厚生労働省

治療と仕事の両立支援ナビ

両立支援の取組事例

社員が安心して働ける
「人にやさしい」会社の思いを両立支援基本方針に明文化

株式会社オガワエコノス

人事総務部 総務課兼人材開発課 課長
堀 千奈美

会社名
株式会社オガワエコノス
所在地
広島県
事業内容
廃棄物処理業
従業員数
243名(2018年6月現在)
産業保健スタッフ
5名
(衛生管理者3名、健康保険委員1名、産業医<非専属>1名)

株式会社オガワエコノスは1964年に設立され、広島県府中市を拠点に廃棄物の収集・処理業務を行う。トイレの水回り業務を行うアクア事業、企業・家庭の廃棄物の選別・リサイクルを行う中間処理業務、廃棄物から石炭代替燃料を製造するRPF固形燃料製造業務を柱に全国展開している。

苦労した両立支援の導入。まずトップが「基本方針」を策定

同社では経営計画の中で健康経営を掲げる。「予防」「治療」「共生(復職)」の3つのアプローチで健康経営の実現を目指す。例えば、予防では健康診断の中で対象年以上の社員にがん検診を実施している。 「がん検診で、ある社員のがんが見つかりました。これを契機に治療と仕事の両立支援方針を代表者自ら策定しましたが、そこに至るまでは試行錯誤の連続でした」と人事総務部総務課兼人材開発課長の堀千奈美氏は振り返る。

がん治療を行いながら仕事を続けるためには、両立支援の仕組みが必要になる。だが、同社では両立支援の規程がないことから、厚生労働省が作成した「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」に記載されているフォーマットを用いた運用を管理職の会議で提案した。 しかし、「大企業でもないのに、そのような両立支援の仕組みが本当に必要なのかという意見が出されました。そこで仕組みづくりから進めようとするのではなく、まずトップの考え(基本方針)を前面に打ち出していただきました」(堀氏)。

オガワエコノス「治療と職業生活の両立支援」基本方針は次のとおりだ(以下の実際の基本方針を参照)。

1.オガワエコノスは、社員の健康管理を適切に行い、疾病、重症化の予防や治療、リワークのサポートを通して、健康経営の実現に努めます。
2.オガワエコノスは、治療を受けながら働く意欲のある社員に対して、「治療と仕事の両立」を積極的に支援します。
3.オガワエコノスは、社員本人の意向と能力、および治療上の安全に十分配慮し、主治医、産業医と連携した支援を行います。
4.「治療と仕事の両立」に対する重要性を全社員が認識し、相互に協力しながら働きやすい職場風土をつくり、安心して働ける会社を目指します。



基本方針の目的は、「どんな境遇であっても、働く意欲のある社員が働き続けられる職場づくりです。治療と仕事の両立支援に弊社がどう取り組むかが明文化されています」と堀氏は強調する。 この基本方針は、2018年6月に制定され、研修などを通じて、全社員へ周知しているところだという。

「両立支援規程」は会社の積極的な姿勢の具現化

そして、基本方針に基づき、がんにかかった社員を支援する中で、がんなどの長期療養に限らず、社会生活や育児・介護など家庭と仕事の両立のための支援が必要との考えから、両立支援規程を制定している。
規程の一部は病気と闘っている社員と一緒に作り上げた。「社員が安心して働ける『人にやさしい』いい会社の実現にみんなで取り組んでほしい」というトップの思いが形になり、「会社が特定の社員ではなく、全社員にコミットしたことについて、社員みんな嬉しく思っています」(堀氏)。



両立支援規程は健康経営、働き方改革の取組の中で、基本方針や行動計画で掲げてきた会社の思いを具現化している。 治療と仕事生活の相談窓口の設置、社会生活と仕事の両立支援プランの策定と実行、家庭と仕事の両立を支援する多様な休暇制度と柔軟な勤務形態などについて制定している。

例えば、治療への取組では、治療が必要な社員は治るかどうか精神的な不安や、以前のように仕事ができるかどうか体力的な不安、治療費の支払いなど経済的な負担に対する不安を抱えている。 「こうした不安、負担を少しでも軽減できるように、そして、治療に前向きに取り組んでいけるように、会社としてどんな支援ができるのかを中心に制度休暇・福利厚生制度などを会社がつくりました」と堀氏は取組を説明する。


また、治療が一段落した社員の復職の取組では、本人や家族、主治医、専門家として両立支援の助言を行う医療機関の地域連携室支援員、総務担当者等が協力して、両立支援プランを策定した。 「本人にとって治療が一番の仕事であり、復職も治療の一環であると考えています。復職後の職務・作業内容は、本人、主治医、会社が連携し、治療しながら就業する作業プランやスケジュールをつくっています。 そして、本人の希望を基に、メディカル的に就業可能な職場と職務の選定、更には環境づくりを心掛けています。本人にとっての働きがいとやりがいのある職場を選定するようにしています」(堀氏)。


復職で苦労する点は、受入れ部署の職場環境だという。「現場責任者からは、仕事中に何か問題が起きても責任は取れないと言われたこともあります。 そこで、総務が両立支援プランをもとに休憩の取り方や留意事項など安心して受け入れができるように情報提供することを約束し、現場責任者に納得してもらったこともありました」と堀氏は打ち明ける。

仲間に休暇を “おすそ分け”できる独自の休暇制度

「共生」に向けた取組として、同社独自の制度休暇「治療支援休暇制度」を設けている。長期療養休暇と年次有給休暇を使い切り、傷病手当もなくなった人が治療しながら働き続けることを支援するため、年度内に最大20日間の有給休暇を取得できる。 さらに、他の社員の消滅する有給休暇日数を上限に、仲間の有給休暇を付与する「おすそ分け休暇(仲間の気持ち)」を追加し、両立支援を後押している。

こうした両立支援の取組の効果として、堀氏は「病気になった社員が会社からどんな支援を受けているのか、周りの社員も見ています。そして、安心していつまでも働ける職場であることを実感してもらえることも大きな波及効果です」と説明する。


社員には人生の中でさまざまなステージがある。結婚、出産、育児、介護、長期治療など、どのステージでもオガワエコノスを辞めることなく働き続けられる制度運用に磨きをかけていく考えだ。

取組事例一覧