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両立支援の取組み事例

休職社員の完全復帰をしっかりサポートする労務担当者制度を導入休職社員の完全復帰をしっかりサポートする労務担当者制度を導入

 1959年にファインセラミックス・メーカーとして京都で創業した京セラ株式会社は、電子部品や通信機器、太陽電池、半導体部品、自動車部品、医療用製品など幅広い事業を世界各国で展開している、日本を代表する企業の1つである。
 約7万6000人もの従業員が勤務する京セラグループでは、創業当初からの経営理念「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」を全うするため、従業員の健康増進に取り組む「京セラグループ健康経営宣言」を全社に提示している。その京セラが取り組む治療と仕事の両立支援について、京セラ株式会社人事部人事課責任者の溝渕博也氏に話を伺った。

部署ごとの労務担当者が、両立支援に貢献

 京セラの治療と仕事の両立支援では、工場に導入されている労務担当者が重要な役割を果たしている。
 各工場では本来、各社員に対する指導・育成といった労務管理は部署の責任者が担うべきだが、生産活動や開発業務に忙殺されるケースが多く、細やかな配慮が行き届きにくい。そこで、鹿児島県の川内工場から始まり他工場にも順次導入を推進しているのが労務担当者制度である。

 「労務担当者は、復職を前提とする長期休業中の社員と会社を結ぶパイプ役」と溝渕氏がいうように、時には部署責任者の右腕として、時には親身に相談に乗ってくれる友人のような存在として社員の精神的フォローをしている。「病状を把握する、治療中の精神的ケアをする、必要であれば産業医との面談にも立ち会う。会社側ではなく、休業中の個人に寄り添うことで、職場からの疎外感をなくし、スムーズな復職につなげています」。

 労務担当者には、人材育成経験が豊富な年長者・管理者が任命されるケースが多い。そのため、労務担当者制度は、治療と仕事の両立を支援するだけでなく、企業文化の継承にもつながっているという。

独自の休業補償給付制度で社員の療養をタイムリーにサポート

 同社は完全月給制を採用しており、勤続3年以上の社員であれば、月内に欠勤があっても基本的に給与額が下がることはない。しかし、療養中の経過観察期間が長期に及ぶ場合など、有給を含め給与算定期間中の出勤日数が不足し、給与が支払えないケースもある。欠勤理由が労働災害や通勤災害であれば労災保険から休業補償給付金が、私傷病の場合には京セラ健康保険組合から傷病手当金が給付されるが、課題は、給付までに要する期間だった。

 「重篤な病気が判明した社員からは、収入が途絶える不安が聞かれます。病気の発覚は突然なのに、休業補償金の給付までに2カ月もかかるのでは不安を払拭できない。そこで、任意団体である『京セラ懇親会』による休業補償制度が設けられました」(溝渕氏)。

 京セラ懇親会の休業補償制度は、不支給となる給料日に基本給・都市勤務手当(住宅手当)・家族支援手当(扶養手当)の80%を懇親会から対象者に支払い、健康保険組合から後日支給される傷病手当金が懇親会に入金される制度。傷病手当金のほうが高い場合は差額を後日追加支給し、安い場合には差額を見舞金として処理するため、一旦支給された額は確実に守られる。


 この制度の運用の財源は、基本給の0.02%相当額のうち50%は組合費を通じて本人が、50%は会社が負担している。例えば基本給30万円の社員は、毎月30円を負担している計算だ。溝渕氏はこの制度のポイントを「社員の負担をいかに軽くするか」であると力説する。「治療に専念していただくためには、負担のない制度であることが重要。ですから、特別な申請手続きも必要なく、給付日も給与日と同日です」。

 さらに、健康保険組合からの傷病手当金の支給期間が終了しても、休業期間中は継続的に補償してくれるという。「現在100人ほどの対象者がいます。タイムリーな給付が社員の大きな支えになっていますから、より円滑な運用に向けて、今後も、実務を担当している人事部において、業務フローの改善を進めていきます」。

休職者と職場とのつながりを継続させ、段階的に無理なく復職

 長期休業後の復職の際には、想像もつかないストレスや不安が伴う。それは、業務をこなせるかという不安はもちろん、通勤に対し身体的・精神的に順応できるか、業務に対する集中力を保持できるかといった不安もあるだろう。京セラは、それらを訓練し、復職可否を判断する仕組みも導入している。

 その1つである「通勤訓練」は、実際の通勤経路を辿って出社し、上司に一声掛けて帰る訓練。加えて、「慣らし勤務制度」もある。
 「慣らし勤務制度は、休職中の本人の希望に応じて適用します。病気の治癒状況に応じて徐々に仕事に慣れていただくことを目的に、半日を上限に勤務していただく。あくまでも復職に向けた準備期間ですから、フルタイムでの復職の意思がある、勤務に耐えられる生活リズムを保てる、安全に通勤できる程度まで快復しているなど、面談を通じた生活実態確認や、訓練を通じた評価に基づく条件があります。そして、通常1カ月程度の経過観察を経て、復職可能かを判定しています」(溝渕氏)。

 また同社では、体調の異変をいち早く察知し、早期治療につながるよう定期面談制度を導入している。個人の状態により面談サイクルは異なるが、休職を繰り返さざるを得ないようなケースでは、産業医や産業保健スタッフが頻繁に面談を行い、もし対象者が入院中であれば、病院にも赴く。
 「休職中の方に対し『休職制度や休業補償制度があるから安心して治療に専念してくださいね』と伝え続けることも重要ですから、足を運ぶことに意味があるのです」(溝渕氏)。

 京セラでは、社内イントラネット上に人事労務制度の内容を公開しており、社員はいつでも詳細を確認することができる。そこに掲載されている同社の多角的支援制度は、治療中の金銭的サポートだけでなく、復職に向けた精神的ケアや、復職後の治療継続のしやすさにも注力していることが特徴。一歩一歩進むこと、少しずつ慣れていくことを推奨する制度の安心感は、治療を続けている社員の職場復帰に向けたモチベーション向上にもつながっている。
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