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両立支援の取組み事例

産業医は治療しながら働く人の「橋渡し役」。医療機関・患者・職場の理解が進めば、働きながら治療を行うことが当たり前になる産業医は治療しながら働く人の「橋渡し役」。医療機関・患者・職場の理解が進めば、働きながら治療を行うことが当たり前になる

 静岡県富士市に本社を置くジヤトコ株式会社は、日産自動車グループの自動車用自動変速機(AT、CVT)メーカーだ。同社は治療と仕事の両立支援の取り組みとして、社員に対する「職場復帰支援プログラム」を活用している。同社の統括産業医を務める西賢一郎氏は、その背景を次のように振り返る。

以前から整備していた「職場復帰支援プログラム」を両立支援にも活用

 「特別なきっかけがあり、治療と仕事の両立支援に関する取り組みを始めたわけではありません。従来から整備していたメンタル不調者の『職場復帰支援プログラム』を、長期にわたり支援が必要な従業員が出てきた際に応用できるのではないかと検討し、両立支援にも活用しています」(西氏)

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職場復帰支援プログラム
  • ・元々はメンタルヘルス不調による休業者が職場復帰するための仕組みとして構築
  • ・それを長期に病気休業する社員へ運用
  • ・社内規定
  •  ①7日以上傷病で欠勤するときは医師の診断書を提出すること(就業規則)
     ②傷病などで30日以上休業、もしくは職場復帰時に必要がある場合、
      産業医による復職診断を受ける(職場復帰の人事内規)
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     同プログラムを活用した両立支援は、休業開始前に本人もしくは上司経由で「休職〜復職に関する手引き」を渡すところから始まり、職場復帰する時は本人からの上司への連絡もしくは健康サポート室に連絡することから始まる。

     「連絡をもらった時点で、一度本人と職場の上司同席で復帰前に面談を行い、現在の体調の確認はもちろん、今後の治療の流れと、就業の配慮を要するかどうかをヒアリングします」(西氏)

     その後は、必要に応じて産業医から主治医へ情報提供書の発行があり、さらに詳しく聞く場合もあるという。主治医からの職場復帰可能の診断書の提出を受け、勤務について職場の受け入れ態勢が整った時点で、人事担当者も同席し、面談を実施。面談時には、本人が就労するに当たり治療継続での心配や就業に関わる諸制度の利用の有無を確認している。


    従業員が主体的に両立支援を活用できるよう手引きで情報を発信

     「復職を支援する際に課題となったのが、説明(特に人事担当の説明する会社の制度)に抜け漏れが生じることや説明時の保健師の負担が大きくなることでした。そこで、伝えるべき情報を的確に伝えられるよう『休職〜復職に関する手引き』を作成し、健康に関しての相談窓口(連絡先)や、傷病手当金の申請などの制度面の記載の他、復帰時の流れ(フロー)も織り込み、本人が主体的に両立支援を活用できるようにしました」(西氏)

     さらに手引きとは別に、社員が確認できるポータルサイトに掲載している社内報に、健康サポート室からの情報発信記事を掲載したり、管理職教育時に両立支援に対する取り組みを取り上げたりすることで、当該社員を支えることになる職場全体の理解促進を図るとともに、健康サポート室の認知拡大にも努めている。


    乳がん治療を受けた女性のケース

     生産管理(事務)を担当していた40代女性の事例では、乳がんを発症後、本人が両立支援を希望。産業医が主治医と意見交換を行って、人事担当も含めて復職までの計画を練ることとした。また、入院10日間とその後の自宅療養期間については、有給休暇と傷病欠勤制度を利用することに決まった。その後、女性は手術を受けて予定通りに退院し自宅療養に入ったが、療養中、経過観察のために病院で受診したところ、主治医から放射線治療の必要があることが伝えられた。

     「そこで、産業医が本人の回復状況を確認した後、職場・人事担当者にフレックス勤務もしくは時短勤務を利用して放射線外来治療を受ける体制・環境にすることを助言し、結果として時短勤務制度を利用。その後の定期面談でも本人の不安解消や業務遂行上の不都合などを聞きつつ、職場に対してもその都度、改善を図ってもらっています」(西氏)

     両立支援は、なかなか計画通りには進まない。状況の変化に柔軟に対応していくには、患者・医療従事者・職場関係者など、関わる全員が知識を深めていく必要がある。


    両立支援における産業保健スタッフの役割とは

     昨今は多様な働き方が注目されており、両立支援もその一つに位置付けられている。西氏は産業保健の本質的な目的を「全ての職業における労働者の身体的・精神的・社会的な健康状態を、最高度に維持・増進させること」とした上で、両立支援においては、「専門的な知識を持つ産業医や産業保健スタッフなどが橋渡し役となり、主治医(治療面)と本人・職場(仕事面)の情報(知識)の『連携』を図ることが最も大切です。」と語る。

     「自身が病気になったとき、同僚や部下が病気になったときに、自社には両立支援のサポート体制があることを思い出してもらえれば、あとは私たち産業医・産業保健師の出番です。これまで一緒に働いてきた社員がたまたま病気になったことで、職場(会社)のサポートを入れると、働きながら治療を行うことが可能になる。これが“当たり前”と、働く全社員が知っている状態になる環境をつくることをこれからも目指していきます」。

    ©Ministry of Health, Labour and Welfare