,323名(2025年4月1日現在) |
| 平均年齢 | 44.7歳 / 男女比 男性8:女性2 |
| 産業保健スタッフ | 16名(産業医(嘱託)5名、衛生管理者11名) |
| 事業内容 | 航空事業では、自社機・運航受託機合わせて50機以上のヘリコプターとビジネスジェットで幅広い運航サービスを展開。空間情報事業では、レーザや音波などの最先端のデジタルセンサーを用い、使用目的に合った計測技術(航空レーザ計測、モービルマッピングシステム、海底探査など)と解析技術とを融合させた高精度な空間データを作成・提供。 |
取組の概要
治療と仕事の両立が必要となった際に従業員が社内制度を活用できるよう、当社独自の「私傷病の治療と仕事の両立支援ハンドブック」や「健康ポータル」を作成。研修などを通して意識啓発を図る
取り組んだ背景、経緯
- きっかけは、従業員ががんに罹患し、休業することになったことです。当時、失効年次有給休暇の積立制度があったものの、従業員が制度の存在を知らなかったために利用することができませんでした。そこで、人事部に対して、制度を社内に周知する必要があるのではないかと提言を受けました。制度の利用実績が少なかったこともあり、社内制度の周知啓発をはじめとする治療と仕事の両立支援に、会社として本格的に取り組むことになりました。
- また、治療と仕事の両立支援と並行して、健康経営に関する取り組みや、仕事と介護の両立支援などのワークライフバランス推進の取り組みの中で、制度の見直しや拡充も行いました。
取組・推進体制、労使での話し合いの機会
- 全社組織である「社内働き方改革委員会」の中に、「私傷病の治療と仕事の両立支援分科会」を新設し、人事部がサポートしながら前述のがんに罹患した従業員が中心となって取り組みを進めました。分科会では、両立支援に関する各種取組の検討を行ったほか、「すぐに辞めない、辞めさせない」をスローガンに掲げた「私傷病の治療と仕事の両立支援ハンドブック」を作成し、社内で配布しました。
- 治療と仕事の両立支援の取り組みが進んできたため、現在、前述の分科会は役割を終え、2024年4月からは人事部内の1つの組織として「HRウェルネスグループ」を新たに立ち上げ、両立支援やワークライフバランスの推進について、会社としてより積極的に取り組んでいます。
- また、人事部の担当者は両立支援コーディネーター基礎研修を修了しており、治療と仕事の両立支援の取り組みを中心的に進めているほか、相談窓口業務も担っています。
- その他、治療と仕事の両立経験がある従業員の中には、相談対応や研修の講師などに協力してくれる方もいます。そうした従業員のことは社内報でも紹介しており、相談先のひとつとして周知しています。
POINT
研修等による意識啓発
- 当社独自の「私傷病の治療と仕事の両立支援ハンドブック」では、がんに関する基礎知識や、利用できる社内制度、職場での配慮事例などを紹介しています。がんを中心に取り上げていますが、他の疾病にも応用できるような内容とするなど、前述の分科会で作成した内容をベースに、以降も社内制度などに変更があったタイミングでアップデートしています。ハンドブックを通して、治療と仕事の両立に関して関心を持った従業員がいつでも確認できる環境を整えています。
- 2024年には新たに、社内イントラネット内に業務アプリとして当社独自の「健康ポータル」を作成しました。健康ポータルでは、治療と仕事の両立支援に関する情報を発信しているほか、健康保険組合が提供しているチャットサポートの機能も備えています。何か周知を行う際には健康ポータルへのリンクを併せて案内するなど、従業員に定期的にアクセスしてもらえるような仕組みにしています。
- また、治療と仕事の両立支援について、研修を通して従業員への意識啓発も行っています。具体的には、新入社員向けや年代別研修にて、休暇・給付金等に関する情報提供を含む、両立支援に関する社内の取り組みについて毎年紹介しています。その際、がんに罹患した従業員に、自身の体験などを話してもらっています。
- 新任管理職向けの研修でも、治療と仕事の両立をはじめとする様々な両立支援について、理解促進のため周知啓発を図っています。研修では、部下から「病気」「介護」「育児」などの言葉を聞いたときは、すぐに人事部につなぐようにと伝えています。
-
<私傷病の治療と仕事の両立支援ハンドブック>
(同社提供) -
<研修の様子>(同社提供)
POINT
研修については、新入社員を対象に毎年実施していることや、職場づくりの主体である管理職にも働きかけていることがポイントです。また、単なる制度紹介にとどまらず、がんに関する情報提供や経験談の共有を行うことで、従業員ががんに罹患する前に、がんに関する知識を得られる機会としています。
まずはこの一歩から!
