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両立支援シンポジウム/セミナー

岐阜 治療と仕事の両立支援セミナー

<開催日時>
2019年10月11日(金)13:30 - 15:50
<場所>
岐阜グランドホテル
<主催>
厚生労働省/岐阜労働局
プログラム
時間
講義内容
13:30 〜 13:35
開会挨拶
岐阜労働局長 畑俊一
13:35 〜 14:20
基調講演
ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ 統括産業医 岡原伸太郎氏
14:20 〜 14:30
休憩
14:30 〜 14:50
企業取組事例紹介①
岐阜殖産株式会社 管理部総務課長 坪井淳子氏
14:50 〜 15:10
企業取組事例紹介②
大豊工業株式会社 岐阜工場 健康管理室 保健師 南屋敷美幸氏
15:10 〜 15:30
医療機関取組事例紹介
岐阜大学医学部附属病院 医療連携センター 医療ソーシャルワーカー 山本恭孝氏
15:30 〜 15:40
産業保健総合支援センターからのご案内
独立行政法人 労働者健康安全機構
岐阜産業保健総合支援センター副所長 片桐正文氏
15:40 〜 15:50
総括
ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ 統括産業医 岡原伸太郎氏

基調講演

「治療と仕事の両立支援の進め方」

ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ Global Health Services/健康管理室
統括産業医 岡原伸太郎氏

 突然大きな怪我や疾病に見舞われると、十分な情報が得られないまま仕事や家庭のことなど不安ばかりが頭をよぎり、どうしてよいのか分からずに仕事を辞めてしまうケースは少なくない。岡原氏は「一人で悩むのではなく、『まずは相談』を企業の基本的な文化にしてほしい」と呼び掛ける。その上で「従業員、会社、主治医や医療機関という3者間の情報共有が必須」と当事者である従業員を孤立させない体制の重要さを説く。さらに、情報共有において「当事者と関係者の要望(Want)とすべきこと(Should)、そして今できること(Can)をすり合わせ、互いに納得の上で進めることが大切」とした。また最後に、「制度を整えることはもちろん必要です。ただ、制度は万能ではなく、公正性と柔軟性の間に矛盾を生じることもあります。それを関係者がいかにすり合わせるかが重要です」と、両立支援にはフレキシブルな対応が欠かせないことを改めて説明した。

各企業・医療機関の取組

「治療と仕事の両立支援の取組内容について」

東レグループ 岐阜殖産株式会社 管理部総務課長 坪井淳子氏

 東レ100%子会社として、ポリエステルフィルム製造や人工皮革製造の補助作業などを行う岐阜殖産株式会社では、休職者への給与・休職期間・各種給付金に関する説明など初期対応はもとより、休職中(情報交換、家族・医療機関などとの連携、職場内の調整)、復職前(会社・主治医間の情報提供依頼書作成など)、復職後(健康対応記録表の活用など)と、段階に応じたフォローを行っていると発表。また、これらの取組をまとめている管理部総務課長の坪井氏自身、今年8月に両立支援コーディネーターの基礎研修を受講しており、今後について「両立支援コーディネーターのネットワークも活用しながら、きめ細かな対応をしていきたい。労務管理は教科書通りにはいかない。主治医・産業保健スタッフ、家族、職場関係者が連携し、情報収集を行いながらサポートするのが重要」と語った。

「治療と仕事の両立支援 事例」

大豊工業株式会社 岐阜工場 健康管理室 保健師 南屋敷美幸氏

 トヨタ系列の部品メーカーである同社では、「働きたい」という本人の意思を第一に尊重することを両立支援の指針として掲げている。とりわけ傷病などを抱える社員がいた場合には本人の働きたいという希望を確認した上で主治医意見を確認した後、会社・産業医・所属部署において安全に就業できるかを検討する。例えば国の定める指定難病・潰瘍性大腸炎になった40代男性のケースでは、健康管理室が本人の希望を確認の上、主治医に患者の身体の状態、症状等を確認。産業医から作業制限書を発行させた。一方で残業・休日出勤・夜勤等が難しかったことから、患者の上司にも丁寧な説明を行うとともに、患者本人に対しても会社の配慮で部署異動を行ったという。南屋敷氏は最後に「社員は財産。全社的に巻き込み、職場の理解を求め、諦めずに対応を検討し、個々を大切にすることが求められる」とまとめた。

「岐阜大学医学部附属病院における両立支援の取組について」

岐阜大学医学部附属病院 医療連携センター 医療ソーシャルワーカー 山本恭孝氏

 同院は、県内に点在する7カ所の「がん診療連携拠点病院」の1つであり、がんに罹患した労働者とその家族、企業担当者の誰もが相談できる「がん相談支援センター」を設置している。両立支援の取組としては、初回面談から退院後の外来まで常に患者へのきめ細かな入退院支援を行う。具体的には、入院時情報シートやソーシャルワーカーによる定期面談、多職種カンファレンスなどで、院内チームが情報共有する他、患者自身が仕事のこと、治療のことを整理することができるようになっている。まずは「仕事とがん治療の両立お役立ちノート」を記載し、職場に対してきちんと説明できる状態を整えることから始める。患者の家族・職場との連携に対する支援もあり、「産業医、上司、同僚、人事・労務とも連携を取れば、患者さんが安心して生活し、治療に専念できる。病院・家庭・事業所の三角関係で連携し、つなげていくことが必要」と山本氏。最後に「3者の連携によって患者さんの不安や悩みを解決する糸口を見つけられるはず。病院としても職場の方との連携を強化していきたい」と語った。

「岐阜産業保健総合支援センターの取組について」

独立行政法人 労働者健康安全機構 岐阜産業保健総合支援センター副所長 片桐正文氏

 同センターでは、治療と仕事の両立に関する支援として、事業者・労働者からの相談対応、産業保健スタッフへの研修・セミナーなどを行っている。この他、両立支援促進員(社会保険労務士、保健師等)が企業を訪問し、制度導入の支援や、管理監督者・社員などを対象とした意識啓発のための教育を行う「個別訪問支援」や、同じく両立支援促進員が企業を訪問し、患者(社員)個別の健康管理を踏まえながら、治療と仕事の両立に関する中立的立場での調整支援を行い、プラン作成も助言・支援する「個別調整支援」を実施していることも紹介された。センターは事業場規模にかかわらず相談・支援が無料で受けられるとし、片桐氏は参加者に向け、積極的な利用を呼びかけた。

総括

 取組発表の後、基調講演で登壇した岡原伸太郎氏は「子育てしやすい地域が住みやすいまちの選択基準になるのと同様、病気になっても安心して働きやすい職場、それを支援する医療機関のある地域が求められていく。今日のセミナーの中で、一つでも何か参考になる事柄を持ち帰ってほしい」と総括した。

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