Home > 両立支援の取組み事例 > 株式会社上越商会

両立支援の取組み事例

限られた制度を補う手厚い対応力で人事労務担当社員が中心となり両立支援を推進。働きつづけられる職場づくりの実現へ限られた制度を補う手厚い対応力で人事労務担当社員が中心となり両立支援を推進。働きつづけられる職場づくりの実現へ

 新潟県上越市にある株式会社上越商会は、砂利や砕石、生コンクリートの製造販売を柱に事業を展開している。同社は原石の採取場が3か所と、5か所の生コンクリート工場(関連会社を含む)を有している。例えば、46トンダンプカーのような巨大な車両や、様々な特殊車両を扱うため専門性の高い職種が多く、社員の配置転換はとても難しい。また、屋外作業が中心であるため、天候が身体へ与える影響が大きいという特徴がある。そんな同社には260名の従業員がおり、一人ひとりの健康を医療専門職ではない人事労務担当の社員4名と非常勤産業医2名が支えている。

平均年齢50.6歳。両立支援のきっかけは「人手不足」

 上越商会が治療と仕事の両立支援に取組むきっかけは「人手不足」だった。同社取締役総務部長である近藤久雄氏は「近年、若年者の採用は困難ですから中途採用に力を入れています。ここ10年間は中高年の入社が多くなっており、定年後の再雇用者も含めて平均年齢は50.6歳に上昇しています」と、説明する。

 そんな実情を背景に、今いる従業員には健康で長く活躍して欲しい、そんな思いを込めて積極的に両立支援に取組み始めた。また、社長が常日頃から社員に対して「けがなく事故なく、心身ともに健康でいてください」というメッセージを発信していることも取組の後押しとなっている。同社では、この10年間で病気治療を理由に11名の社員から依願退職があったが、現在では7名の方が治療と仕事を両立しながら職場復帰している。

今ある制度と社員同士の連携で、求められる両立支援を実現

 同社には総務部に所属する衛生管理者2名、給与労務担当1名、そして総括の1名の計4名が両立支援を含む、産業保健の施策全般を担っている。医療専門職ではない社員が、離れた現場にいる社員一人ひとりの体調を管理するために、全所属長と密に連携を取っており、異変に気づく端緒となっている(図1参照)。



 「特に本人からの相談では、場所や時間にも配慮し、人事労務担当が自宅に訪問することもあります。この中でも一番大事なことは、普段から人事労務担当がこまめに現場に足を運んでコミュニケーションを取ることです」と、近藤氏は語る。
 同社の現制度では、休職は最長1年6か月。その間に復帰できなければ退職となる。会社には「使用者責任」と「安全配慮義務」があり、休職者復帰の判断が慎重になることはどの企業も同じだ。「制度面では大企業のようにはできませんので、病気の特性に応じて柔軟に対応しているのが現実です」と、近藤氏。同社の復職者支援の流れは(図2)のようになっている。


 「治療と仕事の両立支援を推進できている理由のひとつには、仲間の存在が大きいと考えています。仲間が病気になったらバックアップする風土があります。さらに、職場で両立している仲間を目の当たりにすると、もし自分が病気になっても『辞めなくていいんだ』と実感でき、安心につながっています」(近藤氏)。

 両立支援の取組みはそのまま、介護離職対策や高齢者の災害防止にもつながっている。「キツい仕事もありますが、長く勤められるやさしい職場づくりの実現にもつながると考えています」と、近藤氏は語る。

本人の希望を叶えるために、人事労務の担当者が
主治医との話し合いや復職支援・協議に尽力する

 糖尿病の治療をつづけながら、特殊車両の運転業務を担っていた男性50代の社員が、ある日の朝礼で、視力に違和感があると申し出たことがある。その日から運転業務は止めて整備や清掃の仕事に回っていた。後日、産業医に相談したところ、眼科神経系の受診するように言われ、病院に行くと糖尿病に関連する眼の病気だと診断されたのだ。

 「しばらくして本人の希望もあり運転業務をしていたところ、物損事故にあってしまいました。これは会社の判断が甘かったということになります。しかし本人は運転以外の業務をつづけることに抵抗感を抱いていました。そこで、人事労務担当が本人と病院の許可をもらい、本人同席で主治医と面談をしました。そこでは、本人が今後も運転業務を希望していること、運転業務の実態の説明、回復の見込みを話し合いました」と、振り返る。

 その結果、本人は自宅療養に専念することになった。その後の診察で改善が認められ、業務上の配慮や薬の副作用の影響、日常生活で気をつけることなどを確認して、フルタイムでの職場復帰となった。

 「職場復帰する際、本人にはまず安全衛生教育として病気に向き合うことを学んでもらいます。体調がすぐれないと思ったら無理しないで休むようにすることを確認し、運転技術の見極めを行って、運転業務に復帰しました。眼科の初診から半年後のことでした。現在も定期的に治療を続けながら大型車の運転を行っています、もちろん無事故で」と、近藤氏は微笑む。

 中小企業の砂利採石業や土木系の現場では多くの場合、配置転換できる場所が見当たらないことが共通の課題だという。同社では、柔軟な対応力でひとつずつ解決していく。今後は、上越商会の特長でもある産業医と人事労務担当による手厚い対応を、さらに強化していく構えだ。

©Ministry of Health, Labour and Welfare