厚生労働省

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両立支援シンポジウム/セミナー

石川 治療と仕事の両立支援セミナー

<開催日時>
2019年11月6日(水)
13:30 - 16:05
<場所>
石川県地場産業振興センター
<主催>
厚生労働省
<共催>
石川労働局
プログラム
時間
講義内容
13:30 〜 13:35
開会挨拶
石川労働局局長 松竹泰男
13:35 〜 14:15
基調講演
サッポロビール株式会社 人事部 プランニング・ディレクター 村本高史氏
14:15 〜 14:25
休憩
14:25 〜 14:45
企業取組事例紹介①
コマツ 健康増進センタ 産業医 兼 国内販売本部分室 兼
小山健康管理室 室長 平岡晃氏
14:45 〜 15:05
企業取組事例紹介②
サンコー企画株式会社 総務課 課長 藤原寛氏
15:05 〜 15:25
医療機関取組事例紹介
金沢大学附属病院 消化器内科・地域医療教育センター 島上 哲朗氏
15:25 〜 15:45
研究機関取組事例紹介
東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター
運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座 特任教授 松平浩氏
15:45 〜 15:55
産業保健総合支援センターからのご案内
石川産業保健総合支援センター 両立支援促進員 小矢田由希氏
15:55 〜 16:05
総括
サッポロビール株式会社 人事部 プランニング・ディレクター 村本高史氏

基調講演

「治療と仕事の両立支援に向けて
~がんサバイバーの実体験や企業事例を交えて~」

サッポロビール株式会社 人事部 プランニング・ディレクター 村本高史氏

 村本氏は2009年春、頸部食道がんを発症。放射線治療により寛解したが2年後に再発。手術で食道上部の再建とともに、声帯を含む喉頭を全摘出したが、その後食道発声法を習得し、声を取り戻した。現在はその経験も踏まえ、同社の「治療と仕事の両立支援」に取り組んでいる。村本氏は、どんな企業でも自社の持ち味を活かしたやりようが必ずある!とし、治療と仕事の両立支援を進める際のポイントとして「本人との対話を大切にすること」「経営者の理解・応援・率先」「周囲の社員への配慮も忘れないこと」を踏まえながら、率直な対話と信頼関係で「社員の使命感を活かす」ことが大切であるとした。

各企業・医療機関の取組

「コマツにおける両立支援の取組」

株式会社小松製作所 健康増進センタ 産業医 平岡晃氏

 建設機械・鉱山機械メーカーの同社では、事業場単位ではなくグループ全体で質の高い健康管理を目指しており、国内全社員を対象とした健康管理部門として、本社内に「健康増進センタ」を置いている。安全(健康)は全てに優先するという社風があり、従来から心身不調者や健康状態に起因する休業者がいた場合、管理監督者が健康管理室に相談する文化が醸成されていたが、2018年6月に両立支援に特化した相談窓口を設置。同12月には両立支援を規定する文書を作成し、短時間勤務が可能な旨の明文化など取組をさらに進めた。平岡氏は産業医の立場から「本人がより長期的な利益を選択するためのサポートをすることが両立支援であり、本人・家族が抱える課題を整理し、必要な情報を一緒に取捨選択することが大切」と語った。

「当社における両立支援」

サンコー企画株式会社 総務課 課長 藤原寛氏

 路面サインの企画・製造事業、駐車場活性化事業、交通安全施設事業などを行う同社は、総務課に両立支援の相談窓口を設置。事前・復帰前・復帰後の各段階で面談の場を設け、社員の状況把握はもちろん、復帰後の出勤形態・業務内容・業務量に対する配慮も行いつつ、社を挙げて病気に対する理解に努めながら、当該社員をきめ細かくサポートしている。藤原氏は「健康経営による事前対応(予防)、両立支援による事後対応(対処)の両輪で社員をサポートしているが、両方の出発点となっているのは社員の居場所づくり」と語り、「治療も仕事の1つである」との考えが社内に成熟しつつあることを発表した。その上で「いつか自分が病気になっても退職することなく、安心して働ける会社だと社員に思ってもらうことが大切。それを支える『お互いさま』の精神が徐々に浸透している」と、成果に触れた。

「治療と仕事の両立支援の取組」

金沢大学附属病院 地域医療教育センター 特任教授 島上哲朗氏

 石川県のがん診療連携拠点病院である同院では、主治医・看護師・地域医療連携室等複数に両立支援の相談窓口を設け、患者からの申出を受けると、看護師が就労状況を確認し、主治医が意見書を作成。その後産業医からの意見書を受け、治療計画の見直しを行うなどのフローを紹介。島上氏は「がんと診断されても、治療を行いながら働くことは十分に可能。医療機関は両立支援のための情報をいつでも提供するので、どんな情報が必要なのか具体的に伝えて欲しい。両立支援の実現のため、企業と医療機関とで連携を深めていきたい」と呼び掛けた。

「中小企業における治療と仕事の両立支援の推進に向けて
“チェックリスト30”の開発と解説書の作成」

東京大学医学部附属病院22世紀医療センター 松平浩氏

 松平氏は厚生労働省が募集した両立支援の研究事業を行っており、その中で開発を進めている治療と仕事の両立支援「チェックリスト30」について説明。その項目は、会社内の風土づくりから疾病を抱える社員と主治医、産業医、人事担当、上司などとの連携、休暇などの制度整備、柔軟な働き方ができる仕組み、相談窓口(担当者)の設置、社員の健康づくりなど多岐にわたる。チェックしていくことで自社の治療と仕事の両立支援の取組の進捗を確認できるものとなっており、完成次第活用される見込みだ。

「石川産業保健総合支援センターからのご案内」

石川産業保健総合支援センター 両立支援促進員 小矢田由希氏

 同センターでは、産業保健関係者・人事労務担当者を対象とした研修会の実施や専門スタッフによる訪問支援などを行っている。両立支援促進員として勤務する小矢田氏は、過去に担当した両立支援の事例を基に「企業が医療機関に連絡をする際は医療相談室にまずは相談。医療ソーシャルワーカーに、主治医との連絡役・窓口になってもらうとスムーズに進む」とアドバイスした。さらに「病院へ本人の勤務情報や仕事内容を提供する場合は、具体的にどんな仕事なのか、誰にでも理解できる内容を心掛けることが重要」としながら、支援が必要な社員と会社、病院の架け橋となる両立支援促進員の立場から知見を述べた。

セミナー総括

 全体総括として基調講演をされた村本氏が再び登壇。村本氏はこの日発表された取組を振り返り、一つ一つに感想を述べながら総括を行った。セミナーに来場した企業担当者に対しては「両立支援の施策は、支援を必要としている人の『治療しながら仕事を続けたい』という“思い”を大切にし、一つ一つの施策をやり続けることが重要。やり続けることで、“思い”が会社の隅々まで浸透し、やがて施策が機能するようになる。小さな取組でもやり続け、足りないところを徐々に補えなっていけばよい」 とエールを送った。

(左から)株式会社小松製作所 健康増進センタ 産業医 平岡晃氏、サンコー企画株式会社 総務課 課長 藤原寛氏、サッポロビール株式会社 人事部 プランニング・ディレクター 村本高史氏、石川産業保健総合支援センター 両立支援促進員 小矢田由希氏、金沢大学附属病院 地域医療教育センター 特任教授 島上哲朗氏、東京大学医学部附属病院22世紀医療センター 松平浩氏

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