厚生労働省

治療と仕事の両立支援ナビ

両立支援の取組事例

具体例等を記載した「仕事と治療の両立支援ガイドブック」で社員を支援

三井化学株式会社

左上:本社健康管理室 産業医 岡崎浩子氏
右上:市原工場健康管理室長 産業医 村田陽稔氏
右下:本社健康管理室長 統括産業医 土肥誠太郎氏
左下:研究開発企画管理部 健康管理室 保健師 楠本真理氏

会社名
三井化学株式会社
所在地
東京都港区
事業内容
製造業(化学)
設立
1997年10月(会社設立年月)
従業員数
約7,500名(2020年度末時点 7,336名、2021.9月時点 7,434名)
平均年齢
42.2歳/男性9:女性1
産業保健スタッフ
約50名

1997年10月、三井石油化学工業と三井東圧化学が合併し三井化学が誕生しました。三井化学は「化学」という技術を使って様々な「素材」を創り出し、世界中、社会の様々な課題にソリューションを提供しています。社内には社員である産業保健スタッフが常駐しており、いつでも両立支援の相談が可能です。

何がきっかけで治療と仕事の両立支援に取り組まれたのでしょうか?

仕事と治療の両立支援は、意識せずとも以前から取り組んでいました。部門毎に案内はしていたものの、両立支援の視点から社員に分かりやすくまとめている他社の事例を知ったことがガイドブック作成のきっかけとなりました。

両立支援に取り組む基本的な考え方や基本的な方針を示したものはありますか?

社員の健康増進を推進することは社員とそのご家族の幸福につながり、退職後を含めて社員が元気に地域社会で活動することは企業の社会的責任であると考えています。両立支援もその一環であり、特別なものとの認識はありません。
◆レスポンシブル・ケア基本方針
「従業員の心と身体の健康増進に積極的に取り組みます。」
◆労働衛生規則
『当社は、「社員の健康は、会社の健康に直結する」を基本理念として、職業性疾病を予防し、適正な職場環境の形成を促進するとともに、社員の自主的な健康の確保を支援する。会社及び社員は、労働衛生に関する法令及び社則を遵守するとともに、社員は自らの健康の確保に努めなければならない。』
◆三井化学グループ行動指針
「健康増進と活気のある職場づくりを心がけます。」

具体的な両立支援の仕組みや支援制度をお聞かせください。

内部に社員である産業保健スタッフが常駐しておりいつでも相談できます。就業上の配慮検討(産業医意見書含む)、両立しやすい休暇・勤務制度の整備(半日から取得可能な特別休暇、テレワーク取得回数の上限を撤廃)、休職・復職についての管理者向けの詳細なフローや社員向けの「仕事と治療の両立支援ガイドブック」の周知、リハビリ試験出社制度、病気欠勤・休職者への補助(傷病手当金手続き案内、共済会補助申請)対応、健康情報取扱細則を定め健康情報を保護、人事と健康管理室で休職・復職の対応をフォローするなど様々な支援を行っています。

実際に両立支援された具体的事例はありますか?

◆がん検診の充実
10年以上前から、がん検診を受けやすいように総合健診(定期健康診断に特殊健診、がん検診を融合)を実施しています。(健診:ほぼ100%、肺がん検診:ほぼ100%、大腸がん検診:85%、胃がん検診:60%以上、腹部超音波検診:70%以上、前立腺がん検診:90%以上、乳がん検診・子宮頚がん検診:50%以上)
がん検診を含めた健診結果は健康管理室で把握し、精密検査が必要とされる場合は、必要な検査をきちんと受けるよう状態を説明し、専門医への積極的な受診を促しています。また、精密検査結果についても、本人もしくは紹介状の返書にて報告を受けています。2020年度は、がん発見の60%程度が検診発見で、75%は根治可能な状態で発見されました。
◆実例
手術前から、産業医が社員から病状や術式等の情報を把握しているケースがほとんどであるため、入院中に確認しておいてほしい情報や休みの取り方、健康管理室に連絡するタイミング等は、お伝えします。治療状況(退院後の具体的な治療スケジュールや主治医の意見も含む)や体調、本人の勤務希望について、産業医が確認した上で、本人・上司の3者で相談し、外来での抗がん剤・放射線治療中や透析日等で、フレックス制度や半日の特別休暇等を使用して、出社やテレワークで勤務している社員が複数います。

また「仕事と治療の両立支援ガイドブック」を発行し周知しており、ガイドブックを見て、本人が主治医と治療の計画を立てたり、上司が必要な手続きを理解するのに役立てられています。

その他特記事項(研修等による意識啓発・労使の協力等)がございましたらお聞かせください。

◆社員に対して、健康への意識啓発を目的とした講話等を開催しています。
2018年度から本社をはじめいくつかの事業所でNPO法人5yearsの大久保氏を迎え「がんと就労」をテーマにした講演会を開催しました。また女性社員に対する「健康とキャリア」をテーマにした勉強会を毎年開催し、これまでに婦人科専門医を講師に迎え、女性特有のがん検診(子宮がん、子宮頸がん等)の重要性について学習しました。
◆がんアライ部様からご紹介頂き、中京テレビの“恩田千佐子と「ススメ」プロジェクト「一歩先へススメ」”の取材を受け、弊社の現状や「仕事と治療の両立支援ガイドブック」について紹介しました。
◆2020年6月に、中京テレビ放送経営企画局コーポレートコミュニケーション部副部長、乳がん啓発「ススメ」プロジェクトリーダーの安部まみこ氏を招いた「乳がん」をテーマにした社内講演会を実施しました。乳がん検査の種類やセルフチェックの方法、職場でのサポートについて学びました。中京テレビキャスターの乳がん罹患を事例に具体的な話をお聞きし、当社社員への検診やがん治療への理解を促しました。オンラインで実施したため、全国の事業所から多数の参加者がありました。
◆事業所では、がん検診受診の勧奨のための職場での健康教育を実施しています。
◆個別事例でも休みが取れることや、体調がよければ治療しながら就労することは可能であることを伝えています。

今後の展望・課題をお聞かせください。

作成した両立支援ガイドブックの浸透がまだまだなので、さらなる周知をおこなっていきます。また柔軟な勤務制度を活用しにくい人や交替勤務者等への対応、がん検診を含め要精査項目の精査率の向上を目指しています。

取組事例一覧