厚生労働省

治療と仕事の両立支援ナビ

両立支援の取組事例

「人は宝なり。」疾病になっても安心して働ける職場づくりに全力で取り組む

社会福祉法人 福角会

本部事務局 課長補佐 長野 恵理香 氏

会社名
社会福祉法人 福角会
所在地
愛媛県松山市福角町甲1829番地
事業内容
社会福祉事業
設立
昭和47年5月
従業員数
360名(令和4年11月現在)
平均年齢
46.2歳 /男女比 男性3:女性7
産業保健スタッフ
5名(産業医、労務課職員、顧問社労士)

昭和47年5月、地域で障がいをもつ子どもと障がいをもたない子どもが一緒に生活する、そのような夢をもって福角会はスタートしました。福角会は、男女ともに全職員がその能力を発揮し、活躍できる雇用環境の整備を行うため、行動計画を策定し、病気を抱える労働者が適切な治療を受けながら安心して生き生きと働き続けられる社会を目指すため、治療と仕事の両立企業宣言を行いました。

治療と仕事の両立支援に取り組んだきっかけをお聞かせください。

平成30年2月に職員が突然脳梗塞で倒れました。4か月間入院生活をして、今は元気に勤務して活躍をしておりますが、当時、職場復帰に向けて一緒に取り組んだときに、制度として休むか働くかの2者選択しかありませんでした。かなりの期間を入院生活や自宅療養をして、職場復帰を果たそうと考えた時には気持ちや不安はかなりのものがあったと聞きました。その時は制度化されていませんでしたが、短時間勤務であったり試し出勤などを行い、職場復帰を果たせました。そのことから、平成30年度中に規則改正や職場復帰プログラム等を整え、平成31年4月に企業宣言を出し今に至っています。

貴事業場において、従業員の両立支援に取り組む基本的な考え方や基本的な方針を示したものがあればお聞かせください。

従業者の治療と仕事の両立が図られ、柔軟な働き方に対する取組が進むよう従業者へ制度の意義や理解の説明を行っています。更に両立支援が浸透し利用の促進を図っていくためには、お互いの理解と協力という職場内の風土づくりやコミュニケーションづくりが必要です。「人は宝なり」。がんなどの疾病になっても安心して働けるよう全力で取り組んでまいります。
この方針については、愛媛労働局の取組の「愛媛”治療+仕事=両立”企業宣言」として表明しています。

両立支援を行うための仕組みや支援者・支援制度をお聞かせください。

〈相談窓口等〉
・職員が安心して相談・申出が行えるよう相談窓口の設置および周知
・いつでもどこでも相談したいときに利用できる両立支援ホットLINEの開設
以上のような窓口・ホットLINEによって不安や悩みなど、労務課の職員が相談に応じています。
・各事業所に両立支援コーディネーターを配置するため、基礎研修の受講を実施しています。

〈休暇制度、勤務制度〉
・傷病による休職制度
・疾病または傷病によりフルタイム勤務が困難な場合に短時間従業者として勤務することができる短時間勤務制度
・復職可能と考えられる程度に回復した職員が一定期間継続して試験的に出勤することができる試し出勤制度
・通院等治療のために始業・就業時刻を2時間の範囲内で繰上げまたは繰下げることができる制度
以上の休暇制度、勤務制度によって、個々の病状や治療の状況に合わせて勤務時間等、柔軟に対応しています。

〈費用助成等〉
・ストレスチェックを全員実施
・生活習慣病検診費用助成
・インフルエンザ予防接種費用助成
・両立支援プログラムに基づく職場復帰支援(メンタルヘルス・慢性疾患)
・サークル活動の助成
以上の取組によって職員の心身の健康をサポートしています。

〈個人情報の保護〉
健康情報等の取扱規程を作成し、本規程内において、業務上知り得た従業者の健康情報等の適切な取扱いについて整備しています。

貴事業場の仕事と治療の両立支援の具体的事例(実例・実績)をお聞かせください。

疾病により入院(手術)が必要となった職員が3ヵ月程度休職することとなりました。手術までの間は就業可能とされていたものの体力的な不安があったため、手術まで体調を悪化させることなく安全に勤務できるよう、事業所として配慮すべき点や留意事項について主治医から意見書を収集しました。2か月間本人の体に負担が掛からないようエレベーターの使用や駐車場移動への配慮、坂道歩行や10キロ以上の荷物の運搬は避けるなどの措置を実施しました。その後、無事手術も終了し、現在も同事業所にて就業されています。

また、これまで両立支援制度を導入するにあたり、様々なケースを想定して柔軟に対応できるよう整えてまいりましたが、十分な体制が整っているように見えても実際に療養が開始されると、自身の病気に加えて治療費のことや給与、国の制度や有給休暇のことなど考えることや心配することがかなりあるといいます。福角会ではコンプライアンス委員会を組織して、両立支援に関する環境整備についての取組に対する検討を行っております。この委員会において、法人労務課とつながり、何でも確認したり問い合わせができる「両立支援ホットLINE」を開設しました。まだまだ周知不足ですが拡げていきたいと思います。

その他特記事項(研修等による意識啓発・労使の協力等)がございましたらお聞かせください。

法人のホームページ内に企業宣言書と両立支援に係る手順や留意事項を記載した両立支援プログラムを掲載し、定期的に社内報にて全職員へ周知しています。
また、法人内でコンプライアンス委員会を設置しており、職場環境の整備等について検討を行っています。
制度の醸成においては、幹部職員等の上層部の理解と周囲の職員の協力が必要です。この理解と協力なくしては、病気になり治療が必要となったときに本人たちが安心して治療を行い、復帰を果たすことはできません。このことから社内のコミュニケーションの活性化と職員間の信頼関係を構築するため、法人内サークルを立ち上げ活動費用の助成を行ったり、年10回程度ある法人内研修において、コミュニケーション研修や一般事業主行動計画研修等を実施しています。病にかかることは決して特別なことではなく、誰にでも起こりうることであるということを理解し、全員が協力してサポートすることが必要です。

今後の展望・課題をお聞かせください。

まだまだ制度への理解不足があり、病気になるまでは他人ごとで気づかないことが多いです。そのあたりを不安をあおるのではなく、制度としてしっかりとしたサポートがあることを職員へ周知することが必要であると思います。それに加えて、病気になったときに、本人が最初に相談するのは、所属事業所の上司や職員であることから、その相談にあたる職員の対応が重要になると考えます。今後は相談対応者としての十分な対応ができるよう、育成研修を実施する予定です。更には、やはり病気を経験した職員にしかわからないこと、療養当時の不安や心配事を確認して、次の新しい仕組みとして取り入れることができるようにしたいと思います。

取組事例一覧