地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立がんセンター

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がん相談支援センターでは、きめ細やかな相談対応・情報提供を実施。「いつでも、どこでも、みんなで」患者さんの就業継続支援をしていくことを目指している

医療機関/支援機関概要

所在地 神奈川県横浜市旭区中尾二丁目3番2号
職員数 846名(医師139名、看護師483名、その他224名)
(2026年1月1日現在 常勤数)
設立 1986年
病床数 415床
治療と仕事の両立を支援する担当部署 患者支援部がん相談支援センター
医療機関の種別・概要等 ・厚生労働省指定の都道府県がん診療連携拠点病院として、神奈川県内のがん医療の中心的な役割を担っている。
・がんゲノム医療拠点病院の指定も受けている。

取組の概要

治療と仕事の両立に関する困りごとや不安を抱える患者さんをがん相談支援センターにつなげられるよう、様々な機会で患者さんにアプローチ。病院で一丸となって、働いている患者さんを支援することを目指し、治療期/職種別のガイドを作成している。

取り組んだ背景、経緯

  • 2007年に都道府県がん診療連携拠点病院としての指定を受け、整備指針やがん対策推進基本計画に則って、相談支援の充実を図ってきました。
  • 中でも院内に設置されたがん相談支援センターは、がんに関する相談窓口として、病気や治療についての情報提供や、治療にともなう生活上の心配事についての相談支援を行っています。
  • また、2018年には、院内全体で就業継続支援の取組を推進する必要があるとの認識から、多職種で構成するワーキンググループが立ち上がりました。2021年からは年3回、多職種で集まって就業継続支援に関する検討を行っています。

取組・推進体制

  • がん相談支援センターには、看護師(管理者を含む)8名、医療ソーシャルワーカー(医療福祉相談室と兼任)1名が所属しています。また、がん相談支援センターとは別にアピアランスサポートセンターが設置されており、専従看護師1名が所属しています。相談支援には、これらの10名体制で対応しています。これらの相談員10名のうち4名は、両立支援コーディネーター基礎研修を修了しています。
  • 個別の支援についてはがん相談支援センターで対応しつつ、院内全体の課題については多職種での検討会議で検討しています。
  • 院内に設置している検討会議の構成員は、副院長(がん相談支援センターの管理者)兼患者支援部長、就業継続支援に関する相談患者さんが多い診療科である血液・腫瘍内科および大腸外科の医師、薬剤師、看護局副看護局長、外来診療の看護科長、婦人科がん病棟の看護科長、リハビリ職、管理栄養士、がん相談支援センターの相談員、医事・診療情報課の担当者などです。

相談窓口の設置

  • 治療と仕事の両立に関する困りごとを抱える患者さんががん相談支援センターにつながれるよう、様々なアプローチをしています。例えば、外来診療の待合室のモニター画面ではがん相談支援センターの案内や、ポスターの掲示を行い、相談ができることを周知しています。また、初診時に、事務員からがん相談支援センターの案内を行い、仕事に関する相談ができることを伝えています。さらに、外来受診時には、「生活のつらさスクリーニングシート」を記入していただき、個々の患者さんの悩みを把握しています。その中で、仕事の悩みがある、または経済面に不安があると回答した患者さんについては、外来の看護師が詳しく聞き取りをして、がん相談支援センターを紹介します。

<がん相談支援センターの周知資料>(同院提供)

  • 相談があった患者さんについては、本人の了承のうえ、がん相談支援センターが主治医と連携することもあります。職場復帰にあたって治療と仕事の両立支援を必要とする患者さんや、職場復帰をしてみたものの心身への負担の大きさに悩んでいる患者さんなどが希望する場合は、(勤務情報提供書を職場から提供してもらったうえで)主治医に主治医意見書の作成を依頼し、患者さんが職場と調整しやすいように支援しています。

POINT

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治療が終了した患者さんは、周囲の従業員から完全に回復したと思われてしまいがちですが、実際には体力などが完全に戻っておらず、目に見えないつらさを抱えている方が多くいらっしゃいます。ご自身の状況を上手く職場に伝えられるように患者さんと一緒に考えたり、社内の両立支援制度について職場に確認するようアドバイスしたりしています。

関係者との情報共有、院内の両立支援体制の整備

  • 2021年には相談希望があった場合の対応の流れをまとめたフローを作成しました。
  • さらに、2024年には、各職種がどのタイミングで支援に関わるかを見える化した治療期/職種別のガイドを作成しました。また、がん相談支援センター以外の医療職からも患者さんに声をかけてほしいという思いで、全職員向けにe-ラーニングで研修も行っています。
  • <治療期/職種別 就労支援行動ガイド>(同院提供)

