厚生労働省

治療と仕事の両立支援ナビ

両立支援の取組事例

経営者の熱い想いで福利厚生の見直しや制度を改正し、様々な両立支援の取り組みで従業員の確保と技術伝承を支援

日化工業株式会社

総務課 係長 森田 由紀子氏

会社名
日化工業株式会社
所在地
滋賀県湖南市岩根字南山田1622-5
事業内容
金属製品製造業
設立
1970年1月
従業員数
21名(2022年11月現在)
平均年齢
43歳 /男女比 男性9:女性1
産業保健スタッフ
3名

1970年1月に創業。品質目標は「安全・安心・品質 そして即納体制の為に日々努力」。お客様からの製品への信頼はもちろんのこと、会社から従業員へ、従業員から会社へと双方が信頼しあえる関係を大事にしています。両立支援においても「いくつになっても働ける環境づくり」といった従業員を大切にする想いから様々な制度を導入しています。

治療と仕事の両立支援に取り組んだきっかけをお聞かせください。

人材確保は永年の問題で、求人募集をしても応募者が少なく、会社が存続するためには従業員の確保と技術伝承が課題でありました。「健康で永く働いてもらいたい」「退職者を減らしたい」といったことから福利厚生を見直し、制度改正を進めてきました。2020年頃から産業保健総合支援センターの指導を受ける中で「両立支援」について教えていただき、すでに実施している制度が両立支援の取組であったと気づきました。
制度の見直しは経営者(社長)の熱い想いがあり、「会社は社員の為に存在している」「会社の存在目的は社員の幸福の達成と増進」「社員の幸福を通じての社会貢献」「いくつになっても働ける環境づくり」といった従業員を大切にする想いから様々な制度を導入しました。

貴事業場において、従業員の両立支援に取り組む基本的な考え方や基本的な方針を示したものがあればお聞かせください。

弊社の品質目標は「安全・安心・品質 そして即納体制の為に日々努力」です。この安全・安心・品質は製品やお客様に対してだけではなく、従業員に対して「安全な職場」「安心して働ける会社」「仕事内容の品質向上(やりがい)」という面もあります。そして「信頼」を大事にしています。これはお客様からの製品への信頼はもちろんですが、会社から従業員へ、従業員から会社へと双方が信頼しあえる関係を大事にしています。

両立支援を行うための仕組みや支援者・支援制度をお聞かせください。

〈相談窓口〉
工場長と安全委員1名(男性)・衛生委員1名(女性)の3名が窓口となり、窓口設置を労働者を集めて説明しました。安全委員や衛生委員は任命前に講習会を受講し、知識を積んでから任命しています。

〈休暇制度〉
休暇制度は半日有給制度、時効となった有給を積み立てて両立支援のために使用することができるワークライフバランス(失効有給積立制度)があります。また、感染症に罹患した場合に社内で感染拡大しない為に療養期間だけでなく、治った後2日余分に取得するように特別休暇制度を設けています。

〈勤務制度〉
治療に必要な時間を設けるため、臨機応変に勤務時間の短縮に応じています。また、体調をみながら時間外労働の制限等を行っています。

〈生活の補償〉
傷害保険、所得補償保険に加入しています。

〈インフルエンザ予防接種の補助〉
従業員と同居家族分を補助しています。

〈がん検診・人間ドックの費用補助〉
市区町村実施のがん健診の費用補助、人間ドック(従業員と配偶者)費用の50%を補助しています。

〈個人情報の保護〉
人事部門の係長のみが健康診断情報やプライベートの内容を取り扱っており、産業保健総合支援センターや医療機関などへ相談する際は労働者の同意を得ています。

貴事業場の仕事と治療の両立支援の具体的事例(実例・実績)をお聞かせください。

①医療との連携:
通院を継続しない従業員(保健指導を受けても通院せず、放置する従業員)には会社が診察代を負担(検査結果を会社へ提出)しています。実績としては肝機能障害と診断された従業員が投薬治療を継続し正常値にまで数値が戻りました。
②健診結果からの対応:
健診で数値に異常ありと結果が出た従業員ですが、面談を行い食事の改善と作業手順の見直しを実施した結果、数値が改善し正常値になりました。
③保健指導の実施:
産業保健総合支援センターの保健師による保健指導と協会けんぽの保健指導を取り入れています。相談窓口担当者だけでは気づかないこともあり、保健師による保健指導は的確なアドバイスが役立っています。
診断書を提出した従業員には勤務情報提供書、主治医意見書を活用して情報共有を図り、業務内容の見直し、配置転換や治療を継続しやすい環境づくりに役立てています。

社外資源の活用状況(産業保健総合支援センターやキャリアコンサルタントの活用、GLTD導入等)についてお聞かせください。

①産業保健総合支援センター:
産業医による健康診断後の意見聴取・保健指導の実施・社内研修の実施・社外研修の実施をしています。また産業保健総合支援センターの産業保健専門職による個別訪問支援を毎年利用して、健康確保を図っています。

②コンサルタントの活用:
社内研修を実施しています。

③GLTD制度(所得補償・傷害保険の加入):
正社員は所得補償保険、全従業員は傷害保険(24時間)に加入。2020年、脚のケガで手術・入院した社員には協会けんぽの傷病手当金の他に所得補償を適用しました。また、2020年自宅で脚立から転落、脚を負傷したパート従業員には傷害保険を適用しました。

その他特記事項(研修等による意識啓発・労使の協力等)がございましたらお聞かせください。

①社内研修の実施:
産業保健総合支援センター(産業保健専門職)が事業所での研修を実施。将来の自分が健康である為に気をつけることや病気になった時に相談する窓口があることを学びました。他にも社内講師による食事指導受講後には糖分を気にするようになり、会社の自動販売機でコーヒーのブラックが毎回完売するようになりました。また、バランスよく食べるなど食事内容への意識付けができました。社内研修時には必ず意見交換の場を設定しコミュニケーションを取りやすい環境づくりをしています。

②社員の意見聴取:
定期的に社長から直接社員とヒアリングする機会やアンケートを実施することで、社員の要望を踏まえて新しい制度を検討しています。事例としてはアンケートを実施したところ、運動補助器具の購入要望があり、ステップ台・腹筋マシーン・体組成計など室内で運動できる補助器具を配布しました。

③多能工への取り組み:
今までは単能工(技術者)を育てる環境でしたが、数年前から多能工化に力を入れています。即納体制に対応するため、業務負荷の低減といったことが大きな目的ですが、お互いの仕事を思いやり、お互いに休暇が取りやすい職場にすることも目標としています。

④従業員への周知:
ワークライフバランスについて、社長、人事部門の担当者とも理解があり、普段から社員からの家庭のこと、子育てのことなども含めた相談に対応しており、内容に応じて利用可能な制度を案内しています。

今後の展望・課題をお聞かせください。

今後の展望は「病気にならない」のではなく病気になってもみんなで助け合う環境づくり、また社員が「幸せ」をたくさん感じる企業、社員が夢や自分のやりたい事を実現出来る企業になることです。今後の課題は、研修をしただけでは浸透しないので新しい情報を取り入れながら繰り返し伝えていくことです。

取組事例一覧