厚生労働省

治療と仕事の両立支援ナビ

両立支援の取組事例

大切な人財だからこそ、まず、相談できる環境が大事
「相談してくれてありがとう」

大鵬薬品工業株式会社

人事部 副部長
三田 明

会社名
大鵬薬品工業株式会社
所在地
東京都
事業内容
医薬品製造販売
従業員数
2,416名
産業保健スタッフ
11名
(内訳:産業医7名、産業看護職4名)
※2018年12月31日現在

大鵬薬品工業株式会社は、大塚ホールディングス株式会社の一角を担う主要事業会社。東京本社と全国22支店、研究所2カ所、工場5カ所に2,400名超の社員がおり、画期的な新薬を心待ちにする人びとの勇気となり、力となるために、日々の業務に邁進している。

抗がん剤メーカーとして根付いていた両立支援の風土を強化

半世紀以上に渡り、がん領域に携わっている大鵬薬品。現在の売上の約74%ががん関連製品となっている。 「抗がん剤を製造していることも影響して、がん等の病気に罹患した社員を温かく支援する風土が会社全体に根付いていました。社内で制度化する前から、部門長や課長、人事部などが個別対応を実施していました」と、同社 人事部 副部長の三田 明 氏は語る。

「2013年にはがんなどの患者の増加に伴い、就労支援に一層力を入れるために就業規則を改定するなどの体制を整えました。 2016年には早期発見・予防対策の強化として、がんだけでなく他の慢性疾患にも範囲を広げました。 また、このような制度や取組を社内外に広く知ってもらうためにツールを作成するなど積極的に周知活動を行いました」と、三田氏は同社の両立支援の歴史を振り返る。

同社は『私たちは人びとの健康を高め 満ち足りた笑顔あふれる 社会づくりに貢献します。』という企業理念を掲げている。 この企業理念を実現するためには、まず社員が健康で笑顔でいなければならない。その一環として、がんや慢性疾患に罹患しても離職することなく安心して働き続けられるように職場環境を整えていった。

2017年2月には、小林将之代表取締役社長から『企業理念を実現するために、社員一人一人が心身ともに健康で活き活き自由闊達に働ける職場環境の整備に、組織全体で取り組むことを宣言します。』という健康宣言が発表された。 三田氏は「このような上層部の理解と協力は、両立支援をさらに進めるための強力な後押しとなりました」と語る。

「制度、相談、情報」3つのバランスが大切

「患者就労支援の制度や仕組みは、作って終わりではありません。いかにして使ってもらえるかが大切です。ポイントは、制度、相談、情報の3つのバランスです」と三田氏は説明する。

“制度”の面では、半日単位で取得でき、最高50日まで積立可能な有給休暇制度を設けている他、特徴的な制度として、病気などのやむを得ない理由で退職しても、3年以内に再雇用で復職が可能となる「カムバックパス制度」を創設。 また、転居を伴う異動の可否を双方向で毎年変更できる「コース申請」を可能にして、家族が病気のために転勤できない社員に対応できるようにした。

また、病気の予防と早期発見にも積極的に取り組んでいる。「人間ドックの結果を定期健康診断に代用可能にし、受診促進のために、会社が定める期間内に受診した人間ドックの費用を6万円まで補助したり、半日有給を付与するようにしました。 また、定期健康診断に便潜血検査を取り入れ大腸がんの早期発見につなげています」と三田氏は説明する。

“情報”の面では、『がんに罹患した社員の就労支援ガイド』と題したWEB冊子や社内イントラネット、社内がん情報総合ポータルサイトを作成した。これらは有志の人事部員による就労支援チームによって作成されたもの。

「まず『がんに罹患した社員の就労支援ガイド』。これは治療をしながら就労する本人・上司・同僚のそれぞれの立場から、がんの診断時・休職中・復職時・復職後とそれぞれの段階でどのように対応して、何に注意すべきかをまとめており、 就業規則を補完できるように作成しています。また、家族ががんになった時に利用できる制度等も記載しています」と、三田氏はポイントを解説する。

社内イントラネットについては、『ライフイベント支援ガイド』というカテゴリーの中に、両立支援のコンテンツ『がんやその他の疾患にかかったら編』を用意している。 その狙いは、「多くの人が目にするであろう育児や介護等のコンテンツと一緒に置いておくことで、目に触れる機会を意図的に増やし、いざ病気になった時に『ここにあったな』と思い出してもらえる工夫をしました」と、三田氏は語る。

さらに、広報と人事部が協同で制作した、がんに関する社員向けポータルサイト『C-Guide Portal』を開設。 「このポータルサイトは、大きく分けて『仕事と治療の両立支援』『体験の共有』『予防・早期発見』の3つのコンテンツで構成され、社員の知りたい情報、知っておくべき情報を提供しています。 なかでも、本人や身近な人が病気になった時に直面する様々な体験を共有する『体験の共有』は、社員による治療のリアルへの理解や、 当時者感の醸成を後押しするものだと考えています」という三田氏は、人事部以外の協力者の存在や関連部門との円滑な連携が、治療と仕事の両立支援を進めるためのカギだと強調する。

最後の “相談”では、相談窓口が就労支援を円滑に進めるポイントだと考えており、図のような体制で両立支援にあたっている。


制度、相談、情報の3つのバランス

相談窓口の体制

「相談してくれてありがとう」という言葉が前向きな話し合いを可能にする

両立支援における配慮のポイントは、休職中・休暇中の職場での役割や対応方針の明確化、業務内容・業務量の見直しなど、いくつもあるが、特に三田氏が気をつけていることは、一人ひとり状況が違うことを常に忘れないことだという。 「例えば、病名が同じでも一人ひとりの治療の進み具合は異なりますから、前例や経験に頼って決めつけないように注意していく必要があります」(三田氏)。

その上で、病気に対する理解を深めると共に、職場内ではお互いに支え合う雰囲気づくりが必要だという。三田氏が特に強調することは、“相談してくれてありがとう”という声が聞こえてくる風土だ。 「罹患した社員から相談された上司や同僚は、まず “大丈夫か?” とか “あの業務はどうするのか?”等と、口にしてしまいがちです。本人は大丈夫ではないから会社に相談しているのに“大丈夫です”としか回答できないものです。 そして、“私よりも、仕事の心配?”と不信の念をいだくことになってしまいます。 その代わりに『相談してくれてありがとう』と、上司や同僚、友達、窓口相談者等のすべての人が応えられれば、本人も安心して『何ができるのか、何をしたいのか』を発信できますし、職場ではどういう配慮が必要なのかを話し合うことができます。 職場内でのちょっとした配慮や気遣いで、働きやすい職場になっていくのです」と、語る。

治療しながら安心して働き続けられる職場とは、様々な背景をもつ人が働きやすい職場でもある。そのような職場であれば優秀な人財を確保でき、企業の競争力の強化につながる。大鵬薬品は治療と仕事の両立支援の意義をこのようにとらえている。

最後に三田氏は、人事労務の担当者も一人で悩まないで欲しいと語る。 「私たちも、がん患者の就労支援に関するニュースや他社事例など最新情報や世の中の動きを知るようにしてきました。セミナーや交流会など相談する場はいろいろありますから、決してひとりで悩まないで、社外の活動に参加するなど情報交換することを勧めたいと思います」と締めくくった。

取組事例一覧