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両立支援の取り組み事例

予防、治療、共生で支援を実施、組織力・競争力の向上につながっています予防、治療、共生で支援を実施、組織力・競争力の向上につながっています

 伊藤忠商事の働き方改革における積極的な取り組みは広く知られている。

 2013年10月に朝型勤務制度を導入。残業ありきの働き方の意識を改革し、夜型の残業体質から健康につながる朝型勤務を推し進めた。2016年6月には伊藤忠健康憲章を制定して、かけがえのない経営資源である社員に対して、会社は「社員一人ひとりが自らの『健康力』に責任を持ち、その維持・増進を図るための取組みを積極的に支援」するなど、健康を強力にサポートする姿勢を明確にした。

 この先進的な取り組みは多方面から高い評価を得た。ビジネス誌の「社員が幸せな企業ランキング」で伊藤忠商事が全体の2位に選ばれたこともあった。そんなときにある出来事が起こったという。

 代表取締役 専務執行役員 CAOである小林文彦氏は、次のように振り返る。
 「長い間、がんの闘病生活を送っていた社員がいました。その社員は先輩、同僚、後輩から受けているサポートや会社の支援に深く感謝していましたが、岡藤社長宛に一通のメールを送ったのです。

 『私は会社や仲間にどれだけ感謝しても感謝しきれません。私にとって伊藤忠商事は2位ではなくて1位の会社です!』という内容でした。社長はとても心を動かされました。翌月、残念ながらその社員は亡くなってしまいました。墓前で社長は、その社員が言ってくれたように自分が必ず日本一幸せな会社にしてみせると誓いました」。

 その後、岡藤社長は全社員宛てに『がんに負けるな』というタイトルのメールを送った。小林氏は「当社が取り組むがんとの両立支援は、このときの社長の誓いを具現化した施策です」と説明する。

 がんとの両立支援は「社員をがんにさせない。がんになっても絶望させない、辞めさせない。皆で支える」というミッションのもと、次のような両立支援体制方針が定められている。

 ◎安心して相談・情報共有できる環境整備
 ◎予防・早期発見・治療をサポートする体制強化
 ◎治療をしながら働き続け、活躍できる社内体制・制度の整備


 「当事者の孤独や不安が軽減され、居場所があるという安心感が生まれます。また、皆の理解のもとに組織全体でサポートする精神と体制が生まれます。これにより組織力が強化され、企業競争力の向上につながります。これが企業の視点でみたときにとても重要なことでした」と、小林氏はがんとの両立支援の取り組みがもたらしたものを説明する。

 がんとの両立支援策は、予防、治療、共生の3つの観点で実施されている。
 「予防」とは、国立がん研究センターと提携し、がん特化健診を義務付けて早期発見率を向上させる取り組みだ。もし陽性反応が出たときには精密検査を実施し、専門医による最先端の「治療」が受けられるように会社が支援する。そして、両立支援コーディネーターに相談できる窓口を設置したり、両立支援策を周知するためのハンドブックを作成、万が一亡くなった場合に残された子女が大学院卒業するまでの教育費補助を公立水準から私立水準に拡充、子女及び配偶者への就労支援など「共生」も積極的に展開した。
 また、がんの発症がわかったら、まず本人の意思を尊重して情報共有の範囲を決め、両立支援プランを作成していく。

 このような取り組みは、全社員から共感を得られていると小林氏は語る。
 「2人に1人が、がんになる時代です。とても身近な問題ですから、当社の取り組みは意義があると理解されています。社内だけでなく、激励の声が全国から寄せられました。ここまでの反響は想定外でしたが、がんとの両立支援の関心度の高さを強く感じました」。

 伊藤忠商事が大手総合商社の中で従業員数が最少でありながら、最終利益でトップになったのは2015年度のこと。勢いはそのままに変化の激しい時代の中でも高い成果を挙げ続けている。

 働き方改革には、長時間労働の防止や柔軟な働き方などいくつもの取り組みが存在するが、小林氏は「何をやるかよりも、企業が何を実現したいかが大事だと考えています」と語る。その言葉の通りに、伊藤忠商事が働き方改革で実現したいことは次のように明文化されている。
 「他商社比、圧倒的に少ない人数でも社員一人ひとりがお客様目線、適度な緊張感を失わず、高いモチベーションのもと、大きな成果を挙げてほしい。社員には健康で幸せであってほしい」。

 小林氏は 「やはり、改革を打ったら業績を上げなければなりません。もしくは、改革を打つのであれば、業績をあげるのが経営者の使命ではないでしょうか。もし結果がでなければ株主などすべてのステークホルダーから評価されません。この点はとても重要なことです」と語った。働き方改革・治療と仕事の両立支援と業績の間には無視できない関係性があるようだ。

2017年12月18日に開催されたシンポジウム「働き方改革NEXT 治療と仕事の両立へ」で、小林氏は同社で実施した「闘病しながら働く社員へのアンケート」の結果を紹介。治療と仕事の両立している社員の実際の声に、多くの関係者が注目していた。(日経チャンネル映像はこちら


  • ■□ アンケート結果 □■
  • 職場での病状共有範囲
     職場内共有済み:約25%
     限定共有   :約65%
  • 特に多かった回答

    [仕事との両立における悩み]

    • 時間的に治療をしながら就労すること
    • 体力的に勤務時間・通勤時間の負担が大きいこと
    • 再発への不安
    • 周囲へ迷惑かけるかもしれない

    [心の支えになっているのは何か?]

    • 家族の存在、医療スタッフの支え
    • 仕事のやりがい
    • 職場で必要とされること
    • 社会や人とのつながり

    [会社に望むこと]

    • フレキシブルな働き方によるキャリアの継続
    • 仕事と両立していくための相談窓口、サポート体制
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