- 治療と仕事の両立に関して、がんに関する基礎知識や社内制度、社内の両立事例等についてとりまとめたハンドブックやポータルを作成しましたが、こうした取り組みに加えて日頃から情報発信を行い、従業員に対する周知啓発を図ることも重要だと考えています。
POINT
当社では、相談窓口の一覧を年度初めに周知したり、健康診断やストレスチェック実施のタイミングで各種取り組みを紹介したりするなど、日頃から様々な機会を活用して従業員に社内制度の周知と理解促進を行っています
これから取り組む企業の皆さんへ
- がんに罹患した従業員から、制度周知の必要性を提言された当時は、制度を活用できている従業員は少なく、管理職への周知も進んでいませんでした。そうした状況から、制度などに関する情報を分かりやすく整理して発信したり、管理職を含めた従業員に対して研修を行ったりしたことで、治療と仕事の両立に関する考え方や制度が社内に浸透していきました。このように、制度や相談窓口を単に整備して終わるのではなく、意識啓発などを日々積み重ねていくことが重要だと考えています。
(人事担当・両立支援コーディネーター:山口さん)
その他の取組等
関係者の情報共有
社外では独自様式を活用して、各種面談の際に活用
- 治療のために休業した従業員が職場復帰をする前には、まずは上司・人事部・従業員本人の三者で面談を行っています。上司が面談に同席するのは、職場復帰に向けて、同僚に本人の状況を理解してもらえるように、必要な範囲で状況共有してもらうためです。
- そのうえで、産業医面談に向けて、主治医には当社独自の「診断書(就業上の配慮に関する意見書)」を書いてもらうようにしています。情報提供書をもとに産業医面談を行い、職場復帰後の当面の働き方について相談しています。
- このほか、就業上注意すべき事項について、従業員本人も理解できるよう、本人から主治医にヒアリングし、記入するための独自様式も整備し、各種面談に役立てています。
-
<診断書(就業上の配慮に関する意見書)>
(同社提供)
-
<仕事をする上での注意事項 (対象者自身が記載する様式)>
(同社提供)
休暇制度、勤務制度
既存制度の見直しや拡充を図り、一人ひとりの状況に合った働き方が選択可能
- 以前、年次有給休暇を使い切った状態で職場復帰をした従業員が、勤務日に通院する必要があり、やむを得ず欠勤になったという事例がありました。これを受け、既存の失効年次有給休暇の積立制度(社内制度、以下、積立休暇)を見直し、年次有給休暇を5日残した状態で、積立休暇を利用できるようにしました。
- また、テレワークや時差出勤制度を導入しているほか、事前に承認を得ることで、コアタイムなしのフレックス制度を利用することができます(いずれも社内制度)。
- このように、多様な働き方の選択肢を設けており、従業員はそれぞれの状況に合わせて働き方を選ぶことができます。難病を抱える従業員や、がんに罹患した従業員は、テレワークや時差出勤制度を活用しています。
取組の効果、課題の克服方法、今後の展望
治療を理由に必ずしも会社を辞める必要はないという会社の考えが従業員にも浸透。今後もニーズに合った制度の検討や、疾病の予防や早期発見にも取り組みたい
- 治療に限らず、介護や育児を理由に必ずしも会社を辞める必要はなく、様々な制度を整備し、それらを組み合わせて支援すれば、両立は可能になると考えています。当社では、そういった考えに基づいて各種取組を進めており、治療のために休業が必要な従業員の職場復帰率が向上しました。また、従業員も「会社に相談すれば、働き続けられる」と思っているのではないかと感じています。
- 当社では障害者手帳の保有者が取得できる通院休暇を導入していますが、難病や大きな病気に罹患した従業員にもそうした休暇制度が必要だと感じています。年次有給休暇はリフレッシュのために使い、治療については別途必要な休暇を取得できるように、特別休暇制度の導入を今後検討したいと考えています。
- また、今後は健康診断の結果を有効活用するなど、疾病の予防や早期発見についても取り組みたいと考えています。
(令和8年3月時点)
当時、従業員への周知が不足していたために、制度があっても必要なときに活用してもらえないという状況がありました。そのため、制度を整備して終わるのではなく、ハンドブックなどに情報を整理し、従業員に周知することもセットで行いました。