厚生労働省

治療と仕事の両立支援ナビ

両立支援の取組事例

全社員が生き生きと働くことができる職場環境を実現するとともに、
健康に対する意識醸成を通じて健全な経営を推進

株式会社大塚製薬工場

大塚製薬診療所 保健師 森江 佳奈氏
人事部 人事労務・安全衛生担当 仲 さおり氏

会社名
株式会社大塚製薬工場
所在地
徳島県鳴門市
事業内容
臨床栄養製品を中心とした医薬品、医療機器、機能性食品等の製造、販売および輸出入
設立
1969年10月
従業員数
2,263名(2020年12月31日現在)
平均年齢
40歳/男女比 男性8.2:女性1.8
産業保健スタッフ
21名

2021年9月に創立100周年を迎えた大塚グループ、そしてその発祥会社である大塚製薬工場。大塚グループの企業理念“Otsuka-people creating new products for better health worldwide” (世界の人々の健康に貢献する革新的な製品を創造する)ならびに 大塚製薬工場の経営ビジョン“The Best Partner in Clinical Nutrition” (臨床栄養領域における患者さんや医療従事者のベストパートナーを目指す)の実現には、 社員一人一人の健康は欠かせない要素と考え、 社員とその家族の健康維持・増進に向けた取組を実践することを宣言しています。

従業員の両立支援に取り組む基本的な考え方や基本的な方針を示したものはありますか?

「がん」などの病気と診断された場合、「治療をしながら仕事を続けると、職場に迷惑をかけてしまうかもしれない」と、離職を考える方も少なくありません。社員が健康問題によりやむを得ず一時的な休業に至る場合、円滑に職場復帰いただくためにも、治療継続を阻害せず、また可能な限り社員の状況に応じたより適切な労働環境の整備が必要になります。そのためにも治療の開始から通常業務への復帰までの流れをあらかじめ明確にしておく必要があると考えたためです。従来から運用しているメンタルヘルス不調者のための「職場復帰支援プログラム」を他の疾病にも活用し、本人の理解と同意の下、職場や医療機関等の関係者が連携を行い、心身等の健康と安全を確保しつつ、安心して働くことのできる環境づくりを支援したいと考えています。

両立支援を行うための仕組みや支援者・支援制度をお聞かせください。

当社の健康管理体制は、本社を中心に各工場・事業所にも担当者を配置し、人事部長が安全衛生統括責任者を、人事部が安全衛生事務局を担っています。各工場には総括安全衛生管理者を置き、安全管理者と衛生管理者も配置しています。加えて50名以上の営業所には産業医を配置し、毎月1回以上定期的に衛生委員会を実施しています。また、社内相談室を設置し、相談内容については仕事や職場環境の悩み、病気治療、復帰相談など多岐にわたります。また必要に応じて本人の理解と同意の下、上司、産業保健スタッフおよび、医療機関等、各関係機関と連携を図りながら支援を行っています。
制度面では、2021年から年間5日の範囲内で時間単位の年次有給休暇の取得が可能に、また最高50日まで積立可能な有給休暇制度を設けています。在宅勤務制度に加え、2019年からは条件さえあえば、やむを得ない理由により退職しても、3年以内に再び就業ができる状態になった時点で復職できる「再雇用制度」を創設しています。また、家族の病気や転勤できない事情の場合、グループ会社間の異動を検討できるようグループ協定についても整えています。



実際に両立支援された具体的事例はありますか?

勤続年数39年のベテラン社員が人間ドック受診時に大腸がんの診断を受けた事例があります。入院、手術、その後の検査により肝臓にも転移が確認され、抗がん治療が開始されました。退院後は積立有給休暇および年次有給休暇制度を利用し、自宅療養を行いました。
療養中の社員からの要望やサポートは上司を介して行い、社内制度の利用方法について、また医療機関に確認が必要な内容などは両立支援担当者との相談を重ね進めました。また治療期間の長期化、症状の改善状況、治療費について、家族からのご相談にも対応を行い、治療開始から7か月後、がんの転移は消滅している事を確認し、従来の職場に復帰を果たしました。
復帰にあたっては、職場復帰直後一時的に体調を崩すことがあったものの産業医からの定期的な助言を受け、所属長を通じて必要なサポートを行うことにより経過は良好であり、2年後には無事定年退職を迎えました。
抗がん治療の副作用や長期化する療養生活についての不安、苦しいお気持ちに対し、上司と共に寄り添えたことがよかったと感じています。

社外資源は活用されていますか?

産業保健総合支援センターのさまざまな研修へ参加し、他社の担当者および、医療機関との定期的な情報共有の場として利用しています。 2017年より大塚グループ長期収入サポート制度を導入し、社員が万が一傷病により長期間働けなくなってしまった場合に、経済的にも安心して療養いただけるよう環境整備をしています。

今後の展望・課題をお聞かせください。

治療と仕事の両立支援を行うことは、がんなどをはじめとする病気の治療を行いながら働く社員のみならず、ほかの社員についても安心感やモチベーションの向上にもつながります。社員一人ひとりが自分らしく働ける職場環境づくりにつなげるためにも、取組の更なる拡充を図ります。

取組事例一覧