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両立支援の取組み事例

誰でも、どこでも働ける工場を目指し両立支援など様々な働き方に対応。キーワードは「簡便化、汎用化、見える化」誰でも、どこでも働ける工場を目指し両立支援など様々な働き方に対応。キーワードは「簡便化、汎用化、見える化」

 株式会社マックスは、1905年(明治38年)小川石鹸製造所として創業した。小学校の手洗い石鹸として広く使われているレモン石鹸は戦前から手掛けており、いまでは、身体にやさしい無添加石鹸や肌にやさしいスキンケア化粧品、入浴剤など様々な商品の企画から自社工場での製造、販売までを行っている。現在、正社員43名、パートスタッフ約50名が働いている。

社長就任の半年後に発覚したがん。その治療が
きっかけとなり、両立支援の重要性を認識

 株式会社マックスの5代目社長に大野 範子氏が就任したのが、2009年4月のこと。その半年後に子宮頸がんが発見された
 「この時は子宮全摘出手術を受けました。治ったつもりでしたが、4か月後の2010年2月に、摘出跡の広範囲でがんが再発し、今度は抗がん剤と放射線治療を受けました」と、大野氏は語る。

 その後の2年間も含めると計4回の転移があり、摘出手術、抗がん剤や放射線治療を実施することになる。
 「最初の転移が見つかった時から、病院での治療に加えて、食事を中心とした体質改善もスタートさせるなど、家族とも一緒に闘病することで治療へのモチベーションが上がりました。その甲斐もあって2013年9月に抗がん剤治療が終了。それ以来、再発はありません」と、大野氏は力強く語る。

 「再発を繰り返していた当時を振り返ると、私自身は憔悴しきっていましたので、周囲の支えの大切さやその効果の大きさを実感しました。この経験はその後の企業活動、人材活用の考え方に大きく影響しています」と、大野氏は振り返り、この体験がきっかけとなって治療と仕事の両立の重要性を考えるようになったという。

誰もが働きやすい環境は、治療と仕事の両立も可能にする

 「私は、手術や放射線治療、抗がん剤治療などいくつもの治療を経験しました。治療方法によって、就業可能な時間や仕事量、タイミングが大きく異なります。近年では、薬剤の進歩や副作用の緩和など、治療方法が進化し、多様化していますので、通院しながら治療を受ける患者さんが増加していますから、益々、治療と仕事の両立が可能になっています」と、説明する一方で、「病状や治療方法などは一人ひとり違うため、両立支援においては、企業側の措置や配慮の検討を行うことが必須となります」と語る。

 では、仕事と治療を両立させていくためにはどうすればよいのか。同社では、4つの対応策を推進・検討している。

1.治療内容等を会社側がしっかりと理解する
 治療内容や経過によっては、配置転換も検討。

2.多能工化の推進
 もともと石鹸の製造は重労働であり、知識や技術の伝承が必要。男性中心の仕事だったものを、機械の導入により、軽量化(脱人力作業)、システム化(人の頭からコンピューターへ)することで性別や知識・経験の有無に関係なく、誰でも働ける環境に。
 同社は石鹸工場、液体工場、粉体工場、加工場などを保有するが、これら軽量化・システム化により、異なる製造ラインの従業員を共有運用化できている。

3.短時間勤務やテレワーク等の制度化
 従業員皆がいつでもどこでも働ける環境や仕組みの整備。

4.インフラの整備
 トイレの増設、オストメイト(人工肛門・人工膀胱保有者の方 )対応のトイレを設置、休憩室の増設などを今後行う予定。

 このうち、同社において中核となる取組は『多能工化の推進』だ。
 大野氏は「治療と仕事の両立支援を特別に掲げなくてもよいのです。両立支援を受ける本人にとっても、周囲の従業員にも『多様な働き方ができることは当たり前なこと』となることが、持続可能な取組につながります。皆が無理なく取組める仕組みを整えていきたいのです」と語る。

働くことの大切さを実感できる企業

 治療と仕事の両立支援において、病気になった本人の現状把握の他、医療機関等との病状確認、治療の計画、どのような業務ならば継続が可能なのか等の情報のやりとりは必要不可欠である。「病気になった本人と、受け入れる側の双方の様々な不安を取り除くためには、病院と企業の連携による『適確な情報共有』が必要です」と、大野氏はその重要性を強調する。(図参照)



 また、両立支援において、企業が進めるべきことは風土づくりだという。
 「病気になった従業員が会社に両立を申し出しやすい風土であることは、両立支援を“特別なこと”ではなく“当たり前のこと”として対応できる企業であることを表しています。さらに、両立支援が必要な社員を仲間として受け入れられる風土を醸成するためには『明日は我が身。助け合いはお互い様』という意識づくりが何よりも大切だと感じています」(大野氏)。

 企業にとって、仕組みや設備・インフラを整えることは、費用も必要で容易なことではない。しかし、大野氏は「大きな病気を経験して “働くことの大切さ”を改めて実感しました。社会と関わる意義、自分自身の存在の再確認、仲間と一緒に働くことの喜びなど、自分に限らず、病気療養を経て職場復帰した人たちの考え方の変化は、必ず今後の企業活動に大きな影響を与えると考えており、そうした方が働きやすい環境になるための投資は大いに意義のあることです」と語る。

 実際に、同社には現在、がん治療と仕事を両立している従業員がいるが、この方がいるグループの生産性が向上したという結果も目の当たりにしているという。
 「病気療養を経て職場復帰した人たちは、今ある命、与えられた環境に感謝して、いまを一生懸命に生きよう、後悔しないように生きたいと思っておられます。この思いによって、仕事に対する考え方、取組み方が変わり、職場の仲間に良い影響を与えてくれています。今後、人生100年時代を迎えて、健康寿命をまっとうするには働くことが必要不可欠です。当社は80歳ぐらいまで生き生きと前向きに働くことができる企業づくりを目指してまいります」と、大野氏は締めくくった。

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