厚生労働省

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両立支援シンポジウム/セミナー

京都 治療と仕事の両立支援セミナー

<開催日時>
2019年11月28日(木)
13:30 - 15:50
<場所>
京都府立総合社会福祉会館 ハートピア京都/大会議室
<主催>
厚生労働省
<共催>
京都労働局
プログラム
時間
講義内容
13:30 〜 13:35
開会挨拶
京都労働局局長 南保昌孝
13:35 〜 14:20
基調講演
中国労災病院 治療就労両立支援センター所長 豊田章宏氏
14:20 〜 14:30
休憩
14:30 〜 14:50
企業取組事例紹介①
二九精密機械工業株式会社 代表取締役社長 二九良三氏
14:50 〜 15:10
企業取組事例紹介②
京セラ株式会社 人事部 人事課 責任者 溝渕博也氏
15:10 〜 15:30
医療機関取組事例紹介
京都大学医学部附属病院 地域ネットワーク医療部
医療ソーシャルワーカー掛長 隈村綾子氏
15:30 〜 15:40
産業保健総合支援センターからのご案内
京都産業保健総合支援センター 産業保健専門職 松田雅子氏
15:40 〜 15:50
総括
中国労災病院 治療就労両立支援センター所長 豊田章宏氏

基調講演

「治療と仕事の両立支援 進んでいますか」

中国労災病院 治療就労両立支援センター 所長 豊田章宏氏

 豊田氏は、両立支援をワーク・ライフ・バランスの一環としながらも、医療情報やまとまった休み・職場の理解が必要であるという特殊性があること、また医療・職場・患者の生活背景など困りごとはさまざまであるため、それぞれの落とし所を見つけることが大切であるとし、企業・医療機関との橋渡しや患者の伴走者の役割を「両立支援コーディネーター」が担うと説明。職場が取り組むべき環境整備として、労働者が安心して相談・申出を行える相談窓口の明確化と担当者の配置、働き方を規制すべきものと規制になじまないものに分けて整理することがあるが、そもそも働き方を職場で議論できる環境とマネジメントが重要であり、さらには労働者自身の自己管理能力も必要であると説明した。また、京都に多い職人(専門職)の世界を取り上げ、仕事と生活の両方を融和させて楽しむ「ワーク・ライフ・ブレンド」という働き方を求める人もでてきており、「極めるよりも普通に働きたい」という時流の中、後継者が育たないという現状に触れた。その上で、病気を患っても「働きたい」という意欲がある者を活かすことの必要性を説き、「働き方もパラダイムシフトが起きている。企業も、働かせ方自体(働き方の概念)を変えていかなければならない」と締めくくった。

各企業・医療機関の取組

「社員と共に生きて育った102年間
〜『従業員の安心』のために会社ができること〜」

二九精密機械工業株式会社 代表取締役社長 二九良三氏

 大正6年創業の老舗製造業である同社は、経営理念として「顧客・協力会社・従業員の3つの安心」を掲げている。「会社の最たる基盤は従業員」という考えの下、病気の予防・早期発見への取組から、病気になっても治療に専念できる見舞金制度、柔軟な個別対応、通院の休みを取りやすくする社内の雰囲気づくりも含めた復帰支援の他、業務分担の見直しで全員が無理なく助け合えるような取組も実施していると紹介。また、がんに罹患後、復職に成功した執行役員の存在が社内の前例となり、両立支援の認知が広がっていると報告。二九氏は、「いかに働きやすい環境を整えるかに日々腐心し、従業員にとって良いと思える施策は果断に実行すると明言していくことで、従業員の安心につながる」と締めくくった。

「治療と仕事の両立支援 〜当社の制度紹介〜」

京セラ株式会社 人事部人事課 責任者 溝渕博也氏

 電子・情報・通信機器、太陽電池、セラミック、宝飾、医療用製品など、多岐にわたる事業分野を持つ同社からは、いくつかの具体的施策が紹介された。まずは30年以上前に鹿児島の工場で始まったという、労務担当者制度。各部署に任命されている労務担当者は、時には責任者の片腕となり、また時には従業員に寄り添い、適切な職場環境作りのための職務を有しており、両立支援においては、対象者(休職者)と会社とのパイプ役を担い、スムーズな復職を支援していると紹介。この他、同社懇親会費から即時に傷病手当金の立て替えや補てんが行われる「休業補償制度」、病気や家族の介護、育児などに備えて年次有給休暇の一部を積み立てられる「積立年休制度」についても紹介。また、確実な復職につなげるための取組として、休職期間中の慣らし勤務制度や復職時の時短勤務などの制度が整備されていることが報告された。

「京都大学医学部附属病院の取組紹介」

京都大学医学部附属病院 地域ネットワーク医療部 医療ソーシャルワーカー 隈村綾子氏

 隈村氏からは、同院の概要とともに、がん相談支援センターや、患者・家族のQOL(Quality of Life)向上を目的に2000年に開設された地域ネットワーク医療部での両立支援の取組を紹介。事例をステージごとに分類し、「発症当初」は安心して療養できるように決断は先延ばしに。「入院中」は今後の選択肢を含め情報提供を行い、両立を希望された場合は本人の承諾の元、職場とも連携を行うこと、「外来」では患者とともに職場への情報共有や関係機関との連携により必要な支援につなぐことが大事とした。最後に隈村氏は、「病院では企業からの相談にも応じています。会社としてどのように対応すべきか困ったら、ご本人の承諾の元、気軽にご相談ください」と参加者に呼び掛けた。

「京都産業保健総合支援センターのご案内」

京都産業保健総合支援センター 産業保健専門職 松田雅子氏

 同センターでは治療と仕事の両立支援に関する、窓口・電話での相談対応、患者・医療関係者・会社を対象とした啓発セミナー開催、両立支援促進員による会社への訪問支援(経営者・人事労務担当者への助言)・調整支援(個別の労働者の健康管理について両立支援に関する調整支援を行い、両立支援や職場復帰に関するプラン作成を助言・指導)を事業場規模にかかわらず無料で実施していることを紹介。松田氏は自身の経験談から、患者は会社と話をする以前から悩んでいること、両立支援の実行段階では事業者・患者間で情報共有が不足していることが多いと指摘。「治療しながら働いてもらう上で安全配慮上の問題があるのか、また問題があるなら会社として何をすればよいのか。こうした点において情報共有は欠かせず、それによって両立支援の見通しが立てられるはず」と強調した。

セミナー総括

 以上の取組発表の後、基調講演で登壇した豊田章宏氏が再び登壇。両立支援に対する大企業・中小企業・医療機関・産業機関の役割について改めてポイントをまとめた。その中で豊田氏は、「規模の大小にかかわらず、自社の持っている武器(強み)を使いこなすことが重要です。たとえ規模の小さな会社でも、中小企業だからこそできることがあります」と会場に呼び掛けた。

(左から)中国労災病院 治療就労両立支援センター 所長 豊田章宏氏、二九精密機械工業株式会社 代表取締役社長 二九良三氏、京都産業保健総合支援センター 産業保健専門職 松田雅子氏、京都大学医学部附属病院 地域ネットワーク医療部 医療ソーシャルワーカー 隈村綾子氏、二九精密機械工業株式会社 専務執行役員 大川智司氏、京セラ株式会社 人事部人事課 責任者 溝渕博也氏

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