POINT

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不安を抱える患者さんをいかにがん相談支援センターでの相談につなげられるようにするかが重要だと考えています。職員が、患者さんの生活や仕事に目を向けて働きかけられるよう、また職種間の連携を円滑に図れるようにしていきたいと思っています。

血液がんに罹患した患者さんへの支援

  • 血液がんに罹患し、骨髄移植をした後、職場復帰をした50代の患者さんがいました。職場復帰当初はフルタイムで勤務していたものの、通勤するだけでも精一杯の状況であり、職場復帰後1~2か月で体調を崩してしまいました。血液・腫瘍内科の看護師からがん相談支援センターに連絡があり、支援を始めました。
  • 定年まで働きたいという目標を支えるため、職場復帰の手立てを一緒に模索しました。外来受診時に、職場の担当者を交えて主治医と相談し、在宅勤務を試したこともありましたが、業務内容との兼ね合いで在宅勤務を継続することが難しくなり、再度休業することとなりました。その後、休業中に通勤の練習などを重ね、休業期間が満了する前に職場復帰をすることができました。主治医意見書を作成し、職場からの理解・協力を得ながら職場復帰後数か月は、短時間勤務などを組み合わせ、段階的にフルタイムに戻していきました。現在でも仕事を続けられており、もう少しで定年を迎えることができそうです。

POINT

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ご本人から、『治療と仕事の両立は大変だと思いますが、主治医や看護師、がん相談支援センターなどサポートしてくれる方もいるので、あきらめずに前を向いていきましょう。』とのメッセージをいただいています。

まずはこの一歩から!

  • まずは、院内の各職員が、患者さんの仕事や生活にも目を向け、「お仕事どうしていますか?」とひと言、声をかけてみてはどうでしょうか。
  • 患者さんは、病院は仕事に関する相談をする場所ではないと思い込んでいることがあります。病院で仕事に関する相談ができることを広めていくことが大事だと思っています。

POINT

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病院の職員は誰でも、就業継続支援に関わる可能性があります。患者さんのちょっとした言葉から、仕事の心配などを察知して、相談窓口につないだり、話をしたりするだけでも患者さんの助けになれるかもしれません。『いつでも、どこでも、みんなで』支援するのが理想的だと考えています。

これから取り組む医療機関・企業の皆さんへ

<医療機関の皆さんへ>
  • 病院によっては、患者さんの就業継続支援の担当者が少数しかいない場合もあるでしょう。担当者だけで支援を担うのではなく、各職員がそれぞれちょっとした声掛けをするなどして、病院全体で患者さんの就業継続支援に取り組めたらよいのではないでしょうか。
<企業の皆さんへ>
  • 不安な気持ちを抱えながら職場復帰している患者さんも多くいます。まずは職場復帰をして会社に貢献したいと思う従業員の気持ちを大事にしてもらいたいと思います。
  • 企業としても、働いてもらって大丈夫かどうか、不安に思う気持ちもあるでしょう。そのような場合には、がん相談支援センターに相談してもらってもよいかと思います。病院と企業とで連携をとりながら患者さんの就業継続を支えていきたいと考えています。

(がん相談支援センター センター長 松尾さん)

その他の取組等

外部資源との連携

ハローワークや社会保険労務士などとも連携して、情報提供・相談支援を実施。

  • 相談内容によっては、社会保険労務士などと連携しています。
  • ハローワーク横浜による定期的な出張相談を月2回実施しています。出張相談時には、院内放送にて開催を周知しています。
  • 患者さんが希望した場合は、社会保険労務士に相談できるように手配しています。職場への伝え方などを相談したいというニーズもあるようです。
  • がん相談支援センターの相談員が、産業保健総合支援センターに患者さんの支援方法について相談をすることもあります。その中で、当院と職場の情報共有などの連携に関する助言等をいただくこともあります。

取組の効果、課題の克服方法、今後の展望

支援後の状況確認が難しいことが課題。『いつでも、どこでも、みんなで』の実現を引き続き目指していく。

  • 2024年度は、がん相談支援センターの相談員による支援件数は119件、主治医意見書の作成件数は7件にのぼりました。
  • 一方で、がん相談支援センターの支援を離れた後、患者さんからの声を聞ける機会は限られています。支援した事例がその後どうなったのか、また支援の評価はどうだったかを聞く機会がなく、支援が成功だったかどうかが分からないケースもあります。支援後の状況確認ができるか、検討したいと思っています。
  • 職員が『いつでも、どこでも、みんなで』支援をするのが理想的だとは思っていますが、職種などによる温度差を感じることもあります。治療期/職種別のガイドの活用を推進するほか、職員に対する意識調査なども実施し、今後の対応を検討していきたいと考えています。

(令和8年3月時点)