厚生労働省

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両立支援シンポジウム/セミナー

大分 治療と仕事の両立支援セミナー

<開催日時>
2019年11月16日(水)13:30 - 15:40
<場所>
大分医師会館
<主催>
厚生労働省
<共催>
大分労働局
プログラム
時間
講義内容
13:30 〜 13:35
開会挨拶
大分労働局局長 坂田善廣
13:35 〜 14:00
基調講演
佐賀大学医学部附属病院 肝疾患センター 江口有一郎氏
14:00 〜 14:20
企業取組事例紹介①
株式会社ヤクテツ 総務部 後藤孝史郎氏
14:20 〜 14:40
企業取組事例紹介②
有限会社ウエノお志ぼり商会 代表取締役 宮本令子氏
14:40 〜 14:50
休憩
14:50 〜 15:10
医療機関取組事例紹介
国立大学法人大分大学医学部附属病院 地域医療患者支援センター・
大分大学医学部附属病院 がん相談支援センター 山下香美氏
15:10 〜 15:20
産業保健総合支援センターからのご案内
大分産業保健総合支援センター 山田仁氏
15:20 〜 15:40
ロールプレイ
両立支援の実際を登壇者が寸劇でわかりやすく説明

基調講演

「ご存知ですか?『治療と仕事の両立支援』」

佐賀大学医学部附属病院 肝疾患センター 江口有一郎氏

 江口氏は、7年前に自身が治療と仕事の両立をした経験を踏まえ、その必要性を訴えた。佐賀大学による就労中の肝疾患患者アンケートでは、病気が判明して病気と仕事との関係で悩みがある人が199名中78名おり、悩みが解決していない人や調整中の人が29名いるという結果に。原因の一つとして「患者に身近な相談先が不足していることや、柔軟な勤務制度などの整備が進んでいない現状がある」ことを挙げた。江口氏は、両立支援は社員にかかるコストの削減、生産性向上、安心などにつながり、「中小企業はアットホームな雰囲気の中でコミュニケーションを取りやすく、そこに両立支援につながる柔軟な制度が加わることで強い団結力が生まれる」ことを強調した。病気になった者は、復帰ができるか、いつになるかが見通せないことが一番の不安。しっかりと話しを聞き、治療と復帰までのプランを明示すること、そして、社内制度や体制の整備が重要であることを改めて強調した。

各企業・医療機関の取組

「株式会社ヤクテツ~治療と仕事の両立支援事業~」

株式会社ヤクテツ 総務部 後藤孝史郎氏

 クレーンの設計や据え付け、各種機械加工などを手掛けるヤクテツからは、2つの両立支援事例が発表された。どちらの例でも、従業員の申出を受け、主治医の所に出向いて病状等を確認した後、本人、産業医、所属長、総務課の後藤氏らで今後の就労について相談・検討を行い、通院や入院が必要な場合も部署全体でフォローできるよう調整が行われている。両立支援の取組は更に健康経営への取組に発展。保健所や医療機関と連携し、運動に取り組むなど従業員の健康意識の向上にもつながっている。後藤氏は「両立支援は、本人の働きたい思いと、会社側の働いてもらいたい思いが相まって実施に至り、本人、主治医等や事業者がしっかり話し合うことでベストな方法が得られる。」とし、「労働者誰もが安心して働ける職場を目指し、今後は就業規則等に両立支援に関する事項を盛り込むよう検討していきたい」と抱負を語った。

「有限会社ウエノお志ぼり商会の取組紹介」

有限会社ウエノお志ぼり商会 代表取締役 宮本令子氏

 おしぼりのレンタルサービスを行うウエノお志ぼり商会は、従業員20名の会社だ。従業員が皮膚がんに罹患したことをきっかけに両立支援の取組をスタートさせた。がんが分かった当時、「もう仕事を続けられない」と相談を受けたが、長年一緒に働いてきた人財。何とか治療しながら仕事を続けられないかと、本人と共に対応策を検討。手術前の検査を含めた3か月間は上司や現場のスタッフとともに、業務を引き継いだ。ちょうど予定していた事務所移転を機に、労働環境の改善に着手したり、仕事内容を細分化し見直す作業も実施したり、復職後の本人の負担軽減にも努めた。宮本氏は「両立支援を実施したことで、事業場全体の業務見直しによるフォロー体制ができた。また、危機管理体制を強化することもできた。従業員一人一人と向き合えるのは中小企業の強みであり、今後も両立支援を進めていきたい」と締めくくった。

「治療と仕事の両立支援事例 医療機関(がん相談支援センター)から」

大分大学医学部附属病院 がん相談支援センター 山下香美氏

 がん診療連携拠点病院の同院からは、医療機関での両立支援事例が紹介された。山下氏は「社員さんから両立支援の申出があった際には、まずはあせらず本人と正しい病状や通院・治療の予定などを共有することが重要」と説明。さらに、同じ病気でも治療方法や病状、通院期間などは一人一人異なるため医療機関との連携の必要性についても言及。「医療者側は仕事の詳細は分からないため、仕事の可否の判断するためにも、積極的に医療機関のがん相談支援センターや地域医療連携室などにぜひ相談していただき、貴重な人財である社員さんのためにどうしたらいいかを一緒に考えていきましょう」と締めくくった。

「大分産業保健総合支援センター 事業について」

大分産業保健総合支援センター 山田仁氏

 産業保健総合支援センターでは、治療と仕事の両立支援などに関して、企業の担当者などへの研修や専門的な相談対応、情報提供等を無料で実施。同センターの活用を促すため、サポート内容を記した名刺大サイズのカードを医療機関のがんの相談コーナーや労働局などに設置していることを紹介。「両立支援に取り組もうと思われた際には、対象者がいない場合でも、ぜひ当センターを活用して欲しい。万が一、対象者が出たときもスムーズに対応できる体制を事前に作ってほしい」と参加者に呼び掛けた。

ロールプレイ

 各企業・センターの発表後には、実際の両立支援の手続きの流れを分かりやすく説明するため、登壇者たちが即席の役者になってロールプレイを実施した。架空の会社員Aさんが健診で肝機能障害と診断された後、精密検査でがんと分かったことからスタート。会社には両立支援の制度がなかったが、Aさんが人事担当者に申出を行ったことを端緒に、会社(人事担当者、社長)や主治医、医療ソーシャルワーカーと一緒に、産業保健総合支援センターの支援も得ながら、両立支援ガイドラインに沿って両立支援に取り組んでいく内容となった。

(上左)大分産業保健総合支援センター 山田仁氏、(上右)大分労働局 坪井龍彦氏、(下左から)佐賀大学医学部附属病院肝疾患センター 江口有一郎氏、大分大学医学部附属病院 がん相談支援センター 山下香美氏、株式会社ヤクテツ 総務部 後藤孝史郎氏、有限会社ウエノお志ぼり商会 代表取締役 宮本令子氏

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